<閑話5>王国の動き
時系列は手紙を受け取った直後 短めで申し訳ありません
わしはダ・ボード王国国王、偉いんじゃぞ、一応。
偉いだけでなくきちんと王としての仕事もしておるのだ。
先刻ヴァイスプレの奴が手紙を持ち込んで来たという事で面会したが、フォンターレ領はえらい事になっておるようだな。あそこの先代領主はワシの学園時代の同期で数少ない飲み友達じゃったが・・いい奴は皆先に行ってしまうモノだ・・おっと感傷に浸っておる場合では無いな、宰相を呼び予算を決めて救済措置を急がねばならん。
「宰相を呼べ緊急会議を招集する!」
ワシが声を上げるとすぐさま側近の者が宰相を呼びに行く。
立ち上がって髭を撫でつつ窓際に立ち、外を見ながらフォンターレの事を想う。
聖女からの手紙がある、打つ手は決まっておるも同然なのじゃがそれでは国としての役割を放棄してしまうも同然の立ち回りになってしまうではないか。ワシは国からの救済措置として何がフォンターレの為になるのかを今一度思案していた。
「お呼びにより参上いたしました、王。何か問題が発生したのでしょうか?」
「フォンターレ領が前回大干ばつに見舞われたのはいつだったかのぉ?」
「今から60年程前になりましょうか、覚え知る者も少なくなっております。まさか?」
「ヴァイスプレからの報告でのぉ、フォンターレが再び大干ばつにより住民の命が危険な状態に瀕しておる。井戸は枯れ、作物はできず、備蓄もこのままでは尽きるのも時間の問題だそうだ。」
ワシはあえて聖女の名を上げず説明する、その方が宰相の案を聞き易い状況を作り国としての案をまとめるに良いと考えた。
宰相は「報告では日照りが続いて、不作の恐れ有。だけでしたが・・・」と頭を抱え唸る、パっと顔を上げて。閃いたと言わんばかりの表情となり。
「ここから支援物資を送ったのでは片道一か月、フォンターレの人口は少ないとは言え全てを賄うには到底足りますまい。近隣の街で物資を集め、現地調達を繰り返しつつ都度支援物資を送るのはいかがでしょう?」
流石宰相、中々良いことを考え考えおるわ・・と言いたい所なのだがそれだと聖女から送られてきた手紙の内容とほぼ同じ事をする事になる。
「ふむ、悪くは無いな。別の案もあれば言ってみるが良い。」
再び宰相は思考を巡らせ、地図を持ち出し指さしつつ説明を始める。地図に載っているのは近隣の領地と街、町、村、大きな街道くらいのもので詳細な物では無い。ワシは地図を覗き込むように聞きに入った。
「各領地の領主より徴税の代わりに今回限りの特例を設け、直接フォンターレに物資を送らせるのはどうでしょうか?この街で集積して、目録を作り、国からの救援物資として送れば国の威信も落ちないかと。」
どうやらワシが色々聞きだそうとしている意図をある程度宰相はくみ取って意見を述べておるらしい。流石我が国でも並ぶ者の無い知恵者。そろそろ聖女の話もしてやらねばならんの。
「宰相の意見はわかった。この手紙をまずは見てくれ。」
「手紙ですか?」
宰相はワシの手から手紙を受け取ると丁寧に広げ、「そういうことだったのですね・・・」と呟き。
「完全に聖女の思惑に乗っかってしまうのは癪に思えるかも知れませぬが、これ以上の案はこの宰相にも御座いません。流石はリア殿ですなぁ、まだこの地に来られて間もないというのに各領地の特産物や勢力(石高)などを丁寧に調べ上げ。その上で住民の負担にならない程度の徴収量を考え出されている。」
「うむ、リア殿の考えに沿ってお主が指揮を執り救済計画を立案し早急に手を打つ、良いな?」
「はっ、仰せのままに。」
知恵比べで負けとは言わぬが並ばれたことは確かな筈の宰相はとても良い笑顔で返事をしてきよった。こやつにとっても久々の良い刺激となっておるのであろう。
宰相は執務室で副官を呼び、各領主宛ての手紙を書き、ワシの名を使って封蝋印を押していく。副官が手紙を送るために席を立ち、執務室にはワシと宰相、入り口の外に護衛がいるだけとなった。
ワシは満足げに髭を撫でながら宰相の方を向き独り言のように呟く。
「聖女は奉仕で行なうから謝礼は受け取らぬと申すであろうなぁ・・」
「そうですな、前回の時も頑なに金品は断られ、馬車と路銀程度しか使われてはおらぬとのことですし。」
少し遠い目になってしまった宰相を宥める様にワシは伝える。
「短期の滞在ではあるが、事態が有る程度落ち着いた後視察を兼ねワシも現地に赴こうと考えておる。その時に謝礼を渡すだけ渡して突き返される前に此処に戻ってくる事としよう。それならば国の誠意もリア殿には伝わるであろうよ。」
「それは良い案ですね、いっそ馬車ごと一台分は謝礼で置いて帰るくらいの気持ちで準備いたしましょう。」
その言葉を言い放った後に二人で声を上げて笑ってしまった。
ひとしきり笑った後真顔に戻ってから王として命令する。
「この聖女の手紙の追伸の部分にある内容の裏が取れそうか?確認取れ次第書状をまとめよ。」
「無論です。 虚偽の報告、領主に対する讒訴など罪状は多数。王が現地に赴かれるまでに準備しておきますご安心を。」
「うむ、任せた。」
これで今日の執務も一段落だの、呼び出しベルをチリンと鳴らして側近にお茶を頼むと。執務室のローテーブルの前のソファに座り込む。
聖女に任せておけば間違いなく事は終息に向かって行くであろうが、もし聖女が居なかったら?を考えねばならん。国を守るものとして・・為政者の意地とでも言おうかの、そんな王になりたてだった頃の様な新鮮な気分になっており、お茶を啜りつつ物思いにふける。
フォンターレの現当主、名前はレミアと言ったか。彼女の元を訪れて、父親の昔話でもしてやろうかのぉ。
王は好好爺とした表情となり、一時の休息をとるのであった。




