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おっさんは聖女になりて異世界を憂う  作者: とくみつ ろゆき
人間の国編・フォンターレ領の渇きと聖女の憂い
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3章プロローグ

3章スタートです

(わたくし)はフォンターレの領主、名前はレミア今年で16になります。これでも辺境伯なのです、なったばかりですけれど。

父の急逝の後を継いだものの領地は干ばつによる大飢饉に見舞われ、東隣は獣人国との境、西と南側は海ばかりで、北の森は遠く、首都はそのさらに北。

領民は飢えに苦しんでいると言う報告が多数上がっていきています・・どうするの(わたくし)


悩んでばかりもいられません、早速対策会議を開きましょう!何か打つ手が有るかも知れません。

会議室に集められたのは父の代からの重鎮達、きっと良い案を出してくれるはずです。


「まずは領内の備蓄食料についての報告からさせて頂きます。」


内務担当が立ち上がり紙面を除きつつ話出しました。私は続きの報告を待ちます。

彼がどことなく汗だくなのはきっと太っているからに違いありません。そう思いたい。


「今期の収穫はほぼ壊滅的でしたので、例年のマイナス80%程、これを領内に均等に分配しますともって3か月程の猶予しか無い計算となっております。」

「3か月ですか・・まだ希望はあるのですね。」

「これは死亡した家畜を全て食用に回して・・での計算です。」

「何ですって!」


領主らしく無い振る舞いとわかりつつも立ち上がってしまいました。


しかし、これはちょっとのっぴきならない状態なのでは無いでしょうか?家畜に与える餌さえ日照りによって失われている今、家畜の命は長くは持たないでしょう。死んだ家畜を放置すれば疫病などの心配も出てきますし、焼却処分にするか大事に頂くかの2択しか残されてはいません。


「領民達の家族同然の家畜ですが、背に腹は代えられません。食用に回すよう各村へ通達を。」

「承知致しました。」

「これで3か月はもつのですね?」

「はい、一日一食、井戸さえ干上がる事が無ければ命は繋げましょう。」


ギリっと歯を食いしばりつつ、私は次の担当の発言を待ちます。

私が立っていることで次の大臣は発言を控えているようです、いけません。座りましょう。


今私が俯いては誰がこの領をまとめ上げると言うのですか。私は弱気になりそうな自分を奮い立たせ、真っすぐ前を向いて座り直しました。


「国からの支援の情報と、国境問題について報告致します。」


外務担当はとても言いずらそうに口を開きました。


「こちらから首都に連絡が入るのが最短で一か月後、即決で支援物資を送り届けても2か月後の到着となる見込みです。」

「首都への距離を考えれば致し方ありませんね、国境の問題とは?」

「大変申しにくい事なのですが、国境警備の者達が難民として国外へと流失し、現在通常時の3分の1程度しか国境警備の人間がいない状態となっております。」

「な・・・!?」


開いた口が塞がりません、今状況を察した隣国が責めてきたりすれば我が領は一瞬で落ちてしまいます。しかし、隣国も干ばつで被害を少なからず受けている筈、すぐに仕掛けて来ることは無いでしょう。


「わかりました、国境警備は現状維持。国からの補助が届き次第最優先で物資を届けると伝えて頂戴。」

「承知致しました。」

「本当なら領民に最初に届けたいのだけれど、攻め込まれてからでは遅いですから。」

「わかっております。」


外務担当が席に着いた後は会議室内の全員が黙り込み、流石の重鎮達も打つ手なしなのか頭を抱えて唸っています。私も何か打開策が無いかと思案しますが、妙案は浮かびません。


「藁にも縋る想いで雨乞いをすればいかがでしょう?神に祈りが通ずれば救われるやも知れません!」

「まずは全ての手を尽くしましょう、祈るのは何時だってできるのですから。」

「左様に御座いますな。」


私だって祈ればいいのだったら今すぐにでも祈りたい、神様助けてって、祈っていたい。

でも、それは無責任だという事が痛い程わかる。

税を取り、税で暮らすのが領主。ならば領民に返すのもまた領主の務め、領民が少しでも楽になる様手を打たねば領主である意味が有りません。


「領主邸の井戸はまだもちそうですか?」

「かろうじて、ですが。他の井戸よりも深く掘ってあります故。」

「では、水を革袋に入れ、付近の領民に配給致します。」

「しかし、それではレミア様の飲まれる水がなくなるやも知れませぬ。」


私は大きく首を振り、訴える様に静かに低い声で言います。


「今私達がこうしている間にも井戸が枯れた村々の人々は苦しんでいます。」

「・・・わかりました。英断、心して遂行致します。」


不安です、自分たちの飲み水さえ枯渇してしまうかも知れません。しかし、領主邸には食料の備蓄も多少なりとも有り、水は無くとも少量の酒蔵も有るのです。少しづつ切り詰めて雨が降るまで何とか持ち堪えれば救われるかも知れません。


黙り込んだ重鎮達を見つめ、私は立ち上がり今度は明るく振舞います。


「人の上に人が立っているのです。上に立ったならば堂々とするしか有りません、皆様もどうかそれぞれの矜持を忘れることなく行動して下さい、共にこの苦境を乗り切りましょう。」


絞り出すように言い放つことが出来ました。お父様私、領主らしいことができたでしょうか・・・?






森を抜け、枯れた草の上を馬車が走っている、街道なのか?草原だったのか?ひび割れた赤黒い大地がむき出しとなり判別が難しくなっていた。


「長い日照りの後の様ですね。」

「真っ最中ぅ~」

「だね、村々はどうなんだろう?」

「心配だね、水の精霊の力がとても弱くて、当分は雨も期待できないよ。」


路面が硬いのでガタガタと音を立てながら聖女一行(おっさんたち)の馬車は行く。

南の国境沿いの領地フォンターレに入ってからというものずっとこうだ、森からは遠く川も見当たらない。ただただひび割れた大地に低木がちょんちょんと生え、乾季のサバンナの様な風景が延々続いていた。草は生えていても茶色く枯れたような状態で、家畜もこれでは栄養補給できないだろう。


「干ばつか、思い出しちゃうな・・」


おっさんが最後にいたキャンプも似たような景色の場所だった。少し胸が苦しくなりつつも、困っている人が少なからずいるのであれば今度こそ救いたいと願い、遠い目で景色を眺めつつ、人里を目指した。


何度か結界を張り野宿を繰り返す、マップ上では人里の有る筈のエリアに入っている筈だが何も見当たらない。きょろきょろと辺りを見回していると遠くから土煙を上げている馬が2頭見えた。それぞれに人が騎乗しており、とても急いでいるようだ。


馬車の前まで来て2頭の馬は止まった。


「旅の者か?ここにはかつて村があったが、干ばつで放棄されたのだ。乾いたつむじ風により家々は吹き飛び、人々は散り散りに去って行った。」

「私たちはフォンターレ領を視察に来た聖職者です。お急ぎの様ですが何かあったのですか?」

「日照りによる飢饉で村々の民が苦しんでいるのだ、首都へと赴き国の補助を賜る命を領主より受け移動中なのだ。」

「なるほど、では馬に水と食料をどうぞ。」

「かたじけない。」


おっさんは嫁とルシエと共に馬車から降りて、桶に水を入れ、馬の餌を地面に置く。馬たちは喉が渇いていたのだろうものすごい勢いで桶に顔を突っ込む。


「まだ森までは結構ありますからこれも持って行って下さい。」


嫁が革袋に入った水と干し肉を二人の騎士に手渡す。騎士と言っても装備は早駆け仕様で最低限のものであった。


「感謝する、首都までは遠き道のりでな。馬の世話も、自分の腹ごしらえもままならないのだ。」

「無事に補助が受けれると良いですね。心より応援しています。」


おっさんは無詠唱でエリアヒールを2頭の馬と騎士にかける。疲労困憊気味だった馬たちが元気になり、騎士たちも目に力が戻る。


「これは・・・?」

「女神に祈りが届いたようですね、先は長いのでしょう無理の無いように。」


おっさんはニコリと微笑んで、2頭の馬を送り出す。

乾いた大地に砂ぼこりが舞い視界を塞ぎ、騎士たちはすぐに見えなくなっていった。


「飢えと渇き・・想像以上に大変な事になっているようですね。」

「だねぇ。」

「この分じゃ浅い井戸はすぐに枯れてしまうよ。」

「井戸掘りか、嫁得意だったよね?」

「旦那様の意地悪ぅ~」


嫁が難民キャンプの手伝いで井戸掘りをさせられ、へばって介抱されていた事を思い出し、ちょっとからかってみたのだが思いのほか本人には苦い思い出だったようだ。


「でも、本当に井戸掘らないとダメかもしれないな・・・」


おっさんは手で土を掴むと一瞬でサラサラになって風に溶けていく。

乾燥、高温、強風。砂漠化が進みそうな環境だった。


人里に向け再出発した馬車の中おっさん達は作戦会議を始めていた・・・




日付変更線ギリギリですが間に合いました。

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