コテジのセッティングと夜
「旦那様お風呂3つあるよぉ~!」
嫁が嬉々として騒いでいる。嫁は風呂好きだ、しかし、長湯出来ないためスペースの広いお風呂を好み、おっさんに前から注文を出して来ていたのだ。お風呂は男性用、女性用、混浴?(妖精のように中性的な種族の使用を考えて)の3種類である。
「私はキッチンの食材庫とか小物とか出したりするから、嫁は2階で部屋を決めて、寝具をセットしてね。」
「らじゃ~」
「私は何をしましょうか?」
「じゃあここにテーブルと椅子を出していくから、レイアウト願いしようかな、配置は・・センスで!」
「センス!頑張ります。」
嫁と蝶華に指示を出しておっさんは食材を分別して、傷みにくい物はストックで置いておくこととした。小麦粉、砂糖、塩等の調味料の関連と、玉ねぎ、ジャガイモ等の冷暗所なら傷みにくい食材だ。
その後は食器の類とナイフ、フォーク、箸などを引き出しに整頓して片付け、調理機材を使う頻度の高い順に並べていく。結構な人数が集結する恐れもあるため、キッチン、リビングはとても広く設定した。
そうこうしているうちに蝶華がおっさんの元へやってきて
「いかがでしょう?」
几帳面な性格の蝶華はきっちりと等間隔でテーブルと椅子を移動し終えていた。6人掛けのテーブル3台と椅子18脚がバランスよく配置され見た目がとても美しくみえる。
「素晴らしい、次はローテーブルとソファを配置しよう。」
「任せてください。」
買うと高そうな家具たちではあるのだが、買ったのはVRMMOの中であり、よほどレアリティの高いものでない限りは家具はとても安い。戦闘には全く役に立たないうえに、寝るのは殆どが宿屋でありオブジェなのだ。簡単なクエストの報酬などで同じものが沢山手に入ったりする場合もあり、それなりの家具がストックされていた。
キッチンとリビングを大体セッティングし終えたところで蝶華を連れて2階へ足を向けると、階段を登り切った少し先で嫁が唸っている。
「角部屋がいいけど、旦那様の隣の部屋がいい。」
「じゃあ角から2番目でいいよ私は。」
「では、わたしは3番目、ルシエさんは4番目丁度この階段の前ですね。」
「希望通りに大体なりそうだねぇ」
玄関から入って左がリビング&キッチン、右側、奥から男・女・混浴風呂、トイレ(男・女)、会議室、物置と一階はなっていて、2階は階段上がって向かって左手がレストルーム、トイレ(男・女)、右手が主寝室。向かい側に並ぶ10部屋の同じ部屋。主寝室の前が角から嫁、おっさん、蝶華、ルシエ、と埋まった。
「よし、各自自分の部屋のレイアウトを決めようか。蝶華さんのベッドと部屋用の机、椅子等は出すからちょっと待ってね。」
「はい待ってます。」
嫁は自分で出し入れできるので何の問題も無い、先に蝶華の部屋に行ってポンポンとアイテムボックスから物を出していく。蝶華の部屋の物を設置し終えて自室に入る、ベッドと机と椅子、小さめのクローゼット、全室同様なのでまぁ今はこのままにしておく。
ちなみに元のコテジが収納された際に持ち主のアイテムボックスに中身は一気に返却されるという便利な仕組みのため、おっさんは一気にコテジ拡張に踏みだしたのであった。
3人が自室を終えたところで、残りの部屋は同一の並びで物を配置する。ルシエの部屋は戻ってきたら彼女が自分でレイアウトなどを考える事だろう。
そうこうしているうちに少しずつ日が傾き、夕暮れ近くなっていた。ルシエとルシリルが戻って来たのはちょうどその頃で、何やら荷物が一杯であった。
「お札作って来た、あとは調合素材とか色々持ってきたよ。」
「じゃあ物置が右手だから、そこに素材は置いて、ルシエの部屋に案内するよ。」
「本当にこの短時間で家が別物に・・すごいですね、聖女様の魔道具」
おっかなびっくりのルシリルを連れて各施設の説明をしつつルシエの部屋へ向かう。
「玄関の突き当りが階段になってて、左側が食堂とか、右側はお風呂と会議室ね」
「お風呂!すごいね、お湯が出る魔道具。」
「仕組みは私も良く分からないから、作るのは無理だよ」
「そっか、まぁ仕方ないね」
階段を上がってすぐの部屋がルシエの部屋なので案内と言っても時間はかからない。
「ここがルシエさんの部屋、左右の大きな部屋がレストルームと主寝室となっているよ」
「主寝室ですか?」
質問をしてきたのはルシリルであった。おっさんはどういう風に説明して良いものかと一瞬悩んでいると。
「ボクが結婚するんだから、小作りの為の部屋に決まってるよね?ご主人様!」
「そ、そうだね、そうなるね」
直球で返答するルシエにおっさんは少し照れながら返事をして、真っ赤になっているルシリルよりは大人だったことに安堵する。ルシリルも推定で200歳以上は確定しているはずなのだが・・とは口に出せない。
「とりあえずベッドと小さな机と椅子はこちらで準備したので、必要な物が有れば持って来ても良いし、言ってくれれば有るものは準備できると思います。」
「すっごい綺麗な部屋、窓があって、見晴らしがいいねぇ」
窓の外は一面の草原である。街道が出来れば一本の街道が見えるようになるだろう。この館は森の入り口の目印としての役目も担っている。無人の際は許可なく侵入は出来ないようになっているので問題ないし、後程結界も張り直す予定なので女神対策も万全である。
「覗きダメゼッタイ!」
「何か言った?」
「ううん、こっちのこと」
ルシエに部屋を案内し終えるころには辺りが暗くなってきた。ルシリルに今夜は止まるかどうか尋ねると。
「里長として里を見守ります。」
とのことだったので、魔方陣をリビングの中に書き直し、おっさんはルシリルを送り出す。
「これからはここに魔力を注ぐと移動できます。ルデスさんにも伝えておいてね。」
「わかりました」
「ああ、後今日は晩御飯はいらないって厨房の女エルフさんに伝言お願いします。」
「重ねて承知致しました、それでは良い夜を。」
淑やかに頭を下げてルシリルは魔力を魔方陣に注ぎ込み、転移していった。
何故かルシエは真っ赤になってしまっている。何が起きたのだろうと尋ねると。
「ボク達の種族で良い夜をっていうのはね・・・励めよ!って意味なんだ・・」
「あ・・・そ、そうなんだ・・」
おっさんも釣られて真っ赤になって、食堂の方へと階段を下りていく。今から食事を作ると遅くなってしまうので作り置きシリーズから、グラタンと天ぷら、美味しかったので栗ご飯を取り出す。
時間経過が無いため熱々である。並べ終えてから、全員を食堂に集めた。
「作り置きシリーズだねぇ。美味しいから良いけど♪」
「便利ですねぇ」
「良いよね、ボクも欲しい」
そんな会話をしつつご飯は進み、皆でお風呂に入る事となった。
嫁が私の脇を肘でツンツンしている、嫁の方をみると、小声で。
「混浴かにゃ?」
おっさんはその一言を受け足早に表に出て結界を張り直し、蝶華とルシエを混浴風呂へと誘導して女性陣がまず入浴していく。
初めて使うシャワーとお湯の使い方をルシエに説明したり、シャンプー、リンス、ボディソープがそれぞれ違う事も実際使いながら教えていく。その時嫁が一糸まとわぬ姿で肩にタオルを掛けて入場してきた。
おっさんは目を覆いたくなるのを我慢しつつ、冷静に冷静にルシエに説明をする。していた筈なのだが、気が付くとやはり今回も早々にリタイアしていたらしい。
「いやはや、主は何時になったら真の目覚めとなるやら・・」
「まぁ、あの人は真面目ですから。」
「セシルさんも来たんですね、広くて気持ちいいですよ今回のお風呂も。」
女帝に対して結構普通に会話している嫁の姿があり、蝶華も気軽に接するようになってきている。ルシエは一瞬びっくりしたようだったが。
「そうだよね、結婚するんだから当たり前だよね。」
とブツブツ呟きながら、セシルの一点を見つめている。今回は主寝室に嫁が用意したダブルベッド3つをくっつけて即席キングベッドをセッティングしている。そのため嫁は入浴が遅れたのであった。
「お風呂をまずは楽しみましょう♪」
「アッ!」
泡立てたボディソープをタオルにたっぷりと着けて嫁はルシエの後ろ側をゆっくりと擦る。ただ背中を流して居るだけであるのに、混浴の効果は抜群で否応なくルシエは雰囲気に飲まれていく。
気が付くと全員タオルで隠すことなく湯舟でゆったりと温まっていた。
「嫁よ、中々やるようになってきたではないか?」
「そうですかね?」
「旦那様が居ないときはすごく逞しく見える時があります。」
「そうだね、ボクも逞しいのは好き・・だよ・・」
落ち着いた会話をする3人とは違いルシエはまだまだ落ち着くには程遠い心模様のようだ。
入浴後もふわふわとして、どこか上の空の様なルシエ。
嫁は察して自然に寝室へ誘い、焦らずゆっくり時間をかけてほぐし、しっかりと互いを高め合ってから事に臨む。不安にさせぬよう、後悔の無いよう、嫁は心配りを徹底した。
「行きますよぉ」
「うん、覚悟はできてるよ」
そうして朝までたっぷりとルシエを可愛がる嫁、もちろん女帝と蝶華にも同様に分け与える。
チュンチュンと鳴く小鳥はこの近辺にはいないのだが朝を迎えていた、おっさんは目覚めて周囲を一瞬きょろきょろ見渡し全員眠っていることを確認してからいつも通り下の方へずるずる下がってベッドから脱出する。
「ふぅ、この気怠さにも慣れてきちゃったなぁ。」
おっさんは、徐々に自身の変化を受け止めつつあったがまだ確信はなかった。そのために今はまだこのままで良いと考え、思考を止める。
朝日が昇る前の時刻が分からなくなるような明るさのキッチンで
「さて、朝食作りますか!」
通常運転のおっさんだった




