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おっさんは聖女になりて異世界を憂う  作者: とくみつ ろゆき
人間の国編・妖精の誘いと聖女の憂い
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瘴気の蜘蛛1

 最寄りの町が見えてからすぐに妖精の住処の上空へとたどり着く。しかし、黒い靄がかかってはっきりとは位置が特定できない。フェイの説明でそれが瘴気の影響であることがわかった。


天馬は高度を下げているが、降り立つのを躊躇っている様におっさんは感じて、僧杖を出し構えると無詠唱で結界を張る。


「【破邪顕正】これで2頭を中心に3m位は安全圏になるから退避したい場合は天馬に近づくこと。」

「はぁ~い」

「了解です」

「わかったよ」


3人の返事と共に天馬たちにも伝わったのか、徐々に高度を下げていく。


 美しい湖と一本の大樹の洞、その前に全長15m程はあろうか、黒と赤で腹部の背に人面が浮かび上がったような蜘蛛が大きく腕を広げて、糸では無く瘴気を周囲に吐き出していた。胸と頭の部分は小さく腕がとても長い、ネフィラに良く似た形状である。


洞の前では長老をはじめとした戦う能力が少しでも有る妖精たちが集まって洞を守るようにして蜘蛛と対峙しており、風魔法なのだろうか?瘴気が洞を避けて通る様に放出系の魔力を感じ取れた。

しかし、フェイがエルフの里に辿り着き我々が到着するまでの時間ずっとこうしていた筈で、気力体力共に限界であろう。疲弊と苦悶の表情が妖精達には顕著に現れており、このままではジリ貧だった。


即座におっさんは天馬から飛び降りると無詠唱で【エリアヒール】を使い洞の前に立つ妖精全員を癒し、洞の中へと入るように視線を送って促す。


「聖女様!?助力に感謝を。しかし我らが離れれば中に瘴気が入ってしまいます、このまま踏ん張らせて下さらぬか?」

「駄目です、皆さん少なからず瘴気を浴びてしまっていますね?フェイの傷、回復魔法では完治しなかったのですよ。結界を張りますので、中に瘴気は届きませんので早く中へ!フェイ君も行くんだ。」


見た目よりも大きな谷間からスポッと抜け出したフェイは、こちらを数回振り返りつつ洞の入り口の方へと向かって飛んでいく。長老をはじめとした面々が中に入ったのを確認してからおっさんは詠唱を始める。


『詠唱終わるまで風圧で瘴気任せてもいいかな?』

『いいともぉ~』


 おっさんが僧杖を手放し、洞全体を包む大きな結界を作るために詠唱を始めた。

次の瞬間には身体強化した嫁がメインウェポンである【太郎改】を構えて蜘蛛の直前へと降り立つ、飛び下りる最中に【太郎改】をフルスイングして風圧で瘴気を押し返すことに成功している。


【太郎改】は長さ2m半、幅60センチという巨大な物で、前方に斜めに構えて体を横に向ければ大人でも隠れてしまえるほどの長さと幅を持った刀、土石流の際に嫁と蝶華を守ったのもコレだった。

不壊属性が付与されており折れる事曲がる事は無いが、瘴気に晒された刃は腐食し、光沢ある銀色が赤黒く斑点模様になっていた。


「お手入れ大きい分面倒なんだから、やめてよぉ~!」


刀が大きいのは蜘蛛のせいじゃないのでその点は半ば八つ当たりである。ブンブンと刀を振り風圧のみで瘴気を押し返す嫁。蝶華はまだ天馬の上でその嫁を見つめていた。


「攻撃に参加するのはやはり私の仕事じゃなさそうですね・・・」


見ているだけで味方なのに冷や汗が出る程の剛の剣、目の当たりにすれば補助に徹しようと考えても当然だった。蝶華は幻術魔法で七色の蝶を作り出すと、蜘蛛の目の方へと差し向け視界を封じにかかる。

堪らず触肢で目の周りを擦るような動作をする蜘蛛、その一瞬の隙を嫁は見逃さない。


「私の記憶が確かならばぁ♪」


野菜でも齧ってしまいそうなセリフである・・・


「目の奥が脳の筈ぅ~~!」


踏み込みと同時に嫁の足元の地面がドッと少しめり込み、左足から蹴り出した刹那嫁の体は一瞬で蜘蛛の目の前に現れる、【縮地】スキルの効果である。

日本武術で言う歩法の一つでは無く仙術のカテゴリに入るそのスキルは踏み込みアクション後には指定位置まで姿が掻き消える程の速度で加速する。右下段に構えた刃に突進の力を加え体を捻転しつつ振り出す。


蜘蛛は目を気にしながらも第1肢、2肢をくっつけて振り下ろすように嫁めがけてスタンプしてくるが速度に対応できずすり抜けるようにして嫁の斬撃は目と目の間にクリーンヒット。


「ダメだよ、その子には実体は無いみたい!」


攻撃のヒットの瞬間、叫んだのはルシエだ。天馬から降り、蔦が絡まって出来た様な杖を構え嫁の体を風の精霊の力で引き戻す。確かに嫁の刃はさらに腐食が進んだものの全くと言って良い手応えが無いままに瘴気を切り裂いただけに止まっていた。


「実体が無いって?どゆことぉ?」


魔法で宙吊りのまま嫁は尋ねる。


「瘴気は核となる動物の死骸を中心に長い年月を経て、今のモンスターの様な姿を形作る事が多いんだよ。」

「ふむふむ、物知りぃ~」


魔法が解けてゆっくりと着地し、構えなおしつつ横目でウインクする嫁。


「だから、瘴気を分散させるか消滅させるかして、核を落とさないといけないんだ!」

「了解ぃ、蝶華ちゃんも聞いてたね?」

「モチのろんです。」


蝶華ちゃんの嫁化が進んでいるような気がするが気にしたら負けの様な気がするので触れないでおこう、今の攻防で約2分。おっさんの詠唱も終わり結界を無事張り終えたところであった。


 「皆無事?」


後ろからのおっさんの問いかけに3人は口は開かず、視線も蜘蛛から逸らさずにコクリと頷く。

それを見てからおっさんは、全員に【持続回復(大)】を無詠唱でかける。淡い光のエフェクトが4人の体に纏われ、時間経過と共に体力が回復していくものだ。


全長15mとはいえど、その殆どは足の長さによるもので頭から腹の先まではせいぜい5~6m、この瘴気の塊をどうするか、打つ手を準備しないといけない。

同時に洞の防御も怠れないので二手に分かれるのが得策と考えたおっさんは全員に再び声をかける。


「嫁、蝶華ちゃんは洞の防御について瘴気の分散もできたら宜しく。」

「オフェンス終わりぃ~。」

「了解です。」


おっさんは杖を構えたままゆっくりと蜘蛛を睨みつけるようにして歩く。バックステップで嫁と蝶華ちゃんが洞の前方に到着したのと同時にルシエにも指示を飛ばす。


「ルシエさんの魔法は強力になればなる程詠唱が長大になってしまう傾向があるので今回は私を引き戻すのを中心に、でも自分の身を守るのが最優先です。」

「わかったよ、ボクがどんな位置からでも旦那様を釣り上げて見せる。」


杖を竿の様にしてジェスチャーしているルシエに突っ込もうかどうか悩むが、蝶華ちゃん同様きっと気にしてはならないのだとおっさんは自分に言い聞かせた。


「私が瘴気を消し去ったら、嫁が核を一点破壊で!シンプルに行こう。」


言い終わったと同時に両手で杖を握り直し、【範囲浄化】を唱えつつ高速で蜘蛛の足元に駆け寄っていくおっさん、先程の嫁同様、第1肢2肢の妨害をすり抜けつつ頭の下に潜り込む。


範囲浄化により悪かった視界が少しづつ元に戻り始め、淀んだ空気が収まってくる。それを見て蜘蛛は焦ったのだろうか?恐怖したのだろうか?怒ったのだろうか?口を開いて猛烈に瘴気のブレスを吐き出す。


嫁が剣の風圧で洞へは瘴気が届かない状態を守ってくれるはずなので、おっさんは少々無茶しても平気だと考えていた。【範囲浄化】をさらに重ねがけした上で、真下から突き上げるように杖を掲げ、魔法を放つ。


聖光(ホーリー・レイ)】これは初日に使った【三稜鏡光(プリズム・レイ)】の上位魔法で、浄化の聖なる光の属性を持つ。自動でホーミングできる魔法の光はおっさんの手前で5条の光の筋となり、真下から発射された光は蜘蛛の胴体に当たると同時に5方向に中心から分散するように放射状に拡散して伸びていく。


ほぼ胴体部分の全てに魔法は命中している、のけ反る様に蜘蛛は苦しんだ様なアクションを取るが次の瞬間に真上に高く飛び上がり足を全て広げボディスタンプを繰り出す。


「ふむ、点でダメなら面ですか。賢い子ですね。」



おっさんは冷静に蜘蛛のお腹を見上げていた・・・・







長くなりそうだったので分割しました、アップ遅くなり申し訳ありません

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