〈閑話4〉スィーリズの動向
私はセドム、女神スィーリズの筆頭傍使え天使をやっております。
「キタキタキター!!」
何やら主が騒いでおります、あれだけ忠告しても天変地異を引き起こしてしまって、神力の使い過ぎで一週間近く寝込んでおられたというのに・・・何があったのでしょうか?
「流れ込んでくる、神力が・・予定の100分の1くらいでまだまだ物足りないけど、確実な手応え。」
大災害を起こして祈りの力を高めようとしたところ、あっさりと聖女の力で場は収められ、何事もなく時間が経過していくと思われていたのですが、成程。
目を遠見の写し鏡に落とすと、中小の教会のシスターや孤児達が毎日必死に祈りを捧げています。人間国のすべての教会で似たような状況を作り出したのは、聖女による政策によるものでしょう。
「流石は聖女ですね、見事な人心掌握です。」
「きっかけを作ったのは私なのですけれどもね。」
ドヤ顔で女神スィーリズは腰に手を当てておられる。「威張るこっちゃないですよ!」と心を読まれることなく突っ込みを入れる私、成長しています。
「これでそう時間をかけずとも次の手が打てるようになるわね。」
「次の手・・・ですか?」
「そうよ、もっとガバっと手っ取り早いのがいいわね。」
テンションが上がりすぎて落ち着きのないはしたない言葉が続いておられますが、それでも主は主、無下に扱ってはいけません。
「そうですね、祈りの中心となるような奇跡でも起こしてみるのが宜しいのでは?」
無難に民に影響の出ないよう私は主に提案いたしました。しかし、主が派手好きなのを失念していたことをこの時は私は気が付いておりませんでした。
「奇跡、奇跡ね!分かったわ、もう少し時間はかかるだろうけれど必ずやって見せるわ」
両手でガッツポーズしながら決意を新たにする女神・・そうそうこんなお姿見られるものではありません、ありませんが、もう少し落ち着いてほしいものだと心の中で嘆息します。
それにしても流石はフィーリズ様の世界の特異点、1500年以上経過しつつも何の変化も得られなかった世界に降り立ってまだひと月も経過していないというのに絶大な効果をあげ今も尚活動中。
王族、貴族、一般、貧民と人間国で分けられているカーストの連携を教会を主体としつつ、王族貴族の面子を潰さない形で実行するとは、いやはや驚かされるばかりです。
やり方は聊か能力に頼ったいわゆるチートってやつなのでしょうか?ですが、特異点らしい目覚ましい動きを見せて国王や宰相を説き伏せていく姿は称賛に値します。
意図的に争いにならない様にする立ち回り、諍いを極力避け、力を見せつけるのではなく、語り掛けることで相手に悟らせる、まさに正義、正義の人なのでしょうね、聖女は。
真の正義とは只の正しさでは無く、互いの正義を認めたうえで、相手の悪い部分を相手自身に悟らせ気が付かせる事にあります。ただ正しくて美しい事では無いのです。その点聖女は良く分かっている様子。
自分の正義の正しさを伝え、勝ち誇るわけでもなく、分かち合い、分け与える、本当に聖女らしい性格をお持ちだ。
それに比べて・・・うちの主は・・・
チラッと女神スィーリズの方に目をやると何やらガチャガチャと神具や神器を漁っています。今の神力の貯まり具合では満足に使用することもままならないでしょう。なのに、何をそんなに焦ってらっしゃるのか・・心中は御察ししかねますが、焦ってまた今回の様な民に迷惑がかかるような真似をしないことを祈るばかりです。
一方フィーリズの神の間では・・
「バスティ、【感覚共有譲渡】使ってるわよ、そう、嫁の方が」
「例の特異点スキルですね?これって一日一回一人につき一生に3回まで適応とかってルールでしたか?」
「そうよ、地球の神々って3回って回数がお気に入りみたいだし、私も倣ってみたの」
「このスキルの内容だと一生に3つは多すぎるんじゃないかと?」
「そうかしら?使い勝手が難しい分使いどころさえ間違わなければいい仕事するスキルだし良いじゃない?」
「いいんですが、やり過ぎてしまう可能性の方で心配しております。」
「そうね、あの夫婦の思考は回転数高すぎるから・・まぁ、誰かさんの手には余る人材のはずだから気にするだけ無駄ね」
遠見の写し鏡の中では嫁が全ての知識を蝶花に譲渡しておっさんが慌てている・・・
「す、全ての知識とかって、あの嫁クレイジーでしょう?」
「テンパりすぎよバスティ、口が過ぎるわ」
「すみません、動揺しすぎました、しかし・・・」
「そうね、あと何人かは魂の移転枠を確保しておいた方がいいわ、焦らなくてもいいから宜しくね」
「仰せのままに」
いつも通りに顎に手を当て、思考のポーズを取りつつ女神フィーリズは呟く
「目的や目標が無いのによくもこう毎回上手い具合に主要人物と接点が取れるものね・・・」
チラッと後ろを振り向きつつ、独り言ちる女神・・・
「全ては神の思召すままに・・・か」
ニンマリと笑みを浮かべ遠見の写し鏡をのぞき込み、テーブルの上に置かれた神酒を煽り、満足げに目を細める。次の瞬間女神は立ち上がり。
「バスティ少し出るわ、ここは任せるわよ!」
「どちらにお出ででしょうか?」
「父の所よ。」
「は、行ってらっしゃいませ」
優美でゆっくりとした動きで女神フィーリズはその場を去った。
バスティは主の出した仕事をこなしつつ、特異点二人の事や、同僚セドムの事を考える。
「特異点は二人合わされば下手な神よりも影響力がある。セドムは応対に苦慮してるだろうなぁ。」
天使に性別は無く、中性である。想い人がいたり、感情的に高ぶると天秤がどちらかに傾くとされているが自分にはあまり縁のないものだと思っていた。
彼女は自分の姿を見ることなく、執務をこなしていく。全ては主の為に、そう表では思いつつ




