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おっさんは聖女になりて異世界を憂う  作者: とくみつ ろゆき
人間の国編・妖精の誘いと聖女の憂い
29/86

里帰りの道中

朝食を終え、コテジで転移して町の宿屋へ戻った聖女一行(おっさんたち)だった

行きは3人と2羽、帰りは4人と2羽と荷物が少々増えている


宿屋の主人に長い事部屋を融通して貰った礼を言い、パトンの商会を訪れる


「パトンさん、長期間馬と馬車を預かってもらって有難う御座いました」

「聖女様、今日ご出発になられるのですね」

「はい、これから行く所が決まりまして」

「そうですか、ではこちらをお持ちください、もう一つの村の特産品です」


何だろうと大きめの麻袋をのぞき込むと白い丸い円柱が見えた、艶やかで固く良く水気が飛んでいる


「チーズですか、有難うございます大事に使っていきますね」

「はい、宿屋の女将から聖女様は大層お料理が上手だと聞き準備させていました」

「何から何までパトンさんにはお世話になってばかりで申し訳ないです」

「いえいえ、町の悩みを解消してくださった皆様ですこのくらいはさせて下さい」


町の人々に手厚く見送られながら、増員した聖女一行(おっさんたち)は中継地点である次の村を目指す


馬車の御者は蝶花、左右にフギンとムニン、荷台におっさんと嫁とルシエの構成である

ルシエの荷物はすでにしっかりと纏められており、移動を想定してかそれほど多くない


馬車に揺られつつ森を抜けてから西へと進んでいく、切り株の長老の言っていた通りだけれど今回は道案内の2羽がいるために安全、安心ルートを進んでいる


「!!!」


一瞬おっさんに怖気が走る、何かがいる?そう思った時にはその気配は収まっていた


「どしたのぉ?」

「いや、多分平気なんでもないよ」


おっさんはモンスターか何かが通りかかっただけだろうとその時は気にも留めなかった

そのまま馬車はひた走り、それでも村までは届かず一泊目は野営となった


森を抜けてから森沿いを進んで現在の速度だと3日程で目的の村には着くそうだ

空を飛べる者達ならば数時間程らしいのだが、馬にも無理はさせたくないし、急ぐ旅では無い

結界を張ればどこでもある程度は安全に休めるのでおっさんは野外調理を楽しんでいた


あっという間に3日の道程は終了し、村が見えてくる、ルシエはおっさんたちととても良く馴染んだ


まるで長年共に暮らしていたかの如く屈託なく話もするし、意見も言える、ルシエの性格が良いのだろうかそれともエルフの女王として英才教育された賜物なのかおっさんにはわからなかったが、いい傾向だった


到着した村はありふれた小さな村で、宿屋は無く、町長にお願いして空き家らしき古い家をお借りした

来た時よりも美しくの精神でおっさんは範囲拡張の魔方陣を空き家の周りに書き込み


【浄化】を唱える、一瞬にしてチリや埃などといった不要物のみが除去され、片付ければすぐに泊まれる状態になった、テキパキと邪魔なものを片付ける嫁と蝶華、少し遅れつつもきちんと嫁の指示を仰いでから行動するルシエを見つめながらおっさんはフギンとムニンに問いかける


「王女は昔からあんなに良く働くいい子だったのかな?」


「そうですね、賢く、思いやりがあり、好奇心の強い子でした」

「それが仇となって200年も放浪されていた訳ですが・・・」


少し遠い目になってしまったフギンとムニンの頭をそっと撫でる


「捜索は大変だったのですね、お疲れ様です」


2羽のカラスはその言葉一つで何かが報われるような気持になりフルフルと震えていた

見つからない探し物を200年するというのはとても、とても言葉には出来ない事なのだろう



その後おっさんは馬車から毛布を人数分取り出して屋内へと運び込み寝床の確保はできた

まだ暗くは無いので村長の元に行き


「病人やけが人がいれば診せてください、薬等も持っていますし、無料で結構ですので」

「おお、助かります小さな村故病院も医者も無いもので」


空き家にあった椅子とテーブルを家の外に出し馬車の前に衝立をしてそれらを設置し、簡易診療所を開設

20人程の村人を順々に診ていった

幸いな事に重病人や大けがをした人はいなかった


最後に現れた体格の良い男性の村人の腕に大きな古傷がある


「この傷はかなり古いものですね、どのように受傷したか伺っても?」

「10年程前に森の中で突然大きな蜘蛛に襲われたんだ、音も無く現れて酷い瘴気を放っていた奴でなぁ、持っていた松明を投げつけた所たまたま目に当たってくれて命からがら逃げて戻ったよ」

「幸運でしたね、生き伸びることが出来て良かったです」


リアはスッと男の腕をさするようにして【ハイヒール】を無詠唱で唱える

男性の古傷は摩り終えた部分から傷が消えて何事も無かったかの様に皮膚は元通りになった


「これは・・回復魔法?初めて見た、凄いもんだな」

「一泊の恩に報いる行為ですので、お気になさらず」


衝立で周りからは見えてはいないが一応口の前に人差し指を立てて、口外しないでねとアピールする


村長からはとても感謝され、夕食は村の婦人会が作ったものを空き家に持ち込んでくれた

屋根の上にいた2羽も屋内へと入れて、4人と2羽で夕食を取り


「明日はいよいよ森に入ります」

「歩けば3~4時間といった所でしょうか」


フギンとムニンが道のりを説明する、器用にコップから水が飲めるらしく嘴を潤しつつ話している


「結構深い所にあるんですねぇ」

「馬車はこの村に置かせて頂いて、ここに帰還石置かせて貰っとこうか」

「だねぇ」


明日の予定は固まった、ルシエはここに来て少し緊張が高まったのか口数が減っている


「ルシエさん」


蝶華が話しかける、蝶華は事ある毎にルシエを気遣い尊重してくれている、嫁同士の連携でも生まれたかな?とおっさんは推測するが、脳内で『お主も嫁の一人であろうが!このたわけが』と女帝にどやされて自分が女性であることを時々忘れがちな部分を反省する


立ち居振る舞いが如何に女性らしくあっても自分はやはりおっさんのままであって、真の女性の母性には敵わないんだろうなぁと嘆息し、蝶華がいて良かったと改めて実感した


そんなことを考えている間に蝶華のルシエへの心のケアは終了し


「有難う、ボクちょっと弱気になってたみたい」

「いいえ、一歩踏み出す時は皆怖いものですし、恥じる事なんて無いですよ」


結構に年上のルシエをしっかりとした母性で受け止める蝶華だった、おっさんは少し尊敬の眼差しを蝶華に向けて


「蝶華ちゃんは優しいんだね」

「そ、そんな事は」

「あるよ」


おっさんはいつも通りの優しい微笑みで蝶華を見つめてポンポンっと背中を叩き


「自身を持っていい、蝶華ちゃん、そこは誇れる部分だから胸を張ってね」

「は、ハイわかりました」


少し熱の籠った蝶華の視線を受けつつもサラリとおっさんは踵を返し、嫁に声をかける


「明日はもしかすると強力なモンスターに遭う可能性もあるし警戒は厳に宜しくね」

「ガッテンだよぉ~♪」


普段通りの緊張感のない嫁の返事だったが瞳はそうでは無かったためおっさんは安堵し床に就く


「明かり消すよぉ~?」


嫁が全員に一応確認をしてランプの灯を落とす、夜は静かで冷え込むことも無く4人でくっついて眠った




翌朝目が覚めるとルシエは既に起き出していて、フギンとムニンと話をしていた

何か今日の里帰りの打ち合わせをしている様でもあったため、おっさんは邪魔しないように屋内で大人しく朝食の支度をする

支度と言っても前の町で作り置きしておいたサンドイッチと厚切りベーコンを焼いたものを取り出すだけである、あとは飲み物を準備して椅子に座り、皆が起きるまで暫し待とうと思考の海に沈む


「リアさん?リアさーん!」


ハッとして気が付くとルシエが揺さぶっている状態だった、完全なる寝落ちだった


「あ、おはようございますゴメン寝ちゃってたみたい」

「あは、リアさんってそういう部分もあるんだね、ボクもっと真面目で硬い感じなのかと思ってたよ」


リアはルシエから見ると少し取っつきにくい女性だという認識だったようだ

道理で蝶華との接点が多いわけだと納得しつつも、硬さは良くないなと少し自省して


「そう思われてしまったなら申し訳ないね、嫁から説明を受けていると思うんだけれども中身は男だし、どうしても口調が硬くなりがちで・・」

「澄んで美しい魂の色、淀みなく、清らかで、心地よい空の色」


そう言いつつルシエはおっさんの頭を前から抱きしめた、そこまで大きくは無いけれど多少の主張がおっさんの顔面を圧迫する


「ボクも旦那様って呼んでもイイ?」


少し離れてから両手で頭を把持した形になってから深緑色の瞳がおっさんの蒼い瞳をまっすぐに見つめている、ルシエは魂の色がわかるんだなぁとおっさんは思いつつ冷静に言葉を返す


「呼んでもいいですが、急にさっきみたいなことは止してください、びっくりしますし、その」

「その?」

「体は女性同士であってもすごくドキドキして心臓に悪いので」

「愛いね~ボクそういうの大好きなんだ!」


そのままチューっと唇を奪われてしまうおっさん・・・真っ赤で目を白黒させていると


「ずっるーいそれは私のだよぉ!」


嫁である、人差し指で指さして大げさにアピールしている


「旦那様は私の旦那様です!」


ああ、蝶華まで?胸の前でピーカーブースタイル、可愛いけど・・助けて・・・


おっさんは例の如くブラックアウトする、次の瞬間にはルシエの口腔内は女帝に蹂躙される


「んんぅ・・んんっ、ふうっ・・んっんっ」


くたりとテーブルにもたれ掛るルシエ、女帝は舌で唇を一周ペロリと舐め


「ふむ、お主もまた愛いのぉ」

「お、オハヨウゴザイマス」

「おはようございます、私顔洗ってこようかな」


フリーズする嫁、逃げ出す蝶華、やはり女帝は女性陣の中では最強のカリスマなのだった

ブラックアウトしたおっさんが朝食を終え、戻ってくるまでにルシエを含む全員が女帝の配下の様なカーストが完成してしまった


「やっぱりリアさんって素敵だね」


ルシエはゾッコンだった


「最も勝気な旦那様の心模様の権化?かもだからねぇ~♪」


嫁は会う毎に女帝を少しずつ分析しているようである


「精進しないと!」


蝶華は己の不甲斐なさを悔いて克己心に満ちているようだ・・・




目が覚めると皆がテキパキと支度を進めている、姦しさの欠片もない、女帝よ貴方は一体何をしてくれてるんだ・・そう脳内でクレームを入れつつおっさんも支度をしていた




十万字突破です、皆様の応援に感謝!励みになりますので評価も宜しければ御願い致します。

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