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おっさんは聖女になりて異世界を憂う  作者: とくみつ ろゆき
人間の国編・妖精の誘いと聖女の憂い
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エルフのしきたり

グラタンが完成した


「美味しそぉ~!」

「ですね、すごく香りがいい」


こんがりとキツネ色がつき、バジルの香りとチーズの少し焦げた香りが鼻孔に心地よく抜ける

キノコの食感も残るように最低限しか火は通さなかったし、上出来である


ミトンを着けて素焼きの器をテーブルの方へと運んでいく

ルシエと2羽の話し合いは終わって、昔話に突入しているようだ


「お嬢にはよくかくれんぼで逃げ切られたものですが200年隠れられるとは思いませんでしたよ」

「全くです、しかも捜索隊と同じ都に同時期に居ながら逃げおおせておいでとは・・」

「アハハ、ボクも必死だったんだよあの頃は」


2羽のカラスがルシエを挟むように左右に立って話していた

おっさん達は食事を始める前にルシエとフギンとムニンにも確認する


「皆さんの分も有りますが、食べられますか?」

「ボクは食べたい~」

「聖女の料理!頂きましょう」

「感謝致します」


ルシエにはフォークとスプーンを、おっさんと嫁と蝶花はマイ箸を箸袋にもっている、それとスプーン

2羽は嘴で食べれるだろうから何も置かずに素焼きの器を敷物をしてから差し出す


「熱いからゆっくり食べてください、ゆっくり過ぎると覚めますが」

「は~い」

「承知しました」

「了解だ」


ルシエと2羽がグラタンと睨めっこしている間におっさん達は手を合わせ3人で同時に


「頂きます」


ポカンとした表情の3人をしり目に嫁が箸で羽黒鷲の切り身を摘まんで口に運ぶ


「ハフハフ・・ほいひい・・ングング・・」

「頂きます、は食への感謝の祈りで、私たちの国での習慣みたいなものです気にしないで下さい」


おっさんはハテナ顔だった三人に一応説明をしつつ箸を進めていく

キノコの旨味と羽黒鷲の旨味が合わさり、タマネギとニンジンの甘味とあいまって良い味になっている

胡椒がいい仕事をしてコクのあるホワイトソースを引き締めており、付け合わせのブロッコリーもどきとの相性も抜群だった


「聖女様はいい嫁になれるでしょうな」

「里でもこれほどの料理は食べられないですぞ」


カラスに褒められる等とは露にも思っていなかったのでおっさんは少し照れる

黙っているルシエの方を向くと、号泣していた・・・・


「うぅ、美味しいよ、こんな料理ボク・・初めて」

「大袈裟ですよ、ルシエさん」

「そんなことないよ、私も蝶花も旦那様に胃袋鷲掴みされちゃってるモン」

「ですね、普通の料理ではやはり少し物足りなくなってしまう程です」


これといって難しい料理ではないんだけれどなぁ・・とおっさんは嘆息しながら食べ進める

ワイワイ言いつつ食事を終えると外は真っ暗だった


「今日はボクの家に泊っていきなよ」


近いとはいえ暗い森を戻るのも考え物だと思い、おっさん達はお言葉に甘えることとする

ルシエの案内で寝室に移動するとちゃっかりベッドが4台並べてあった


「こういう事もあるだろうと思ってね、準備してたんだよ」


しれっと言いつつドヤ顔のルシエがいた、おっさん達は各自ベッドを決める

決めたのだが・・嫁と蝶花がベッドをくっつけている3台のベッドがくっつきキングサイズになった


「これで安心だよぉ」

「ですね」


何が?とは聞かなかった、聞けなかった、おっさんは全員に【浄化】を唱える


「リフレ~っしゅ」

「さっぱりしました」

「あ、有難う」


お風呂も無さそうだったので早々に綺麗さっぱりしてもらおうと【浄化】を使ったおっさんだったが

ルシエはなんだか少し様子が変なことに気づいていた

モジモジとして何かを考えているような、そんな雰囲気のまま4人はベッドに入る

フギンとムニンは棟から突き出た木の上で休むそうだったので、そのまま眠りに落ちる



朝起きると左に嫁右に蝶花、いつも通りの筈が・・いつの間にか4つ目のベッドもくっついて嫁の隣にルシエが抱き着くようにして眠っていた

何となく嫌な予感がしていつも通りに下にずるずると下がるようにベッドから抜け出るおっさん


「ふむ、夜の会話の内容をフギンとムニンに少し聞いてみようかな」


おっさんは独り言ちて外へ向かう

朝の森は霧がかかって空気の濃度が何時もよりも濃く感じられ深呼吸したくなる

伸びをしながら木の上にいるはずの2羽を探すと一瞬羽音がして2羽がおっさんの前に降り立った


「聖女様少々お話をよろしいでしょうか?」

「はい、構いませんよ」

「快諾に感謝を」


近くにあった切り株に腰かけ庭の柵の上に移動したフギンとムニンと向かい合う

フギンが仕切って、ムニンが補助的な事を伝えるのがこの2羽のパターンである事が昨日までの会話でおっさんは理解できていた


「まず、エルフ族のしきたりについてのお話を致します」


「はい」


「エルフ族の婚姻はまず想いを伝え、了承を得ます」

「その後想いあった者同士が同衾することで確定致します」


「つまり?」


「お三方とルシエ様は同衾なさった状態であるとお見受けします」

「早朝より拝見すれば仲良き事まごう事無しかと」


「でもルシエさんは夜モジモジしてたけれど想いは伝えてないし、こちらも何も答えてはいないよ?」


「セシル様は大好き~♪とか」

「愛してるぅ~♪などと言いつつ女王を抱きしめておりましたが?」


完全に誰かと間違えて寝ぼけたうえでの寝言である、しかし、2羽にはそれは通用しないようで


「里に報告に戻らねばなりません」

「それで、お三方も里に共に来てほしいのです」


「理由はさっきのしきたりに付随するものなんですか?」


「そうです、が、王女の提案でもあるのです」

「お三方が一緒ではないと里へは戻らない・・と仰って聞かぬのです」

「なるほど」


恐らくはルシエは最初からこれ狙いだったのだとおっさんは気づいていた

その上で今後の王女の扱いをどうするか、この国の婚姻事情に明るくないおっさんは少し悩んだ


「エルフ族は異種族とも婚姻が結べるのですか?」


「はい、エルフ族は半永久的な寿命もありまして多くの種族間との婚姻を結んでおります」

「重婚も多く、多い方は100人近くも嫁や夫がおられる方もいます」


「ひゃ、百人ですか・・想像を超えてますね」


「なので、これ自体は何の問題もございません」

「ご安心ください」


うん、ちっとも安心できない、とは返せずにおっさんは、まぁなるようになるか・・と


「わかりました、里へ同行致しましょう」


返答を受けてフギンとムニンは心底安堵した雰囲気となった


「有難うございます200年ぶりの王女の帰還が叶いますのは聖女様あっての事」

「我々だけでなく里の者全てを代表して最大の感謝を」


何だかこの2羽の中での株がストップ高なのはわかるんだけど、何もしていないおっさんは不思議と持ち上げられている感覚が否めない

ルシエの本心が見えない以上はこれ以上の会話は必要ないかなと話を終えて立ち上がり屋内へと戻る


「あ、旦那様おはようございます」

「おはよう蝶花、残りの二人は?」

「それなんですが何だか大変なことになってまして」

「大変なこと?」


蝶花に言われて寝室の方に向かうと嫁とルシエがベッドの上で向かい合って正座していた


「ふつつかものですがよろしくお願いします」

「こ、こちらこそ」


わけのわからない状態で了承している嫁におっさんは


「お~い嫁、説明全部任せるけれどいいかな?」

「いいとも~♪」


これで不都合は無くなるだろうと胸を撫でおろす


「良かったのですか?その、結婚って」

「蝶花ちゃんもセシルと結婚しよう!」

「はい?」


おっさんは閃いたとばかりに蝶花に結婚を勧めた


嫁はおっさんにとって掛け替えの無い女性(ひと)である、守りたいし、共にあって同じ時間を過ごしたいと思う、しかしこの世界ではそれだけではいけない


嫁はおっさんに依存することなく、おっさんを守ろうとしたり、リアの力になれるようにと立ち回っている

並び立とうと願っているのだとおっさんは思っている


で、あるからこそ嫁の行動にはおっさんの誘導ももちろん必要だが、本人の選択した意志を尊重していこうと思った、決して女帝に諭されて納得した訳じゃない


故にセシルとしてルシエを受け入れるのであれば、蝶花ちゃんが同時に受け入れられても問題は無く

おっさん的にはずっと先に不安がある点以外は心配事は今は何も無いのだった


「その、リアさん的に問題は無いのですか?」

「無いよ今吹っ切れた」

「そう、ですか、なら私も結婚します!」


嬉しそうに微笑む蝶花とルシエを見ながら


コテジ拡張しないとかな?


部屋数の割り出しを脳内で進めつつ、おっさんは朝食の支度を始めていた












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