2章プロローグ
深き森の中、美しき湖のほとりいくつもの光が舞い踊り明滅していた
それらの光はやがて実体を持ち形を成し自我を得る・・妖精と呼ばれる種族である
世界の様々な場所で伝承に残るそれらは自由で身勝手でいたずら好きなそんな種族
無邪気であるがゆえに残忍で恐ろしいこともする、赤子と同じなのだ
だが、どんな形であれ自分以外の存在と積極的に関わろうとする意志は有るのだろう
関わらなければ知ることも、見ることも、感じる事すらできない存在
それが妖精であった
羽の生えた者、鬼火の様な物、カボチャの様な物、猫、犬、小人、様々な姿で言い伝えられるそれらは
見た者が認識して初めて形作られているモノなのかも知れない
一台の馬車が森の中の馬車道を走っている、御者とホロの中には満載の荷物
商人だった、蒼い顔をして手綱を握りしめ前だけを見て懸命に馬を走らせている
何かに追われるような悲壮感のある表情で、脂汗を流し、目は少し虚ろだった
息を荒げ、真っすぐに森を抜けようとしていた
丁度そのころ、聖女一行も森に差し掛かろうとしていた
「ここが通称迷いの森です」
「お~!ふぁんたじぃ~って感じ」
「マップ見れるから基本はどんな迷い道も平気なんだけれど、迷ってるんじゃなくって惑わされているとすると話が変わってくるね」
「リアさんはこの森をご存じなのですか?」
「いいえ何も知らないよ、ただ迷いの森って名称が付く森は結構いろんな場所にあってね、何かしらが存在して何かしらの影響を与えてくる、結果迷うんだと思ってる」
「森自身に意思があると?」
「その場合もあるけど、森っていうとアルラウネとかドリアードとか樹木系の妖精、精霊が居そう」
「マンドラゴラ~」
「ご主人様は何だか博識ですね、異世界から来られたとは思えない情報量です」
「樹木系だけじゃなくって、羽妖精とか、ウィルオウィプスとか、異世界にも色々な伝承が残っててね、知識としては豊富だけれど実際に会ったことは無いんだよ」
「そうなんですね、まるで会ったことが有るような言い回しで勘違いしちゃいました」
「私は会ってみたいよ~妖精~♪」
「実際出る、と言われているのがこの森なのです」
「ふむふむ~」
蝶華は話しながらも順調に馬車を進めていく
少し前方に一台の馬車が傾いて停車している、泥濘にでも嵌ったのだろうか?
蝶華は少し大きく馬車を避けて通過しようとする
すると馬車の陰から一人の男が出てきてこちらに助けを求めて来た
『厄介事の雰囲気がビンビンだね』
『そだねプンプンだね』
おっさんと嫁はわかった上で乗っかっていくこととした
「蝶華さん、そこで馬車を停車して、事情を聴くよ」
「わかりました」
馬車が完全に停まってからおっさんと嫁は後ろから降りて真っ青な男の方へ向かっていく・・




