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おっさんは聖女になりて異世界を憂う  作者: とくみつ ろゆき
人間の国編・教会を救いし聖女の憂い
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おっさん正式に国家認定聖女となる




おっさんが神代魔法を行使して大穴を開け、土石流がそこに流れ込んでいる様を王と宰相と護衛騎士達は遥か遠くで起きているにも関わらず感じていた


「なんだ、この詠唱は?どこから聞こえておる?」

「この脳内に響く声はリア殿のモノに間違いありますまい」

「あの巨大な光の玉をリア殿が一人で・・・首都を灰燼に帰される事が無くて良かったのぉ宰相よ」

「全く以てお恥ずかしい、あれ程までの力を持つ方に無礼を働いた自分が不甲斐ないです」


一時間もすると土煙が収まり、巨大な湖と今だ流入している土石流が遠目に見えるほどになった


3時間程するとセシル殿から兵士に事態収拾の報告とリア殿が寝てしまっているとの情報が入り王と宰相は執務室に戻った


「首都は救われましたな」

「この褒美は何にすれば良いものか・・悩むのぉ、宰相、案を求める」

「まず国家認定聖女として厚遇致しましょう、各領地の移動や関所でも自由に移動できるよう国の紋章入りの物を与えるなどして」

「そうじゃな、この国一つに手に負える人材では無いしのぉ」

「あとは無難に資金と、あの湖の管理も国で行う事として、貧民にも協力を願えるように手配致しましょう」

「ふむ、それならば聖女の意にも反すまいな」

「あれだけ豊富な水量が街の近くに移動した事を考えれば利益は計り知れません」

「サントリア・ルラック・・どうじゃ?湖の名では」

「それ以外に名称としては思い浮かびませんな」


顔を見合わせて笑う王と宰相、聖女達と兵士達の休息も兼ねて3日後に聖女一行を城に召喚して褒美の授与を行う事とし連絡を聖女の泊っているという宿屋に向かわせた


王宮からの遣いが宿屋に到着して、女将がざっくりとした説明を受け驚愕している


遣いが去った後でセシルが部屋から現れて、女将さんに手軽に食べれる物を作って欲しいと頼む

セシルに王宮からの手紙を渡して女将は厨房へ向かう


「任しときな、旨いもの食わせてあげるよ」


女将は腕に縒りを掛けて夕食兼夜食の制作にとりかかる、この店の素材では豪華な物は作れない

それでも手間と工夫で少しでも美味しいものをあの3人には食わせてやりたかった


「公爵家の馬車に乗り込んで王宮へ行ったと思ったら、実は聖女だったって・・・?」


女将は唐揚げを漬けダレに浸して揉み込みながら狐に抓まれたような気分で調理している

最初に宿泊に来たときは世間知らずのお嬢さんかと思っていたが・・・

考えていると少し可笑しくなり、女将は一人笑っていた




そのころレイネは教会でシスターとお話していた


「リア殿は誠の聖女でした、シスターのお導きに感謝致しますわ」

「いえいえ、私も彼女に救われた身ですので」


小会議室でお茶をしつつ話をする二人

今後の中小教会の動きも決めつつ、リアを称賛し微笑みあっている


「今日は当教会にお泊り下さいな、もうじき夕食ですご一緒に」

「済みません、お言葉に甘えます」


夕食の支度が出来たと巫女(シスター)見習いの一人が呼びに来て食堂へと向かう二人

席に着くとレイネは器に盛られた汁に浸る麺に目を奪われる


「シスター、この料理は?」

「小麦を練って、踏んで、寝かせて、また踏んで作る遠い異国のうどんというお料理らしいですわ」

「それはまさか?」

「ええ、リア様とセシル様がお教えになって下さったレシピです、安価で温かく、消化もいい、とても教会には良い料理だと思いませんか?」

「素晴らしい!是非帰る前にレシピを教えて頂けないでしょうか?」

「勿論です、ああ、早く祈りをしないと冷めて伸びてしまいますので」

「申し訳ありません、つい夢中になってしまった様ですわ」


シスターの感謝の祈りと共に全員が箸に手を伸ばし器用に食べていく

レイネは箸に苦戦しつつもうどんに舌鼓を打つ


「出汁はあっさりしかし旨味はあり、もっちりとしてツルツルの麺に良く合いますね」

「土地土地の特産品を麺の出汁に浸して頂くのが良いそうですの」

「なるほど、各教会へ伝えて行けば様々な味のうどんが生まれていく事になりそうです」

「貧民などの消化器官が弱っているものでも食べられるという事で提案していって宜しいかと」

「流石は聖女ですね、どこまで民を想っておられるのでしょう」


レイネは勘違いをしている、うどんは嫁の得意料理である、そして嫁はうどん以外の調理が苦手である

つまり、たまたま教会でうどんを打つことになった訳なのだがそんなことは当人以外知る由もない



翌日、教会へと聖女が現われた


「レイネさんがいらっしゃると王宮の護衛さんから聞きましたので伺いました」


リアは肩にかけていた郵便物などを入れるような大きなカバンを降ろし、レイネに手渡す


「これは?」

「魔法のスクロールです、足りないようでしたらシスターにお手紙でお伝えください」

「こんなに大量に、有難うございます」


深々と頭を下げ感極まっているレイネの傍にいるシスターに声をかける


「オルフェちゃんを呼んでもらえますか?」


シスターはもちろんです、とすぐに孤児院に向かって歩き出し暫くするとオルフェと共に戻ってきた


「どうしたの?リアさん」

「やっとオルフェに頼まれた願い事が達成できたと思ったから報告だよ」


リアはニコリと笑ってオルフェの頭を撫でる


「私の願い事・・・」

「言ったじゃないか君は?シスターを、皆を助けてって・・・」


シスターとレイネは目を見開き手を組んでリアを見つめている


「他でも無い君の願い、君の祈りは結果として街を救う力になった」

「そんな、私何にもしてない」


リアは大きく左右に首を振る


「あの時オルフェと私が出会わなかったら、もしかしたらこの街は無くなっちゃってたかも知れないんだ」

「そう、なんだ」

「だから、君にお礼をしに来たの、私と出会ってくれて有難うって」

「私もリアさんに出会って良かったと思うよ、ありがとう」


リアはオルフェを包み込むように抱擁して頭を撫で、オルフェは涙が出てきてポロポロ泣いてしまった


「オルフェはいい子になってきたね」

「うん、がんばる」


その姿を見ていたシスターとレイネもまた大粒の涙を流し立ったまま震えている


オルフェが泣き止んだところで両肩に手を置いてしゃがんだ状態でリアはオルフェに言う


「まだこの世界にはオルフェの様な子が沢山いるんだ、私は一人でも多くのそういう子達を救いに行かなくちゃならないと思ってる」

「リアさん、どこか行っちゃうの?」

「そうだね、少なくとももう少しでこの街からは出ていくよ、寂しくっても頑張れる?」


行かないで・・と考えてオルフェはまた泣きそうになる、でも私の他にも困っている人が沢山いるらしくて

それを救えるのはリアさん以外にいないとオルフェはきちんと考えた


「また、この街にも戻ってくる?」

「ええ、もちろん」

「わかった、今よりもっと良い子になって待ってる」

「うん、頑張るんだよオルフェ」


オルフェの目に溜まった涙をハンカチで拭ってあげてリアは立ち上がる

グズグズに泣いてしまっているシスターとレイネさんに頭を下げて挨拶してリアは去って行った


「敵わなくとも、届かなくとも、祈り、願い、出来ることを行い、あの方の理想に近づかなければなりませんねシスター」

「その通りですね」


教会を救いし聖女の足跡は今後の世界を変えていくだろうと二人は確信していた




二日後王宮にてリアは国家認定聖女となり国の紋章入りのペンダントと金貨を受け取る

中央通りでパレードが開催され、お祭り騒ぎの様に盛大に祝われた、終始苦笑いだが、優しく手を振り続けた聖女とセシルと蝶華だった


ヴァイスプレさんから各領地の現状と場所を聞きこんで次の行き先を決めていくおっさん

国家事業となった街道計画の責任者としてヴァイスプレさんを任命し、教会と冒険者ギルドと、貴族との連携を深めてもらう事となった

公爵邸にも転移魔方陣を設置させてもらい、蝶華は公爵邸への連絡係として今後も頑張ってもらう予定だ


街の門を出るまでに沢山の人から手を振られ、声を掛けられ、一行は資金で買った馬車へ乗り込む

御者は蝶華である


「次はどっちに行くの~旦那様?」

「昨日散々話し合ったろう?」

「そうだっけ?」

「あはは」


3人は小高い丘を馬車で下りつつも終始穏やかに笑っていた






一章は以上になります、次はプロローグになる予定です

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