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おっさんは聖女になりて異世界を憂う  作者: とくみつ ろゆき
人間の国編・教会を救いし聖女の憂い
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<閑話2>乖離する想い

おっさんの転移前、天上の女神スィーリズは焦っていた


デルエールという世界を創世し神力を多く使った、しかし人々の祈りや願いが女神に届けば神力は徐々に補填される時間経過と共に力が漲ってくる・・・・


はずだった・・・


筈だったという事はそうなってはいない、自分だけの唯一神世界にしたのに


「何故?」


人々は信仰を信じていないのだろうか


いや、そうではない

微々たる力の補填は感じてはいるのだ、ただ、思っていた分の1000分の1以下の微弱な量


信じる強さが足りない!


双子神の姉のフィーリズの世界では神が溢れ、祈りと信仰が大規模な時は戦争の引き金にさえなる程強いというのに


姉に後れを取りたくは無い、それは屈辱だ


スィーリズは焦っていた


「こぉ何かど~んと天変地異でも起こせば畏怖と祈りが増すかしら?」

「おやめください、下界の民が苦しみます」


傍使え筆頭のセドムは後ろから制止する


「では聖女を召喚し、信仰の要とするのはどうかしら?」

「天変地異よりかはいいでしょうが、どちらから召喚されるので?」

「もちろん『地球世界』よ」

「お言葉ですがスィールズ様、あちらと張り合うのは聊か分が悪いですよ・・」

「決めた、姉さんに話をして特異点を貸してもらいましょう!きっと祈りは加速するわ」

「聞いちゃいない・・」

「セドム、あなたに姉との交渉を任せるわ」

「はい(いいえと言っても行かされるだろうし)わかりました」


セドムはとぼとぼと背中の羽をパタつかせて地球世界の神の間へ入っていく


スィーリズ様の双子の姉だけあって髪色が緑なだけで見分けがつかないほど似てらっしゃる

有能さと思慮深さも似ればよかったのになぁ


「あら、妹の所のセドムではないですか、ご機嫌よう、思考の中だけでもあの子の批判をすると痛い目を見るでしょうから控えておきなさい」

「大変申し訳ありません、心のカオスがあふれ出てしまっていたようです」

「まぁ、いいでしょう、それで特異点の貸し出し、でしたか?」

「はい、我が主の命を受け参上した次第ですフィーリズ様」

「条件を付けてもいいなら貸し出すことを許可します」

「よろしいので?」

「もちろんです、可愛い妹の頼みですもの、きっと何だかいろいろ墓穴を掘っておもしろく・・・ゲフンゲフン・・・きっと特異点の力を生かしてくれるでしょう!」

「色々何だかやる前から不安しかないのですが、条件をお伺いしてもよろしいですか?」

「条件はたった一つ、特異点の行動を束縛しないこと、これだけよ」

「それでよろしいのですか?」

「ええ、構いませんわ」

「ありがとうございます、我が主もきっと満足なさるでしょう」


深々と頭を下げて感謝の意を伝え、セドムはその場を離れようとする


「お待ちなさいセドム、忠告よ!」

「はい、お伺い致します」

「2度よ、あの子・・スィーリズが2度下界に干渉することがあったなら早めにあの子から離れることをお勧めするわ」

「ご忠告に最大の感謝を・・肝に銘じておきます」



その後スィーリズ様直々に特異点との接触を図り、デルエールへの転移が決まった

女神スィーリズはその時点では大層お喜びになられていたのだが

特異点転移後も神力は一向に戻っていないご様子で


「やっぱり天変地異かしら?」

「おやめください」

「ちょっとだけ、ちょっとだけだから、ね?」

「はぁ・・どうなってもしりませんよ??」

「私の作った世界なんだから、ある程度は私が何しても文句は出ないわよね~」


がっくりと項垂れるセドム、辞表は書いて自室の机の上に常に置いてある

出すタイミングを間違ってはならない、気が付かれてはならない

無心で、女神と接する技をセドムは自力で編み出していた・・・


これで下界に干渉するのは初めてとなる、後一度何かしらあれば私は・・・

首をブンブンと振り自分の思考を否定するセドム

今はまだ仕える主の為にできることをせねば、下界の民が救われないだろう


デルエールの民に影響がなるべく出ないように細心の注意を払ってセドムは手のひらサイズの球を持って女神スィーリズの前に差し出す


「この縮小スケールのデルエールに女神の神力を少し与えれば地震程度なら起こせます」

「地震ね、場所の特定はどの程度の精度なの?」

「指先で触れる程度で半径約5キロは影響下に入るでしょうか」

「ふむふむ、場所は人口密集地から約2キロの直下型で行きましょう!」

「それでは民に負傷者がでるやも知れません!」

「いちいち五月蠅いわね貸しなさい!」


パッと球を奪われてしまい女神はどこかへと去って行ってしまった


「私の祈りは下界の民たちに届くだろうか?」


セドムはそう呟いて自室に戻った





そのころ地球の神の間では、遠見の写し鏡を見ながらフィーリズが大いに盛り上がっていた


「やるわね、ああいう手で嫁を悦ばしにかかるなんて」

「主下品ですよ、覗いてる上に、批判など」

「批判ではないのよ、感心しているの、やっぱり特異点のすることは一味違うわね」


腕を組みウンウンと頷きながら女神フィーリズは遠見の写し鏡を見つめている


「特異点は多分思想の誘導や信仰の促進をまず好んでやらないだろうから、そろそろ第一次の何かが起こりそうな気がするの」

「滅多なことを言わないで下さいませ、ある意味神がそれを口にするという事は予言ではないですか」

「そう、なるわね、でも、もぉ動き出している、セドムも厄介な所に仕えたものね」

「はい、同期なので心配です」


「加護が必要になるかもしれないわ・・・バスティ羽衣の準備だけしておいて」

「もぉ時間があまり無いのですね?」

「そうね、1~2日以内には何かしらあるかもしれないっていう所かしら」

「わかりました羽衣の支度に向かいます」


そう言って傍から離れるバスティ


「何があっても、無事に返す、私にできるのはその為の助力のみよ」


女神フィーリズは一人になった神の間で独り言ちて、鏡に目を落としながら俯いた







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