7大勢力
ドイツ、ナチス
[ラストバタリオン]:シザーズ・プロジェクト
大尉:『戦争狂』
率いるのは“大尉”とだけ呼ばれる男。第二次世界大戦でナチスが負けたのは誰もが知る事実。そして、彼らは犯罪者として裁かれた。しかし逃げた彼らは自分が罪を犯したなどと思っていない。少なくとも、ドイツの臣民を虐殺した連合国にそれを言える権利はないと思っている。だから、結論したのだ――「負けることは”悪”なのだ」と。
ゆえに、彼らは勝利のみを欲する。次こそ勝利を勝ち取れば、誰もが認めると妄想している。勝利を夢見て、彼らはいつまでも戦争を続けている。この“夢”で、何を成せば勝ったことになるのか誰にもわからないのに。どうせ、誰も現実には帰れない。
「勝つために、次こそは勝つために戦争を続けよう。飽くまで続ければ、きっとその時こそ光り輝く勝利が天上から降りてくる。
今や残党でしかない私たちは、ただの悪党か? そうなのだろう、誰かに聞けば”そう”言わぬ者はいない――かつて守った民ですらも我らを指さし嘲笑った! そして、守るべき民を殺戮の竈にくべた憎き敵どもが英雄と称えられた。我々が悪かったのか? そうなのだろう。誰かがそう言っているからそうなのだろう。殺したのが悪い? この世界を作ってきたのは人殺しだろうが! ならばやはり戦争に負けることが悪なのだ。第二で我々は負けた。そして悪に堕ちた。
――諸君、まだ”第三”は終わってはいない。大戦は続いている。今度こそ勝とう。勝って勝利を! その時こそ、我々は誇り高き英雄となれる」
イギリス、十字軍
[ロイヤルパラディン]:インヴォーグ・プロジェクト
聖下:『二枚舌』
彼らは他の血塗られただけの組織とは違う。――ただ一つの自滅に向かって突き進む影を歩む聖者。それは世界の崩壊を望む自殺志願者。けれど、それは自殺ではない。なぜなら死に向かっていると気づいてすらいやしない……それは神の教えに反するゆえに事実からは目を逸らす。悪夢の中で異端を排除する”正義の虐殺者”。彼らにとってそれは神に課されられた試練なのだ。
……現実の世界で下されたかつての“神託”のために彼らは今日も命を削る。けれど、けれど。現実は現実――そこに神は実在しない。神罰は“夢”の中にしか存在しないのに、現実の教えを胸に彼らは今日も神罰と成り代わる。すでに彼ら自身がアビスの一員でしかないことに彼らは気付かない。
「神託である――『異端を滅ぼせ、邪悪を滅せよ』。我らこそ神が使わされ士神罰の代行者。アビスが出現したあの時、我々の世界は汚された。この悪魔の住まう地は滅ぼされなければならない。ゆえ、誇りをもって剣を取ろう。あらゆる生命に光をもって救済をもたらそう。
諸君、 試練の時は今ここに。全ての邪悪を滅したその時こそ、極楽浄土は降りてくる。神の降臨のため、全てを滅ぼすのだ! 神が降臨されたもう終末を、我らが手で創出するために」
アメリカ、米軍
[米軍]:オーバードウェポン・プロジェクト
ボス:『王様』
彼らはアメリカの威光を世界に示すために戦っている。世界の警察として、曲がりなりにもアビスに自治をもたらしている。そのために過去も、そして現在、未来に至るまで戦い続けるだろう。……そのアメリカは当の昔に彼らを“消耗済み”のリストに加えてあったとしても。
彼らは愛国心を胸に戦い続ける。アビスをその掌中に収めんがため。もはやアメリカはアビスなど統治したところで意味のない土地と見放しているのに。アメリカはどこまでも合理を重んじる国だ、ゆえに何かの”もの”を期待している。人の世にあり得ざる金属で”あった”もの、万能の霊薬で”あった”もの――売れるならば土くれであろうともかまいはしない。何か誇れることを成したい、そんな彼らの金にもならない気持ちとは裏腹に。
「我々は闇に蠢く雑多な怪物とは違う。世界の唯一正義として、この悪夢の世界で人が人として暮らせるように治めなくてはならんのだ。かの老いさらばえた負け犬どもが勝者を地獄に道連れにしようと吠えている。
――ここに居るのは余りにも愚かな者どもだ。夢にすがり、幻のように生きる。その様で何が成せると言うのか。ゴミ捨て場なのだ、ここにはろくでなししかいない。文字すらまともに書けず、碌に恐怖と言うカタチすらも知りはしない白痴ども。信じられるか、彼らは自らの主張を語ることもできやしない。正義など、自分を救ってくれる都合の良いものと信じているらしいぞ。
諸君、この場所こそが悪夢だ。なればこそ、生き汚くただ死なないために年を重ねるよりも、誇りある死を選ぼう。ナイトメアを狩り、人々を守るために死ぬ。それこそが己を誇る唯一の術と知るがいい」
日本、731部隊
[黙示の獣]:グラトニー・プロジェクト
リーダー:『吸血鬼』
大日本帝国の復権を夢見て、力を手に入れようとしている彼ら。彼らの脳裏にあるのはかつての光、核爆弾と言う極小規模の太陽。太陽の光に魂を焼かれた彼らは、生きる死者のようにただ一つを求め続ける。――核爆弾すらものともしない純然たる『力』を。あらゆるものを叩いて潰す窮極たる『力』を。
彼らは放射能によって汚された土地を忘れていない。法を好き勝手に改ざんされ、犬とされる屈辱を。肝心の日本人はそんなもの、すでに忘れ去られた過去でしかないと言うのに。
「我々は恨みを忘れない。たとえ我らのみであろうとも、かの大日本帝国の誇り高き民族であり続けることを魂に誓おう。地上に現出せし太陽により焼き払われ、永久に汚された土地は二度と帰っては来ずとも。悪夢の末に身体が別のモノに変わろうとも、魂のみは変わらない。
ゆえにこそ、力を。あらゆるものを喰らって力と変えよう。あらゆる技術を持って力を蓄えよう。あらゆる鍛錬の果てに力を束ねよう。力を、力を、力のみを求めよう。それがあれば祖国を焼かれる苦しみを味あわずに済んだのだ。かの太陽の光すらも超える光を手に入れたとき。その時こそ我らが勝者となる時だ。
諸君、今こそ敗北の汚名を雪ぐときだ。――天皇が敗北を口にされたとき、我らの国は滅び去ったのだろう。だからこそ、最強の力をもって世界に覇を唱えるのだ。あらゆる暴虐をものともしない究極こそ、八百万を従える不死の頂となる。勝つぞ」
中国、西インド会社
[機関]:イクシード・プロジェクト
あのお方:『名無し』
それは秘密のベールに包まれた秘密結社。その全体像を把握するのは盟主と呼ばれる男のみ。そしてその盟主こそは組織の構成員さえ噂と見間違う光の差さない暗闇の住人。彼らは裏から権力を握っているが、ここは夢――人間の一切を殺し尽くせば彼らの凶行を簡単に止められる。けれど、それは皆殺しの蛮行。それを行わない限りは到底盟主どころか、ハイ・エージェントの影すら踏めないだろう。
彼らの根は深く、広い。闇は影を広げていく、ゆっくりと、しかし着実に。しかし、逆に言えば彼らは何もできないのだ。誰にも知られないということは、居ても居なくても同じと言うことでしかない。例え世界が破滅へ向かっても、それが人類の性なのか、彼らの陰謀なかは分からない。知らないのは、”ない”と同じだ。
話は何もない。闇は何も語りかけて来ない。
黄金の夜明け団
[ゴールデン・ドゥーン]:AI1(All in one)プロジェクト
猊下:『永劫卿』
彼らは錬金術を得意とする集団であるが、組織ではない。ある一つの目的にまい進する他組織の気狂いどもとは違い、彼らは多少なりとも理性的だ。そう、彼らはただ論理に欠けているだけなのだ。――ゆえ、彼らは殺す。ただ知るために。解剖して中身を探れば何かが分かると信じているのだ。世界のあらゆる知を得るために手段は選ばない。
彼らは研究者を自認する。けれど、研究とは厳密たる論理があって成り立つもの。子供のお遊びではないのだ、”何となくできた”では済まされない。そこは偶然が許されない世界であるために、不用意な成功など忌むべきものですらある。それを彼らは遊びのように飽きることなく実験を繰り返す。であれば、彼らは似て非なるモノ――ただの命を弄ぶ犯罪者と呼ぶべきだろう。
「実験だ。さあ、実験だ。用意をしろよホムンクルス。材料は揃っているか? 犠牲者どもの阿鼻と叫喚は十分か? 混ぜて、溶かして、星辰を揃えればすなわち完成! どんなものができたかな?
世界を解剖し、あらゆる混沌を想像せし我々こそが叡智の巨人。この世全てにおいて錬金術師に知らぬものなどありえない。ゆえにさあ……実験の始まりだ」
ソ連 秘密警察
[人類統制局]:ネクロマンス・プロジェクト
局長:『監視者』
彼らが成すのは統制。自らの身を守るためには、敵よりも味方を殺すことの方が重要だ。――そう、王が完全なる統治を成すためには人民を虐げることが必要だ。いつでも民は勝手な理想論を押し付けるものだ。あらゆる文化を焼き払ってもなお顧みることのない彼らを支配するためには監視は欠かせない。人間など、いくらでも畑から湧いて出る。
しかして、彼らは敗れ去りソビエト連邦は散り散りになって全人類の完全統制という夢は露となって消え失せた。それは確かに社会主義の敗北だろう。理念としては正しくとも、現実に適応するには人類はまだ幼すぎた。現代は資本主義に呑まれ、社会主義などもはや語るに値しない空理空論と見放した。
そう、社会主義というものは確かに人を救うための手段となりえたかもしれない。けれど、それがどんなにキレイな理想でも――飢えた敗北者の手に渡ってはただの道具だ。ゆえに彼らは統制する。社会主義とうそぶきながら、王冠を頂かんために敵よりも味方を多く殺す。……敵よりも味方に怯えながら。
「敵は我々の中に潜んでいることを知るがいい。列強に心を汚染された者ども、」