雫と滴
600字程の短い短編です。
目の淵からじわぁ…と広がったそれは、目の全体をジワジワと包み込んだ。目を征服したあいつは、それでも侵略の足を止めることをせず、
「地球の引力のせいだ」
とでも言わんばかりに、下まつげくんの仇ながらお前の身を心配しているうえまつ毛ちゃんの「あなた蒸発してしまうわよ」という忠告に聞く耳も持たず恐れ知らずにぐんぐん降りていくではないか。
したまつ毛くんの予測どんぴしゃり、あいつは頰のあったかさと吹き付けるつめた〜い風くんによって姿を無くしかけているじゃないか…
そこまでして君は一体何を成し遂げようとしていたんだい?何かを訴えようとしたのかい?だとしてもね、この世には“証拠”ってものが必要なんだよ?キミにそれはあるのかい?
…って言ってもそうか。生まれたばかりでここまで突っ走ってきた君には何を言っているのか以前に自分自身がなんなのかすらわからないんだったね…ごめんね‼今言ったこともわからないのにね、ばっかみたいじゃん…自分が‼
…だからなんだよ…だからって困ってるのに助けないでいいのかよ⁉
ほ、ほら!頑張れ!頑張って!いい子いい子だからさ、お願いだから死なないで!生きていればいいことたくさんあるから!大丈夫!
お願い…わかってよぉ!ねぇ!
それでもキミは真っ逆さまに流れ落ちてゆく。
なんて、身勝手な奴なんだ。くそ。