第296話
空を飛ぶルシファーを見上げながらも、
(空から攻めて来るか……だが、それでも結界から出る事は出来ないぞ。相当、高く遠くまで飛ばない限り、結界からは出られない。ルシファー、勝つのは僕達だ)
ゼロイチは自分達の勝利を信じ、疑わなかった。
「クソッ!飛ばれたらまともに戦えねぇ!」
苛立つ晴十郎の後、
「確かに……拙者の場合、風刃を飛ばして攻撃は出来るが、パンドラ殿が居るであろうヤツの背中付近への攻撃は避けるべきで──ただ適当に風刃を飛ばす訳には行かないでござる」
どう攻めるべきか海人も困っていた。そこへ、
「任せて下さい!空を飛ぶルシファーを私がスウィートハートで引き寄せます!」
毅然と千代は口にしてから、しっかりとベルカントを両手で握りつつスウィートハートを使い、上空のルシファーを引き寄せ始めるのだった。
「ふうっ」
黄左衛門が槍の[変化]を解除する。
(──ん!?引き寄せられてる?コレは晴十郎の仲間の魔法か?)
じわじわと大地にいる千代に引き寄せられるルシファーだが、
「忌ま忌ましいな。引き寄せる魔法らしいが、俺のリフレクトで弾き返してやる!」
と言って、すぐさまリフレクトを使ってスウィートハートの引力を弾き返そうとする。しかし、
(何だ!?リフレクトが上手く使えない)
ルシファーは自分の魔法を満足に使用できない事に気付き、続け様、
(どうやらコレも晴十郎の仲間の力みたいだな……あのメイドか……)
幽体に戻って空中浮遊しているノノメの仕業である事に気付く。
「アンタのは攻撃や魔法も反射して弾く魔法なのかも知れないけれど──私のは、魔法を消す魔法よ。こういう場合は魔力が強い方、もっと言うなら精神力が強い方の魔法が勝つわ」
ノノメは左右の掌を合わせて、魔法を消す魔法[バッテン]を使用し、ルシファーのリフレクトと対抗していた。
「だから、千代さん、ルシファーの魔法に負けちゃダメよ。頑張って!」
力強くノノメが千代に言ってみせる。
「はいっ!」
深く頷き、千代はルシファーのリフレクトと互角に戦って行く。
(本当なら魔法を消す力を強める為に、もっと私としてはルシファーに近付いた上でバッテンを使いたい。けれど、近付き過ぎるのは流石に危険ね。中距離ぐらいからバッテンを使うべきかな)
などと、ルシファーのいる空と晴十郎達がいる地面の中間の位置からノノメはバッテンを使い続け、リフレクトの力を削るように地道に消していた。対し、
「鬱陶しい奴等だ。まとめて死ねぇ!」
千代やノノメ、晴十郎達を一気に殺そうとルシファーが巨大な火の玉を連続で放出するのであった。
(熱い!?ルシファーの[災厄の力]は幽体の私にも届くの!?不味いわッ!)
眼前に迫る火の玉からノノメを救ったのはトモエであり、他の火の玉は海人の風刃と晴十郎のリッカに散らされて、千代やゼロイチは無傷となっていた。
「ルシファー、アンタの魔法は厄介だけれど、決して破れない訳じゃないわ」
と、トモエは言った直後に素早く高くジャンプし、飛翔しているルシファーの頭の上に乗った。
「やっぱ凄ぇな。トモエちゃん」
何も出来ずに晴十郎が呟く。
「アンタの魔法で弾き返せるモノにも限度はある。つまり、その限度を超える程の力で攻撃したのなら、許容範囲外の攻撃でなら──確実にアンタに届くッ!」
そう言い終わるとトモエは右の拳に力を込めた。
「……その通りだ。だが、良いのか?闘神、許容範囲内の攻撃の全ては君に返るぞ」
動じる事なくルシファーが冷静に述べる。
「そうね。まぁ、つまりはルシファーとアタシの我慢比べねっ!」
揺らぐ事なくトモエは言葉を返すと、強烈な一撃をルシファーの頭に見舞うのだった。
「グウゥッ!」
リフレクトでも弾き返しきれない程の攻撃に、ルシファーは頭から地面に落ちてしまいそうになるものの、どうにか耐えてみせた。また、
「ウッ……」
トモエも自身が放った強烈な一撃の半分以上の衝撃をリフレクトで返され、確実にダメージを受けていた。




