第295話
「パンドラッ!起きろ!目を覚ませ!」
黒竜となったルシファーの背に横たわるパンドラを見て、目覚めるように晴十郎が大声で呼び掛ける。すると、
(今、パンドラに目覚められると厄介だな。それに、背に乗せたままでは流石に戦い難い……このまま大人しく眠っていて貰おうか……)
内心、パンドラが目を覚ますのは危険と判断するルシファー。よって、次の瞬間、闇に飲み込まれるようにパンドラはルシファーの背から内部へと沈み、消えてしまった。
「パンドラッ!?オイッ、ルシファー、パンドラに何をしたっ!」
驚き、焦る晴十郎の問い掛けに、
「見ての通りさ。パンドラは俺の中に閉じ込めた。だが、別に死にはしないから安心しろ。この程度ではな」
そう口早にルシファーが返答してみせる。
「パンドラ様を助けるには、もうルシファーを倒すしかないって事?」
動揺するノノメに、
「大丈夫だよ。ノノメ、パンドラは絶対に俺が救い出すから」
晴十郎は優しく言葉を添えた。そこへ、
「さぁ、戦いを始めようか」
と言ってから、ルシファーは大きく口を開くと、いきなり巨大な火の玉を晴十郎達に放ってみせた。
(ヤ、ヤバイッ!)
火の玉の大きさに晴十郎が危機を感じる。直後、
「それっ!」
火の玉を軽く蹴散らすトモエ。
(今の炎は、ヒバリの[火災の力]……)
静観しつつアランが思う。
「チッ、巨大な竜になったり、今の炎の攻撃だったり、このルシファーと戦ってたら辺りは滅茶苦茶になってしまうな」
なんて、晴十郎の頬に冷や汗が流れる。
折も折、
「──手伝いに来ました。晴十郎」
と、不意にアンジェリカが現れたのだ。
「今こそッ!アンジェリカ、今こそ手伝って欲しい事がある!」
反応よく晴十郎は切り返した。
「ようやくですね。何でしょう?」
「ここにいる俺達──全員を、思いっきり戦っても人々の迷惑にならない場所へ移動させてくれ!」
「了解しました」
アンジェリカは晴十郎の言葉通り、[スキップ]で全員を思う存分に戦える場所へと移動させるのだった。
「……何処だ?ここは……」
周辺を見回すルシファー。
アンジェリカが移動させた場所は、周りに何もない[天界]の平原であった。
「むんッ!」
即、水晶を手にしたゼロイチは座禅を組み、広大な平原に神パワーの結界を張って災厄の力を弱めた。重ねて、
「視覚的にもコレで少しは戦い易くなったでしょ。僕は結界を張る事に専念させて貰うよ」
ゼロイチのドーム型の巨大な結界は薄ぼんやりと光を帯びて、暗くて戦闘には不向きだった晴十郎達の視界を微力ながらも解消していた。
「まぁ、何処でも良いか……とにかく、まずは晴十郎達を倒す!さぁ、かかって来いッ!」
などと、晴十郎達との戦闘に勝利する事を目先の目標としてルシファーが集中する。
「ああ、行くぜっ!ルシファー」
「拙者もッ!」
「アタシも行くわ」
勇ましく攻める晴十郎と海人とトモエ、更に、
「黄左衛門、ちょっと何でも良いから武器に[変化]してよ。私達も行くわよ!」
「うん、分かった!」
ノノメは実体化し、槍に変化した黄左衛門を両手で持ち、ルシファーに突撃して行く。そんな晴十郎達に向かって、
「ハアアッ!」
三つ、ルシファーが火の玉を吐き出してみせる。けれど、火の玉の二つをトモエに蹴り飛ばされ、残りの一つは晴十郎達が何とか回避していたのだった。そして、
「うおおおっ!」
ほぼ同時に晴十郎達がルシファーに攻撃する。しかし、
「リフレクト!」
ルシファーは反射の魔法[リフレクト]を使い、晴十郎達の攻撃を弾く。
「ぐあっ!」
リフレクトで弾かれた攻撃は、そのまま全て晴十郎達に衝撃として返っていた。
「俺の使える唯一の魔法だ。この魔法の前では──お前達の攻撃は、お前達に返って行く。災厄で再生する俺には本来ならば不必要な魔法であり、正直、こんな魔法は絶対に使いたくなかった。だが、この期に及んで、そんな事は言ってられないからな。もう遠慮なく使わせて貰うぞ」
ルシファーは説明しつつ翼を広げると、ゆっくりと空へ飛び始めた──
「お前達に合わせて、バカ正直に地上で戦う気は無い。俺は空からお前達と戦う事にするよ」
地対地ではなく、空対地の形でルシファーは晴十郎達と勝負するのであった。




