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ガード下で晩餐を/ダークファンタジー(絵・麦原矜帆さま)

麦原矜帆さま(http://20706.mitemin.net/)のイラストに文章を付けさせていただきました。

ジャンル・必須要素は指定なしの作品です。

※キャラクター解説(http://20706.mitemin.net/i239082/)

「君達ぃ、そんな所で何してるのかなぁ?」


 深夜のガード下でたむろしていた女子高校生のグループが、不意に声を投げかけた人物に視線を向けた。

 そこにいたのはグレーの髪に青白い肌をした痩身の人物だ。真紅のシャツとイエローのズボンがその奇妙さを引き立てる。一目で日本人ではないとわかった。


「アンタ誰? 何様のつもり?」


 女子高校生グループの中心と思われる茶髪の少女が謎の人物に噛みついた。

 睨みを利かせる瞳はナイフのように鋭い。だらしなく着崩した制服は、彼女達を夜の世界に馴染ませようとしているようですらあった。

 威圧する彼女たちに驚く素振りもなく、柔らかな笑みを浮かべた謎の人物は軽い会釈をした。


「僕はローリエ。吸血鬼さ」


 謎の人物は名乗りながら舌なめずりをする。

 唇の隙間から鋭い牙が覗き、シャツと同じ赤色の目が少女を捉えた。値打ちを見極めるようにねっとりとした視線を投げ、こくりと頷いた。

 先ほど啖呵を切った少女を手招きしたが、彼女は無言で睨み続けた。


「今日の晩飯は君にしよう」

「はぁ~っ!? アンタ頭おかしいんじゃない」


 吐き捨てると場所を変えようと少女達がぞろぞろと歩き出す。

 それを制止するように、巨大な蜈蚣むかでが現れた。

 途中まで威勢の良かった少女達も、巨大な虫には悲鳴を上げて立ち竦んだ。


 彼女達の前にゆったりとした歩みでローリエが回り込む。

 硬質な蜈蚣の背を撫でると、蜈蚣は甘えるようにローリエの腕に巻き付いた。蜈蚣が嬉しそうに身体を震わせるたびガシャガシャと耳障りな音が立つ。


「この子も君を気に入ったようだよ」


 ローリエの言葉に呼応するように、蜈蚣が首をもたげた。

 一つ一つが意思を持った生き物のように動く脚が少女に向けられた。少女の表情筋が引きつり、蜈蚣の接近を拒むように甲高い叫びを上げた。


「やめろっ! こっち来んな!」


 少女は鞄を振り回して蜈蚣を打ちのめす。蜈蚣は一瞬怯んだが、すぐ体勢を立て直した。

 威嚇の声を発する蜈蚣を宥めながら、ローリエは険しい表情を浮かべる。眉間に寄せられた皺と仄かな殺気が辺りの空気を強張らせる。


「悪いことは言わない。大人しく捕まってくれるよね?」


 ローリエが差し伸べた手を振り払い、少女達は後ずさった。

 少女の一人が鞄を漁ると、制汗剤のスプレー缶を取り出した。護身用の防犯スプレーよろしく、ローリエの顔に照準を定めて思い切り噴射する。


「っぐ……」


 呻きを漏らしローリエがよろめいた。髪や顔に付着した白い粉の塊がほろほろと崩れ落ちる。

 赤い瞳が怒りを孕んで光り、鋭く少女をねめつけた。怯えた少女を見て、ローリエはわずかに満足したようだった。



挿絵(By みてみん)



「君達だって魚や豚を捕食している。僕が君らを頼って何が悪いのかなぁ?」


 蜈蚣吸血鬼はケタケタと卑しく笑った。

 それまで淡々としていたローリエの豹変ぶりに、少女達の顔が引きつった。足元から這い上がってくるような恐怖感に、自然と少女達が一所に集まる。

 ローリエの青白い手は少女の首筋に狙いを定めていた。


「ねぇ、僕間違った事言ってる? ……ねぇ!」


 恐怖で声を発することも叶わない少女を獰猛な爪が貫いた。痙攣する体を手繰り寄せ、ためらうことなく乙女の肉に喰らいつく。

 自身が吸血鬼であるという発言を裏付けるように、じゅるじゅると音を立て、流れ出す血液を啜った。血液を吸い出されている少女はみるみるうちに青ざめてゆく。


「なぁんだ。久し振りな割に美味しくないなぁ……――」


 つまらなさそうに舌打ちすると、ぐったりとした少女を放り出した。口元に付いた血を乱暴に手の甲で拭うと、視線を取り巻きの少女達へと滑らせた。

 彼女達は震えながらローリエの動向に注意を払っている。


「そんなにビビらないでよ。君らだって不味そうだ」


 さぁ、帰った帰った。

 ローリエにあしらわれた少女達はのろのろと歩き始めたが、その面持ちはどこか不満げだ。目先の危険は回避したものの、「不味そう」という言葉は彼女達のプライドを深く傷つけていた。

 それを察知したローリエは一人の少女の頬を撫でる。


「ふぅん? 自ら食料に志願してくるなんて、君らも面白いねぇ……」


 ニタリと嗤ったローリエを目にして、少女の一人が小さな悲鳴を上げて逃げ出した。その姿を目の当たりにすると急に恐怖が沸き起こったのか、他の少女達も後に続くように走り出す。

 少女達を見送ったローリエは、物陰に身を潜めていた蜈蚣を呼び戻して腰を上げた。


「僕達も帰ろう。明日はもっと、美味い物を喰わせてやるから」


 蜈蚣は返事をする代わりにガシャガシャと身体を震わせた。

最後までローリエのキャラがふわふわしっぱなしでした。

加えて煽り調子のセリフを書くのがものすっごく下手くそという……。精進せねば。

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