第5話 職探し 2
配管工のバイトは最終日を迎えた。
「この仕事は駄目だ!疲れる!」
「何でだよホバーリフト乗っとけよ。天職だろ」
「うるせえ!」
アベルが吼えた。
仕事が終わり、リーダーが労いの言葉をかけてくる。
「今日で終わりか、お前ら二人とも悪くなかったぞ! うちに来る気になったらいつでも連絡しろ!」
「ありがとうございます。考えておきます」
「ありがとうございました」
やっと終わった。
凄まじい疲労感だ。
心なしかアベルの顔がやつれている様に見える。
「バイト代貰ったし飯食いにいくか」
「そうだな」
「次何の仕事を見るのかを考えないとな、何かあるか?」
「そうだな……役所を見てみたい」
「役所!? ぜってー面白くねえぞ!」
アベルが役所にという言葉に過剰反応する。
「少なくともパイプよりは楽だと思うけど」
「役所に就職したら兄貴がおれの上司になるんだぞ」
「いいじゃないか」
「嫌だよ!」
アベルはとにかく父親と兄弟に関わりたくないらしい。
アベルの兄さんに会ったときは丁寧な対応をしてくれたし、父親のほうは厳しい人だが誠実でもあるという印象だ。そこまで嫌うようなものだろうか?
「まあまあ、とりあえず見に行ってみよう」
「ぬぐぐ」
アベルは複雑な表情で唸り始めた。
いいと思うんだけどな。役所。
------―---
役所の仕事を体験しに来た。
「結構役所にバイトしに着てる学生多いな」
「理解できないね、どこがいいんだか」
「いいと思うけどな、役所」
役所はシティの中央にある。
このあたりは行政関連の白くて厳しい建物が並んでいる。
役所の奥の方に見えるのがこのシティで一番高い建物。
ラダン・コントロールタワーだ。
このシティの中枢を担っている。
ちなみにアベルの家でもある。
「役所の仕事を体験しに来ました。よろしくお願いします」
「……よろしくお願いします」
「案内しよう」
対応してくれたのは細身で眼鏡をかけた人物だ。
中に案内され、仕事を割り振られる。
仕事の内容は端的に言うと雑用だった。
なにが入ってるかよくわからない箱をいくつも運んだり、お茶を入れたり、データベースの不備をチェックしたりした。
----------
俺たちが役所のバイトを始めて3日が過ぎた。
バイトは3日間しか受け入れていないようだ。
「役所の面接受けようと思うんだ」
バイトの最終日、役所から家に買える途中でアベルに決意を口にする。
「お前本気か?あんなところ」
「パイプよりずっとましだろ?」
「俺はやめとくよ、あの眼鏡野郎が気に食わない」
アベルはどうしても役所の仕事はしたくないらしい。
俺だけでも面接に行くとしよう。