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星より眩く  作者: Letterake
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第3話 試験結果

 試験は終わったようだ。試験官が一人ひとりに声をかけている。


「輸送機の運転じゃないんだ。これはレースだぞ」


「はい」


「お前は自分の臆病さに向き合うことができればよい方向に変わる可能性があるな」


「はい」


「お前は勉強不足だ出なおして来い」


「ごめんなさい」


 離陸に失敗して開始直後に航行不能になった機体がいた。

 彼がそうだろう。


「チャレンジ精神は評価するが、思いつきの行動はいつもリスクを伴う。注意しろ」


「はい……」


 さっきの黒い機体の人だろうか、少し怒られている。


「叩きつけられた後、体制を立て直そうとしたな?」


「はい……でもうまくいかずに落ちちゃいました」


 青い顔で教官と話しているのはサラだ。

 あの赤い機体がサラだったのか。


「慣れればできるようになる。よく勉強しているな」


 青い表情から一転キラキラした表情に変わる。

 慣れればということは訓練校で訓練すればということだろうか。

 だとしたらサラは合格が確定しているかのような言い方だ。

 シミュレーター試験は配点が低いと聞いていたが。


「お前は、先代の息子か」


「はい」


「お前は強い、けれども先代の影を追っていたらどこかで壁にあたるだろう。自分の飛び方を見つけろ」


「……はい」


 エルネストだ。

 先代ってことはあいつ、先代の飛竜王かなんかの息子だったのか。

 強いって言葉から想像するにエルネストは一位になった白い機体に乗っていたのだろう。

 ということはエルネストがサラを叩き落としたのか。

 友人かもしれない相手を蹴落としてでもパイロットになろうとする姿勢。

 エルネストは本気で飛竜王になるつもりだ。

 試験官が俺のところまで歩いてきた。

 何て言われるんだろう。

 心臓が激しく脈打つ。


「お前は危ない飛び方をするやつだな。事故を起こす。やめておけ」


 出口を指された。

 

 一瞬試験会場がしずまり返った。

 試験会場といえども順番待ちの学生がモニターで中継されていたレースの結果を見てあーだこーだと喋っていたため、喧騒が在った。

 だというのに会場が静まり返った。

 サラが悲しそうな目で俺を見ていた。

 黒い機体の人は自分が大した怒られ方をしていないことに気づいた安心感と同情が混ざったような微妙な表情で見ていた。

 エルネストは試験官に言われたことを考えているのか気づいていない。

 順番待ちをしているフィデールは無表情。

 フィデールの近くに並んでいるアベルは驚いた表情を浮かべた後、次は自分の番であることに気づき、硬い表情になって、汗を流し始めた。

 直ぐに喧騒は戻ってきたが俺の意識はどこかへ飛んでいったまま返ってこない。

 

「次は体力試験だ! 運動場はこの先の通路を進んで左に曲がれ! ……出口はあっちだ」


 足がふらつかないように意識して立った。

 俺は運動場へ向かう扉へ行かずに出口に近い壁際に寄って次のレースを観戦する。

 


 フィデールとアベルがコクピットに乗り込む。

 フィデールがコクピットに乗り込む前に試験管と話をしている。


「ミレッラさん」


「フィデールか。トレーニングは続けていたようだな。成果を見せてみろ」

 

 座席の後ろにモニターが付いていてコクピット外の人間は中の人間が何の機体を選んだかがわかるようになっている。

 フィデールが選んだのは青い機体。

 俺が選んだのと同じものだ。

 アベルは緑色の機体。


 レースが始まった。

 フィデールは速い。

 ものすごい速さだ。

 2位に圧倒的な差をつけて先頭を飛んでいる。

 もう誰も追い着けないだろう。

 一位は決まった。


 アベルはどうだろう?

 さっきの俺の様子を見て、臆病風に吹かれたのか。

 装甲が厚めの機体で接触を避けながらゆっくりと進んでいく。


 フィデールは一位、アベルは5位だった。

 彼らは試験管に何と言われるのだろう。


「フィデール、お前は速い。だがもっと速くなる。努力を怠るな」


「はい、ありがとうございます!」


 以外とやるなフィデール。

 そう思っていたらフィデールがこっちに向かってきた。


「これが努力をした人間と、それを笑った人間の差だ」


「そうだな、すごいなフィデールは、圧倒的な速さだったじゃないか」


「……もういい」


 そう言ってフィデールは運動場のほうへと向かった。

 何がもういいのだろうか?

 あいつのトレーニングを笑ったことをまだ根に持っているのだろうか?

 女々しいやつだな。

 

 試験官がアベルのほうへと歩いていく。

 アベルが緊張した面持ちで試験管を見つめる。

 

「お前は、廃材運搬の仕事が向いてるな」


「ハイザイウンパン?」


「そうだ、ホバーリフトに乗って廃材を運ぶ。お前の天職だ」


「………………」

 

 噴出しそうになった。

 アベルはいつだってエンターテイメントを提供してくれる。

 



-----------




「ハ……ハイ……ザイ……ウン……パ…………」


「元気出せよアベル。天職が見つかってよかったじゃないか」


「嫌だよ!!!」


 試験会場を出たところでアベルの叫びが響き渡った。

 

 

「ひどくないか!?廃材運搬が天職だなんて」


「お前は廃材運搬の仕事を馬鹿にしているのか?ライトウィングの廃材がしょっちゅう出るこのシティでは重要な仕事だぞ」


「そういうわけじゃないけど、パイロットになって誰よりも速く、格好良く飛ぼうって人間に対して、遅くて不恰好なホバーリフトに乗って、憧れのライトウィングの残骸を拾い続けろって言うのはどうかと思うんだよ」


「お前なんてまだいいよ。俺は事故を起こすからやめておけって言われて出口指されたんだぞ?出口指されたのなんて俺一人だ。開幕直後に離陸に失敗したやつだって出なおせとはいわれたけど、やめておけとまでは言われてないからな」

 


「はぁ。他の仕事探さないとな」


ため息をつくアベル。


「ライトウィングは諦めるのか?10月にも試験があるじゃないか」


「無理だよ。俺たちよりひどい結果のやつはたくさんいた。早々にコースアウトして迷子になったやつ、開始直後に爆散したやつ、ものすごく遅いやつ。それでも他の職種を進められるようなやつはめったにいなかった。俺たちに才能が無いってことなんだろ」


「そっか、しょうがないな……他の職業を探してみよう。ニートだけは嫌だ」


「だな」


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