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CAGELING  作者: 岩崎都麻絵
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 真砂子が手すりに、亜以子が壁に手を付いて、足音をさせないように、そっと階段を下りていった。何も出てこない。階段を下りて、階下の廊下。どうやらここが一階のようだ。二人で廊下を見回した。すぐ側に大きな扉があって、その扉は開いている。扉の向こうは広い部屋のようだ。

「部屋を覗いてみよう」

 亜以子に肯き、真砂子は二人で部屋に近付いた。

 部屋には大きなテーブルと椅子が並べられて、テーブルには林檎や蜜柑などの果物、そして焼き菓子のような物が置かれていた。丁寧に水らしきものの入ったボトルもあった。

 しかし、その部屋には誰の姿もなかった。

「食堂?」

「かも知れない。みんなを呼んでみても大丈夫のようね」

 振り返ると、深雪たちがいる。

「みんなを呼んでも良さそうよ。誰もいないけど、食べ物と水らしきものがあるから降りてきてって伝えて」

 深雪たちが階段を上って半ばあたりで大声を出して残りを呼んだ。

 安心したように、どやどやと全員が降りてきて、大きな部屋に集まった。

「とりあえずは食べさせてくれるみたいね」

 と亜以子が言った。

「この階のあちこちを見てみれば、水場や何かがあるかも知れない」

「もう怖がっていても埒が明かないわね。何人かでグループを作って、この階を見て回りましょう。そしてまたここに集合しない?」

 寿々子と名乗った女性の提案に従い、グループに分かれ、探検してみた。

 食堂らしきこの大きな部屋のほかに、温水プールか風呂場か判らない水場、トイレがあった。そのほかに外に出られるようになっていた。外といっても庭のようにしつらえてあり、柵で囲ってあるようだ。柵がどうなっているのか、そこから先どうなっているのかは見ないで戻ってきたそうだ。

「テレビやラジオ、パソコンがない。わたしたちの持ち物の中に携帯やスマホ、残ってないでしょう? 新聞もないし、本やら、簡単な工作や工事をするような非常用の道具も今のところないみたい。わたしたち、やっぱりペットか家畜のように飼われているのかしら」

「そうでしょうね」

 誰かが林檎を持って、言った。

「だからって目の前に食べ物や飲み物があれば、薬や毒が混入されていたとしても、飢え死にするまで我慢できる? まあ飢え死に寸前まで衰弱したら、安楽死させてくれるか、治療してくれるか、飼われている身では予想がつかないわね」

 構うもんですか、と林檎を齧りはじめた。

 そうよね、と囁きが続き、座る者が出てきた。そういえば朝目覚めてから何も飲食していなかったのだから、我慢できるはずがなかった。

 みんなそれぞれにボトルや果物、焼き菓子に手を伸ばし、食べはじめた。

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