四
目を覚ますと、見知らぬ天井、見知らぬ部屋。
とうとう自分の番になったのか。身をすくめた。
何も考えられない。考えたくない。
真砂子はぐるりと周囲を見回した。一応個室だ。ベッドがあって、横に箱がある。タオルやリネン、布類が詰め込まれている。ほかに家具や調度品らしいものはない。箱の中の物を出してみると、タオルやシーツの類のほかに、浴衣やネグリジェ、というよりも袖らしきものが付いた一枚布、もしくはずだ袋とでも表現したくなる衣服が入っていた。パジャマでいた方がいいのか、これを着ろということで、それに従った方がいいのか。
部屋には扉があるので、思い切って出てみよう。
真砂子はパジャマのままで部屋を出てみた。出てみると、廊下で、同じような扉が並んで続いている。
――なんだろう、これ?
真砂子が扉を開けた音に気付いた者がいるらしい。二つ隣の扉がカチャリと音をさせ、少しばかり開いた。廊下の様子を窺っているらしい。真砂子は恐る恐るそちらに顔を向けた。
「ああ、真砂子じゃん!」
声を上げて、扉の陰から出てきたのは、同じ高校の深雪だ。
「深雪、無事だったんだ」
二人は抱き合った。同級生と会えて、再び心が動き出した。
「真砂子のとこの弟クンは?」
「充喜は真っ先にいなくなったの。深雪のとこの妹もいなくなったって聞いたよ」
「うん、もう怖くなって家から出られなくなって。次から次へと人がいなくなったでしょ。それに、わたしたちまでいきなり知らない所に来ているし、ホントどうなっているんだろ?」
「うん、どうなっているだろう」
二人の会話が聞こえたのか、少しずつ、並ぶ扉から出てくる者が続いた。三十人くらいになった。全員、女性、それも十五、六歳から二十八歳くらいまでの年齢層だ。ずだ袋みたいな服を着た女性もいれば、昨日から着ているのだろうくたびれた私服姿の女性、寝間着姿の女性もいた。
その中で年長らしい女性が問い掛けた。
「あなた達の中で結婚してるとか、男性と交際中って人いる?」
誰も手を上げなかったし、返事がなかった。
「独身の、それも十代後半から二十代後半までの女ばかりがここにいるんだ」
その女性は怯えていた。
同世代の女性ばかりの集団で一安心と思っていた真砂子はその怯えが判らなかった。見知らぬ男性がいる方が余程怖いじゃないかしら。
「ペットショップや牧場の動物のように、わたしたち選り分けられたのよ」
その女性は膝を着いた。
「そうね、そうかも知れないわ」
と、同調する女性がいた。
「始めは乳児を除く成長期の子ども、老人と続いて、既にペアを形成している男女。ここには独身の若い女。多分独身の若い男も同じようにほかの場所に選り分けられているのよ」