十三
「ここまで人数が減ったのだから、きっとどこかに同じようなあぶれた女子の寮みたいな所があって、纏められるんじゃないかしら。それに十五歳になる人がここに大挙してくるかも知れないけれど」
と、企世子が推論を口にした。
「そうね」
「ほかの似たような仲間が増えるといいわ」
叶うか判らぬ希望だ。それよりもまた変な見合いをさせられないか恐ろしい。企世子は鐘の回数が違うのを訝しんで、部屋から出なかったと言った。亜以子は苦しそうだ。
そのうち無理矢理でも相手を押し付けられるのか、なんらかの処分を受けるのか。その場合の処分とは……。
真砂子はぶんぶんと頭を振った。よくないことばかり浮かんでくるので、消し去りたかった。
「なにか楽しいお話はないかしら」
「お話?」
「衣食住足りて、礼節を知るどころか、どんどん空っぽになっていきそう。ネットも何も無いし、本も無い。楽しいことを考えたいのに、暗い方向に進みそう。声に出して、みんなで楽しい話をしていれば少しは明るくなれるかなと思ったの」
亜以子は真砂子の気持ちが判るというように、微笑んだ。
「お喋りの種は尽きたわ」
「即興の作り話でも、昔ばなしでもなんでも」
亜以子は目を閉じて、ゆっくりと語り始めた。
「一人の女の子がいたわ。フリルやレースの飾りの付いた白いエプロンではなく、ジーンズが好きで、男の子と一緒に自転車を乗り回したり、木登りをするのが好きな女の子。でも、十を過ぎる頃になると、男の子たちは女の子を避け、男の子とだけで遊ぶようになりました。女の子たちは女の子たちで、その女の子を改めて仲間に入れようとはしませんでした。
どうして自分はほかの子たちとは好みや行動が違うのだろうと悩みました。
……」
カミングアウトと呼ぶには切なく、かなしい亜以子の物語り。
その夜は、亜以子の物語りで終わった。
翌日は人の入れ替わりや、場所の移動がなく過せた。その日は、真砂子が好きなライトノベルの登場人物を使って、二次創作ともいうような冒険譚を語った。こんな風に、女ばかりで空想を語っていられたらと願わずにはいられなかった。
夜、寝台にもぐりこみ、真砂子は泣いた。でも、すぐに眠りに落ちた。
目覚めた時、頭も体も重苦しかった。やたらと喉が渇いている。そして、下腹部が重いように痛む。生理痛? いや、違う……。
真砂子は飛び起きて、着替えを引っ掴んで階下に降りた。トイレで生理が始まったのではないと確かめた。後は服を脱いで、水場で体を洗った。知らないうちに自分の体をいじられたような気がする、綺麗にしたい。
ざぶ、ざぶ、と泳ぐように水の中を歩き、まとわりつくようなものを流したい。
同じように既に水場にいる者、続いてやって来る者がいた。
――みんな何かされたんだ。
真砂子のように必死になって体を洗う者、苦しそうに水を体に掛ける者、それぞれ違う。企世子も亜以子も来ていた。
――男性を拒否したから、人工授精でもさせられたのだろうか
そんな気がした。