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CAGELING  作者: 岩崎都麻絵
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SFともホラーとも、なんともいえないので、「その他」に分類しました。

 朝、起きたら、弟がいなくなっていた。昨晩までは確かにいた。一緒に晩ご飯を食べ、そそくさと自室に入っていった。

 真砂子は高校二年生で十六歳、弟の充喜は中学二年で十四歳になったばかりで、生意気盛りの二人は、現在仲がいいとは言い難い。心配なことは心配だが、夜中に家を抜け出して、遊びに行ったのではないかと意地の悪い想像をしたくなる。

 家中、それこそ庭や物置、隣家との隙間まで探してもいないとなると、今度はどこを探すか、警察に連絡しようかと、両親や祖父が落ち着きなく言い合っている。

「職場に連絡してみないと……」

 母が言うのに、祖父は子どもと仕事とどちらが大切かと声を荒げていた。

 まただ、と真砂子は思う。いつもは息子の嫁である母を空気のように無視していながら、家事の内容や充喜がらみのこととなると、ああしろこうしろ、母親として足りないと言いはじめる。真砂子にも女の子は口答えしてはいけない、これくらいの気遣いができないでは嫁に行けないと、細かく言ってくる。

「勿論、充喜が心配に決まっているじゃないか。しかし、仕事だって大事なんですよ。なんだって頭ごなしに怒鳴りつけなくてもいいじゃないか」

 と父が母をかばった。

「おまえの稼ぎが少ないから、女房を働かせているくせに。とにかく充喜はどこに行ったのか」

「俺の稼ぎと、妻が働いているのは別だ!」

「うるさい!」

「うるさい! 充喜は俺の子どもだ。あんたの子どもじゃないんだから、あんたは引っ込んでいてくれ」

「親に向かってあんたとはなんだ!」

 充喜の捜索より、父と祖父の親子喧嘩になりそうだ。真砂子は一人朝食を黙々と食べた。言い争っているよりも、さっさと食べ終えて次の行動に移れるようにしよう。

 ご飯を飲み込むようにして終えると、電話が鳴った。真砂子より母が早く電話を取った。

 祖父が真砂子を見て、こんな時に飯が食えるなんてと睨んでいた。ムカついたが、祖父は自分を可愛がってくれているが、気紛れなものであり、男の孫の充喜はもっと可愛がっている。男の子なんだからとか言って、なにかと甘やかしている。睨まれたってどうってことない。

「お早うございます。ええ、ええ、そうなんですか! うちも充喜がいないんです。どうしたものかと、ええ、ええ」

 受話器を置くと、母は下を向いて、電話の内容を告げた。

「里村さんの洋介君、――充喜と同じクラスの子です――、朝になったらいなくなっていて、ウチに知らないかと電話が来たんです。どうも里村さんの話ですと、ほかにもいなくなった子がいるようなんです」

 一体どうなっているんでしょう、母は膝を着いた。

 スマートフォンの着信音。

「こんな時になんだ?」

 祖父にはスマートフォンの機能が判らない。母が自分のスマートフォンを確認する。

「充喜の中学校からです。安否確認したいとの知らせです」

 充喜や里村君とやらだけではないのか。

「わたし、高校に行ってみる」

 真砂子はこの場にいて三人の遣り取りを見ていても仕方ないし、何の役にも立たないだろう、外に出てみた方が状況がつかめるかも知れないと思った。

「こんな時に何を呑気な」

 祖父が言ったが構わなかった。

「だって充喜だけでなく、ほかの中学生もいなくなっているみたいだよ。もしホントにそうなら外で色々聞いてみた方が早いよ」

「ほかの子がいなくなっているのなら、女の子が外に出たら危ないだろう」

 オンナノコって便利な言葉だ。

「女の子だから何もしなくていいって訳ないもん、変だったらすぐ帰ってくるから、とにかく行ってみる。ぼやぼやしていたら遅刻するよ」

 真砂子は祖父の顔を見ず、両親に向かって行ってきますと言って家を出た。

 外に出ると、子どもを探す人たちがほうぼうにいた。泣きながら子どもの名を呼ぶ女性。ぐいぐいと歩いたら急に立ち止まり、きょろきょろと見回したり、建物の隙間をのぞき込んだりする男性。皆、人の子の親なのだろう。必死の形相をしている。

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