魔法について
新たに仲間に加わったステラだが、その身体には結構な問題があった。まず、体力がない事。たった10メートル歩いただけで息を荒げる程だ。
走らせたら、もう一時間は動けなくなる。多分、魔力の方に能力を全て渡しているだからだと思う。
もう一つは、魔力の回復が異常なぐらい速いという事だ。
例えば普通の人間が一週間かかって回復する精一杯の魔力が、彼女にとってはものの数分で回復する。身体全体に収まる魔力が全て回復するのにかかる時間は、3日だ。
ステラの身体の中にある魔力の半分以下だけで魔神クラス。それじゃあ全ての魔力は神にも及ぶ……。と、ステラが笑いながら簡単に言っていた。
「それにしても、あんたホントに体力ないんだな。体力増強魔法とか使ってんのか?」
「たいりょくぞうきょうまほう?何だ?それは」
「言葉通り、使った者の体力を増やす魔法だ。」
「何?そんな魔法があったのか……。」
急に足を止めてしょぼくれるほどショックを受けたようだ。
「と、とりあえず試してみたらどうだ?」
「うんその通りだ……。魔法陣を書いて………ああ……なんで今までこういう魔法があった事に気がつかなかったんだ……。」
彼女の周りだけどんよりとした空気が漂っているような気がする。
そんなこんなで、魔法陣を書き終えると彼女は呪文を唱え始めた。
今更だが魔法を唱えるときの手順を教えよう。
最初に魔法陣を書くのだが、初めて唱える魔法なら必要だが、それ以外はあまり必要じゃない。
だが、魔法陣を書いたほうが、魔法の威力が上がる。次に呪文を唱えるのだが、この時にできれば杖を使った方がいい。そうすれば、広範囲に魔法をかけれる事も可能になる。
詠唱をした方が威力も上がる。だが、大体の魔導士はそれを面倒くさがる節がある。
口から出す『音』と共に魔力の出力を調節する。『音』と魔力に反応した空気中に潜む妖精から魔力を借りる。あまり知られてないが、これが詠唱の真実だ。
詠唱は第一部と第二部に分かれており、一部はあまり重要ではないらしい。
「我が身に宿りし光の欠片よ。万能の力を持つ王よ。我の身体に秘められし力を解放せよ!」
天から魔法陣に淡い光が射す。
その光はステラに集まり濃縮される。光は濃い青になった瞬間破裂した。
「……うむ。力がみなぎってきた。」
「成功か。すげぇな」
常人だったら死ぬほどの量の魔力を使ったんだ。結構な体力が増えただろう。
「身体が軽いな……。空も飛べそうだっ!」
手を広げながらくるくると回り続けている。
『ステラってちょっと抜けてるよね?』
『まぁ、アルラウネの言う通りね。』
『そーだね〜。ねぇねぇ、アルラウネって何歳?』
『1歳だけど?』
頭の中に、三つの声が響く。
『えっ!?嘘でしょう?』
サキュバスが驚きの声を上げる。確かに、まだ生まれてから一年程度しか経っていないというのに、成長しすぎだ。普通だったら3歳児程度の知能と背しかないのに、見た感じじゃ12歳はいってる。
『ステラの魔力が代償だからね。あいつ、魔力多いからいっくらでも吸いとっても怒んないから嬉しいよ?』
そう言うと、アルラウネ勝手に実体化をした。
そして、はしゃぎ疲れて座り込んでいるステラに抱きついた。
『あらあら、まだまだ子供ね。』
そう呟き、微笑むサキュバス。
自分もと実体化をして、俺に抱きつくウンディーネ。もう少し歩けば、森を抜けて爽やかな風が吹く草原に出るだろう。
ウンディーネの実体化を解いて、アルラウネの実体化をステラに解かせる。
まだ疲れが取れないステラを背負う。
ほのかに草の柔らかい匂いが香る。
「教官殿。重くないのか?重かったら……というより降ろしてもらっても構わないのだが……」
「いや、歩くとあんたすぐ疲れるだろ?」
森を抜けて、草原を歩いているとコボルトの大群が現れて、俺たちを囲んだ。
「可愛い動物だな。ほら大丈夫だよ?おいで」
しゃがみこんで手をポンポンっと叩く。
「……これは魔物だぞ?」
「何だと!??こんなに愛らしい見た目なのに?」
「ああ。魔物だ」
「くっ……世界とはこんなにも厳しいのか……!」
固く握った拳を、地面に打ち付けて痛がってるステラを尻目に、剣を引き抜く。
ジジイを殺してから切れ味があがっており、よく切れる。コボルトを斬ろうとした瞬間、ステラが待ってくれと言った。
「やめてくれ。教官殿。愛すべきこの動物は私がとどめを刺す。」
痛さで目にいっぱいの涙を溜めながら、魔法の準備をする。魔法陣を書き、魔力を溜める。
十分に魔力を溜め、彼女は叫んだ。
「今ここに蘇れ古の竜よ!純粋なる透明な炎、全てを破壊し食い尽くせ!炎竜魔法!」
竜の形を成す炎が、コボルトたちを追いかけ捕まえ食い殺す。炎が全てを殺した後には、地面から煙が出ている以外、何も無くなっていた。
「魔力少ししか使ってないが……こんなのだろう。ああ、ワンちゃん………」
魔力を少ししか使っていないというのに、この威力。天からの授かりものだろうか。
「まぁまぁ、村が見えてきたぞ。」
「村か……。教官殿、気のせいだろうか?赤く燃えているような…………」
ステラの言う通り、火柱が立っているし、微かだが叫び声が聞こえてくる。
「急ごう。守れる命は守っておいた方がいい。」




