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最後まで抗い続けた英雄の物語  作者: 夏蜜柑
第一章〜籠の中の英雄〜
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遺跡の中で

「くっ……!」

大広間を抜け、狭い道に入る。

襲いかかってくる敵を次々と斬り捨てる。

魔物の腹を切り裂き、様々な色をした血や臓物が頭から降りかかる。

『その剣、切れ味悪いわね』

『はいはい!ウンディーネが武器化する!』

「わかった。ウンディーネ、武器化だ」

雪白の剣を持ち替えた瞬間、ウンディーネは青みがかった鎖に姿を変え二の腕まで巻き付く。

鎖が巻きついたその手を敵に向かって突き出す。真っ白な光が全てを包み込む。

一瞬にして数メートル先までいた魔物が“消え去った。”なんの後も残さず、元々いなかったかのように。

『水魔の叫び』。

この技は、数メートル先までの全てのものを時空の切れ端に消し去る。

たまに魔力と精神力が強く、切れ端へと追いやれないものもいるが、大体は千切れた足、顔の半分などを残して消える。

「うぅ、手が痺れるな……」

手を揉んでいると、魔物が前から襲いかかってきた。どうやら、アレを避けたようだ。 防いだ左腕に鋭い牙がめり込んでいる間に頭から剣で斬り裂く。

道を通り抜け、先程よりも広大な広間に着く。部屋にぎっしりと詰め込まれた魔物たち。

流石にこの数を倒す事はキツいので、魔法を使うことにする。

身体の魔力を凝縮し、燃え盛る黒炎に具現化する。

放った黒炎は敵にあたり、いくつかの小爆発を起こす。爆風に巻き込まれ、大体の魔物は姿を消したことだろう。

ウンディーネの武器化も解く。

『あら、壁にヒビが入ってるわよ。』

「威力抑えたんだがな。」

『アレで!?……さ、流石天才だね。』

「天才じゃない。努力の賜物だ。」

そんな会話をしながら、先に進む。下に行けば行くほど、ジメジメとした嫌な空気が感じられる。



『不思議だね〜。聖なる場所なはずなのにゾンビやウルフがいるなんて。』

チャプンと水の音がすぐ隣から聞こえた。見ると、小さな少女がいた。

サキュバスの美しい桃色の髪とは違い、コバルトブルーの髪と瞳、青のレインコートと長靴。そして青の傘を差している。

「えへへ、驚いた?」

「……珍しいな。実体化するなんて。」

「可愛いでしょ?デザイン、変えてみたんだ♪」

「まぁ、お前にピッタリだが……。」



朽ちかけた石階段を下りる。

最後の一段を下りきった瞬間、嫌な空気が一層濃くなった。禍々しい何かがこの部屋にいるような気がし、辺りを見回すも何もない。

「アララ、やっぱり居たね〜。」

『ダグノザラスの暗黒騎士様。気配を消しても魔力は消せないわよ』

部屋の真ん中にある大きな七芒星の結界。それはかつて見た本の中にあったシルシによく似ていた。その中心を見つめて二人は言った。

『………流石だな。』

何もないところから急に姿を現したのは、漆黒の甲冑に身を包んだ騎士だった。

「大方、この遺跡を潰しに来たんでしょう?違うかしら?」

『…………』

いつの間にか、サキュバスは実体化していた。騎士は持っていた真っ赤な血に濡れたランスを構える。

「来るわよ!セリム」

サキュバスの言葉で、騎士は襲いかかってきた。その赤きランスで心臓を貫こうとしたが、間一髪で避ける。

「サキュバス。武器化だっ!」

サキュバスは黒い槍に変わった。穂先には赤く光る宝石がはめ込まれている美しいものだ。

槍で騎士を一突きしようとするも、物理攻撃を防ぐ魔法がかけてあるようで傷一つもつけられない。

騎士の鋭い突きを紙一重で避けながら、片手で魔防低下の魔法を唱える。騎士を目指すものは、守りを固めるが故に、魔法などに弱くなってくる。

物理がダメなら魔術で殴ればいい。

「そろそろ頃合いか……」

魔防低下の魔法を唱えつつ、魔力を溜めた槍を天に掲げると、穂先から赤い光が飛び出す。赤い光は八つに分かれ騎士を八方から攻撃する。

『ぐあぁぁあ………!!』

「ふん。格の違いが分かったか。」

そう言い捨て、青白い聖なる光を静かに放つシルシの方に向かう。

『私の命に…………変えても、アレは…………』

騎士は残る力の全て振り絞って、放った解呪の魔法は黒い結界に吸い込まれる。

彼が最期に呟いた言葉は、夢魔にしか聞こえてなかった。


シルシは、青白い光を放ち静寂を湛えていた。

「ねぇねぇ、セリム〜。コレ浄化しといた方がいんじゃない?」

「浄化?」

ウンディーネが楽しげな声で聞いてきた。聞いた事がない言葉だ。いや、一度くらいは聞いたことあるだろうが。

「知らないの?穢れたものを清めるんだよ。浄化すれば聖なる結界、シルシは長く保つようになる。スゴイよね♪」

「やってみるか。で、やり方は?」

「えっとね。まず、サキュバスのその槍に魔力を集めるの。」

シルシの真ん中に移動し、槍を両手で持ち、意識を集中する。身体中の魔力を、少しずつ槍に注いでいく。

「集めたら、ドルンガ・ティアンゲル・ガンザルグって呪文を3回唱えるの。さぁ、私の後に続けて言ってみよー!」

言われるままに、ウンディーネの後に続け、呪文を3回唱える。

「最後に、集めた魔力を解き放つっ!」

身体の力を抜き、槍の魔力を解き放つ。魔力は遺跡中を走り抜け隅々まで浸透した。なんだか懐かしい気がしたのは気のせいだ。

「………武器化解除。」

少しの間呆然としていたが、すぐに武器化を解除する。魔力を大量に消費する作業だな、と誰にも聞こえないように呟く。

『………ちょっと何すんのよ。ウンディーネ。コレ悪魔の身にはキツイのよ?』

「えーだって、サキュバスはお姉さんだから痛いの我慢できるかなーって」

「あのさ。この後どうすればいいんだ?」

出入り口は既に塞がれている。逃げ場などないに決まっている。

サキュバスはおかしそうに笑った。

『そんなの、簡単じゃない。』

「こういう遺跡はねー、盗賊たちの隠れ場所とかに使われてたことが多いから。何処か、逃げ道はある筈!」

『それだから、絶対に隠し通路はあるはずよ?』


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