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最後まで抗い続けた英雄の物語  作者: 夏蜜柑
第一章〜籠の中の英雄〜
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女騎士との別れ

「あっ!」

次の街へ向かおうと、少ない荷物を手に持った矢先、後ろから短い声が聞こえた。

サキュバスではない別の誰かの声だ。

「生きている人、いたんですね」

声のする方向に目を向ける。

ボロボロと涙を零している女が立っていた。明るく綺麗な向日葵のような毛髪は、見る者の目を引く。

腰に下げていたのは新米兵士に配給されるブロードソードはそれほど使われてない。

それにしても先程まで誰もいなかったというのに、どこから現れたんだろうか。

着用している軍服と縫い取られた紋章でどこに所属しているか、どれぐらいの階級かの二つが分かる。

「……………警備隊の二等兵か?」

「はい!………して、貴方は?」

「俺は王国聖騎士団の団長を務めているセリムだ。」

「っ!………あの有名な団長殿でございましたか。これは失礼を。」

深々と頭を下げるその女は、噂に聞いていただけのようで俺の事は見た事なかったのだろう。

「詫びなどいい。お前の他に生き残りはいないのか?」

「……………探し回ってもいませんでした。」

「そうか。」

俺とこの女騎士以外死んでしまったのか。

まぁ、別に死んだとしても俺には関係がない事だ。元々同期のアイツらは好きじゃなかった。

陰口ばかり叩き、気に入らない仕事は俺に押し付けてくるアイツらの事は最初から仲間とは思っていない。

「お前はどうするんだ?こんな場所に一生居るつもりは無いだろ?」

「……皆の墓を作ってから、海を渡った向こうの故郷に戻ります」

「そうか。俺はとりあえず近くの街に行く予定だ。」

「そうですか。………ねぇ、団長殿。いつかまた会えますよね?」

「会えるさ。」

「約束ですよ?」

微笑んで彼女は言った。悲しみを押し殺した笑顔だったような気がする。

「約束は絶対に守る。絶対に、いつかお前とまた会おう。」

「絶対、守ってくださいね?。…………それでは、どうか貴方に神のご加護がありますように。」

女騎士に見送られ、次の街へと向かう。

生き残りにやっと会えた。それは俺が一人ではないと確認する事が出来たみたいで非常に喜ばしいことだった。

跡地から少しだけ歩いて立ち止まる。

次に会う時、顔を忘れてないようにと後ろを振り返った。



小さな竜が彼女を喰っていた。



深い青緑の小型の竜だった。

竜はガツガツと彼女の肉を貪り、割れた頭から流れ出る薄桃色の脳漿と脳味噌を啜っていた。

『あーあ、残念。食べられちゃった♪』

わずかに弾んだ声でウンディーネは言った。

女騎士の内臓を見て、サキュバスは少しよだれを垂らし呟く。

『柔らかそうな肉ね。……やっぱり女の肉は美味しいのかしら?』

「ウンディーネ。……武器化」

怒りで震える声で絞り出すように呟く。

突然現れた、薄い青色の古代文字の羅列が俺の右腕に絡みつき、鎖に変わる。

蒼く頑丈な鎖は右腕全体に巻きつき離さない。

黒緑色の瞳を持つ竜はまだ彼女を食べている。

ゆっくりと妙に時間をかけて喰っている。

多分産まれたばかりの竜にとって初めての狩りで、気分が高まっていたのだろう。

だが、そんな事はどうだっていい。

竜は気づいたとき、さぞかし驚いたことだろう。

先ほどまで誰も居なかったその場所に、一人の人間が拳を振り上げて、立っていたのだから。もしかしたら、竜は気づいていなかったのかもしれない。

竜の急所である眉間に思い切り、拳を叩きつける。

成長しきった竜は非常に硬く、ただの鉄剣なら当てるだけで折れ曲がり使い物にならなくなる。まだ、子供の竜でよかった。

乾いた音を立て、骨が砕けた音がした。

続けて心臓付近に追撃を食らわせる。

さすがに心臓部分を守る鱗は硬く、握りしめた拳から血が滴る。

拳を握りなおし、魔力を纏わせもう一度心臓部分を殴る。

身体に入った亀裂から、魔力が侵入し中の心臓を破壊する。

亀裂から漆黒の鮮血が吹き出し、俺の身体と地面を暗黒色に染める。

ウンディーネを武器から戻し、剣を抜き出す。

何度も何度も、死体に向かって白い刀身を振り下ろす。ぐちゃぐちゃに壊れていく死体は、さらに高ぶらせる。

突き刺すのに飽きた頃には、竜は識別できないぐらい細かく、ぐちゃぐちゃの肉片に姿を変えていた。

『派手にやったねー。すっごい綺麗♪』

『早く行きましょうよ。つまんないわ』

二人の急かす声が頭に響く。

竜と同じく、識別できないぐらい壊れきった女騎士を地面に埋める。腰に下げていたブロードソードを墓石の代わりに立てておく。

大きく深呼吸をし、そして誓う。

必ず、竜とダグノザラスを滅ぼしてやると。

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