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最後まで抗い続けた英雄の物語  作者: 夏蜜柑
第三章〜桜の大戦・前半〜
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美しき風景と旅館

「あんみつ………美味しかったぁ」

『オルフェ、やっと来たか………。』

ペットは入れないとの事だったので、店の外で待たせてしまった。

ぶすっと不機嫌そうだったのが、オルフェの姿を認めるなり嬉しそうに尻尾を振り喜んでいる。

「おえぇ………」

「あ、アルラウネも大丈夫だったか?」

あるわけが無いが、クーシーが連れ去られないようにと、まだ吐きたらなそうだったアルラウネに番を任せた。

道の端っこでやっと吐き終えると、フラフラとした足取りでこちらに来て、ステラの服を掴む。



「そんなに吐いて……大丈夫なの?」

アルラウネと一緒にクーシーの世話を任せていたサキュバスが、手に氷菓子を持ちこちらに小走りで走ってきた。

金はやってないはずだが、一体どうやって手に入れたのだろう。

アルラウネの姿を見て、少し笑いサキュバスが心配そうに言った。

契約した魔物たちの力の源は、契約した時の代償と契約した相手の魔力だ。アルラウネの場合、無尽蔵な魔力が詰まった袋みたいなステラと契約しているから、身体の能力が下がる事はないだろう。

「大丈夫でしょー。とりあえずさ、宿屋に行ってみよ!宿屋ぁっ♪」

勝手にウンディーネは実体化して、向かい側にあるという宿屋を探し始めた。



「いらっしゃいませ、当館へようこそ」

頭を深々と下げるのは、先程の茶屋の女性と似たような服装の女。確か『着物』とか言っていたな。

幸い、予約が急にキャンセルとなった為部屋は取れた。料理の好き嫌い、伝染病の検査を終えた、着物姿の女性は前を立って歩き、部屋を案内する。

「…………はぁ……」

部屋から見える景色の美しさに思わずステラがため息を漏らす。

薄桃色が蒼く煌めく川に沿って一直線に並んでいる。それだけでも美しいのに、周りに薄桃色を目立たせるか如く鮮やかな緑が点々とある。

「温泉はご自由にお使いくださいませ。」

そう言って、女性は部屋から去って行った。



夕飯を食べ、満腹になり少ししたら辺りの建物が濃紺の夕闇に包まれた。

「お兄ちゃん………ステラお姉ちゃんとサキュバスお姉ちゃんとウンディーネちゃんとお風呂入るけど………一人で、大丈夫…………?」

「あら、セリムは後で私と二人っきりで入るのよ?ね♡」

「アルラウネと入るから、大丈夫だ。」

「…………まさか、男に目覚めたの?」

サキュバスが訝しげに言ったことにもう反論するのも面倒になった。さっさと入るように急かす。

流石に覗きに行くなんていう馬鹿な事はしない。第一、そんなことをやっている暇はない。

あいつらが、ここに来ているんだ。一刻も早く探し出して、ダグノザラスの事を知るんだ。いや、拷問して殺そう。それが一番いい考えだ。


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