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最後まで抗い続けた英雄の物語  作者: 夏蜜柑
第三章〜桜の大戦・前半〜
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船は嘔吐の波を進む

「やだぁっ!やめてぇっ!」

真っ暗闇の中、少女の叫び声が辺りに響き渡る。周りは水田で元々人通りが少ない所。助けを呼んだ所で誰も来るわけがない。

「いだいぃ!やめてぇっ!やめっ–––」

不意に、腹を割かれていた少女の悲痛な叫びが途絶えた。その代わりに、彼女の首の切断面から鮮血が飛び出し、辺りに飛び散る。

血を浴び続けたせいで薄い赤に変わってしまった刃の短刀に、新たな血がこびり付く。短刀の持ち主は、その血をペロリと舐めとると割かれた腹から取り出した赤黒く艶めく(はらわた)を、音を立てて咀嚼し始めた。





頬に当たる潮風、真っ白なマスト、海と細かい泡で構成された波が船に打ち寄せては砕け散っていく。穏やかな空、世界中の憧れ、平和な船旅……。

ただ一つを除いて。

「おぇぇええ………」

盛大に嘔吐くのは、美しい金の巻き毛の少年。アルラウネだ。

「しっかりしろ、アルラウネ……うっ」

背中をさすってあげているステラも、もうそろそろで決壊するだろう。

ステラの嘔吐物を見て、他の乗客が嘔吐しそれを見てまた……という負の連鎖を繰り返す。

「………昔聞いた地獄絵図ってこういう事を言うのね。」

げんなりとした表情でステラを一瞥し、サキュバスは言った。俺は、船に乗る前に粉薬を飲んだから大丈夫だが薬嫌いのステラはそんな物は要らないと言い、飲まなかった。

そう言えば、あの二人がいないなと思い、辺りを見渡すと足元の方から声が聞こえてくる。

「ねぇ、セリムおにいちゃん。あと一時間ぐらいで、桜の国に着くって………。」

ぐいぐいと袖を引っ張りクーシーの背に乗ったオルフェが、自分よりも背の高い俺に言った。

「そうか。ありがとなオルフェ」

そう言い、頭を撫でようとするとクーシーが敵意丸出しで威嚇してくる。いつもの事で、慣れてはいるが今日は慣れない船旅という事もあって、機嫌が悪く本当に噛みつかれそうだ。

『オルフェに触れるな…………』

「すまん」

素直に謝り、オルフェから離れる。



手摺りに捕まり、近づきつつある嘔吐の海から避ける為、白く泡立つ波を眺めていると、不意に声がした。

『セリム見てみてーっ♪』

頭に声が響き、そしてボンッと小爆発が起こりウンディーネが実体化した。

どうやら水夫をイメージした新しい服を披露したいらしい。白い服の袖と裾に青いラインが一本。同じように、帽子に青いラインが入った帽子。

「可愛いな。お前によく似合っているよ。」

「やったぁっ!ありがと!」

素直に似合っていると褒めると、ただ本当に服を自慢したかっただけのようで、すぐに実体化を取り消した。

「桜の国に到着するぞー!」

立派な口髭の厳つい船長が、船室から顔を出し大声で叫んだ。その顔は非常に恐ろしく、子供が見たらすぐに泣き叫びそうだ。



「うぇえ……まだ出そう」

「大丈夫か?アルラうっ……」

呆れたように二人を見ていたサキュバスは、実体化を解きふわふわと浮かぶ光の玉へと姿を変えた。

『見てらんないわ……』

『アッハハ!アルラウネの顔面白ーいっ♪』

頰の痩けた顔を指差し、甲高い笑い声を響かせる。

ヤッターマンに出てくるボヤッキーが最近のお気に入りのキャラ。

あと、俺しかの六ツ花御前は俺の嫁。

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