手配書
軽やかな音を立てて薪が崩れ落ちる。闇で閉ざされた世界の中で一つだけぼうっと明るい火が浮かび上がる。
調達した羊皮紙にペンで今までの事を書き入れていく。母を殺したのは9歳の頃だったはずだ。それなのに記憶は14の頃殺した事になっている。それを羊皮紙にまとめていく。
サラサラと進むペンがふと止まった。もう書けなくなったのだ。これ以上思い出そうとすると、頭の奥底に靄がかかったように見えなくなる。
「………一体、どういうことなんだろうな。」
考えれば考えるほど、自分の事が分からなくなっていく。
忘れろ。頭の中に低く響く声に従うように考えるのをやめる。思い出しては、ならない。
「………リム、セリムっ!いい情報が手に入ったわ。」
サキュバスの艶っぽい声で目が覚めた。いつの間にか寝てしまっていたらしい。嬉しそうに弾んだ声は、寝ぼけていた俺の目を覚まさせるには十分過ぎるほど楽しそうだった。
「何だ?朝っぱらから……。」
「あのね。白いドレスの女性と赤い花が描かれた鎧の男が、船に乗り『桜の国』に渡ったらしいわよ。」
赤い花が描かれた鎧。その言葉は更に俺の頭を冴え渡らせる。あの時見た光景が頭に浮かぶ。今の所、手掛かりはあの二人だけしかいない。
拾っておいた薪に、魔法で火をつける。
「船はどこからでてる?」
「この先をずっと進んで行くと、港町があるわ。そこで船に乗って桜の国に行けるわ。」
流石サキュバス。情報収集するのには彼女が最適だ。
「分かった。起き次第出発しよう。………ありがとうな」
「ふふっ♪ありがと!」
サキュバスは子供のように無邪気な笑顔で、頬にキスをしてきた。
サキュバスの言う方向へ向かい暫くすると、真っ白な建物が見え始めた。
今日は何かあるのか、遠くからでも人々が騒ぐ声が聞こえてくる。
「オルフェ、お腹は空いてないか?」
「………うん。大丈夫、お姉ちゃん。」
少し心配したような声色で、ステラがオルフェに問う。
体力増強魔法を何重にもかけたおかげか、殆ど休まずに歩き続けることができた。
僅かな時間だけ、休憩を取っている中、ふと周りを見渡すと何やら黒っぽい怪鳥が飛んでくるのが見える。何か紙を持っている鳥は、俺たちの姿を確認するとけたたましく喚き始めた。
「………うるさい。」
樹蜜を喉を鳴らして飲んでいたオルフェは、鳥をジッと見つめて小声で何かを呟いた。
鳥の身体を鋭い風の鎌が切り裂き、血が噴き出す。ボトボトと地面に落ちてくる鳥の鉤爪から紙を毟り取る。
『こいつらを捕まえたら、賞金金貨1,000枚。』
そう書かれた下には俺とステラとオルフェの顔が描かれていた。
『俺の屍を越えてゆけ』に最近ハマっているんだ。黄川人くんが可愛すぎて泣ける。




