城
「教官殿……っ!いきなり走り出して……はぁっ……どうしたのだ?」
「いや……何でもない。」
走って追いかけてきたのか物凄い息切れだ。ただでさえ、体力がないのにだ。
「………ステラ。」
「ん?教官ど……ひゃあっ!」
ステラを背負う。珍しくかわいい声を出したな、と思いつつ、下ろしてくれというステラに構わず道を進む。先程のことは頭から落ちていった。
そろそろ森を抜けそうなのか、柔らかい光が棒状に差し込んできた。
暗い闇に包まれた場所、そこに先程の二人組がいた。切り株に腰掛け傷の手当をしてもらっている。
「あたたた……痛い痛い!」
「我慢しろ。エリウルの怪我が治らないなんて……あいつはもしかして」
「“ニセモノ”でしょうね。」
腹に包帯を巻いて貰いながら、エリウルはサラッと言った。どこか悲しげな光を湛えた瞳は自らの腕に刻まれた深い傷を写していた。
「それにあの剣も……少女の剣でしょう」
「………これからの動向に注意しなければ、な。」
ガルウェイから歩いて、小さな城に着いた。どうやらこの辺り一帯を収めているらしい。とりあえず、城下町で宿を取った後、王に謁見できたらしよう。
「………なぁ、教官殿。」
「何だ?」
「いい加減下ろしてくれないか?……その、恥ずかしい……っ」
微笑まし気に見ている人々たちを気にしているようだ。下ろすと何回も休まなきゃならないので、下さない。
「それは無理な話だな。」
「ええー………」
『鬼畜ね。』
『ねぇサキュバス。こういうのをドSっていうんだよね。』
喋っている二人は、後でお仕置きするべきだろうな。
「よし。それじゃ少し待ってろよ。」
ベッドにステラを座らせて、部屋から出る。あと、サキュバスとウンディーネも部屋に置いておいた。頭の中とはいえ、適当な事をしゃべられたらこちらがイラつく。
「何で僕がその代わりなんだよ!」
「まぁ、そうむくれるな。特別にお菓子かってやるから。」
アルラウネの頭を撫でて、何とかなだめる。
コイツなら、失礼な発言なんかはしないだろう。
「お菓子買ってくれるなら、許すけど……。普通の人だったら殺してるところだよ。」
ニコっと笑いながら、彼は物騒なことを言った。
そういえば、買い物もしなくてはいけないな。
「旅人の方、王様がお待ちです。こちらへどうぞ」
しばらく待ってると、謁見の許しが出た。
王のいる部屋は、妙に豪華だった。
手にしてる王笏は、柄が銀で先端の宝珠は白金でできている。
城下町がやけに貧しそうだと、思ったらこういうことか。
「おほん。楽にして良いぞ。」
こほんと咳払いをして、偉そうに醜く肥えた豚は言った。被っている王冠は、ゴテゴテと宝石類がたくさんついている。悪趣味だ。
何か仕事は無いかと問うと、西の方に魔物が巣食う古城があると、豚は言った。
「アルラウネ。先にお前は宿屋に帰ってろ。」
砂糖をまんべんなくまぶした焼き菓子を買ってもらい、満足そうなアルラウネに言った。
「えー。セリムは?」
「俺は、魔物を退治してくるよ。夜までには帰る。」
やれやれといった感じで、アルラウネは宿屋に戻っていった。
アルラウネが、宿に戻ったことを確認すると、浮遊魔法を自分にかける。
「西は……こっちか。」
西に向かって、移動を始める。強い敵が居れば少しは楽しめる。
「あれか。古城は」
立派な城ではあるが、ツタが絡まっていたり崩れ落ちた石壁の事から随分長い間放置されていたのがわかる。
「迷っていてもアレだしな。……中に入るか。」




