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最後まで抗い続けた英雄の物語  作者: 夏蜜柑
第二章〜壊れかけの城〜
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旅人の扉

「はぁっ………んっ……」

近くの木に寄りかかる。そのまま、座り込み水筒の水を飲み干す。

「ほとんどの魔力、出しちゃったね。」

座ってる私の肩に、頭を乗せてくるアルラウネの後ろには、先ほどまでなかった、深い森が広がっていた。

「しっかし、すごい魔力だよね。この森以外にも火山、湖まで作り出しちゃうなんてさ。」

地面に生えていた芽を摘み、その眠そうな濃いピンクの目でこちらを見つめる。火山は作ったがすぐに壊してしまった。

「何だ?もっと作って欲しかったか?」

「え?じゃあ果物がなる、ボクのような花が咲く樹を作って!」

「分かった。アルラウネ、少し待っていてくれ。」

今も増えつつある魔力を三つに分け、手の上に走らせる。

一つ目の魔力は、木から吸い取った魔力。二つの目の魔力は、アルラウネの魔力。三つ目は……実を言うと教官殿から、奪い取った生命力。

それらが絡み合い、ぐちゃぐちゃに重なり混ざる。そして、その魔力の塊から、木の苗を構築する。


「木の苗だ!」

私の手の上から苗を奪い取り、それを眺める。双葉は見るたびに色を変え、形を変える。

「…………ねぇ、これどうしよう?」

アルラウネは私の膝に乗り、面白そうに眺めていたが、ふと不思議そうに私の顔を覗き込んできた。

「お前が植えたい所に植えればいいじゃないか。」

「それなら、ステラの家の近くに植えたいなー。」

苗の根を指で弄くり回しながら、何でもなさそうにアルラウネは呟いた。

「それなら、旅が終わってから植えよう。」

「今植えたいー!」

頬を膨らましてこちらを睨むアルラウネの頭を撫でる。

「まぁまぁ………教官殿には、何か懐かしいものを感じるからな。それが何だか知りたいんだ。」

「………確かに、オッさんからは何か懐かしい感じがするよね。会ったことないのにな。」

冷たい風が吹き始めていることに気がついた。アルラウネの手の中の苗に、強化魔法をかける。枯れないようにと、自動回復魔法もかける。

「そろそろ戻るか……。」



「眠れねぇ……!」

右隣には、ぐっすりと寝ているステラ。左隣には、わざとなのか俺の腕に胸を押し付けてくるサキュバス。最早嫌がらせに近い。

『セリムー。寝れないのー?』

頭の中に幼い声が聞こえてきた。

こちらが答える前に、ウンディーネは続けて言った。幼い声は楽しげに弾んでいる。

『なら、私と遊ぼー?今ならアルラウネとも遊べるよ!』

水の音と破裂音がした。床には水色の髪の少女と金髪の生意気そうな少年が座っていた。

「遊ぼーよ!オッさん!」

「オッさんじゃない。お兄さんと呼ぶんだ。」

「………オニイサン?年齢的に違わない?」

「うるさい。これでもまだ二十代前半だ。」

「私にとってはおチビちゃんだよ?」

「ボクにとってはオッさんだけどね。」

音を立てずにベッドから降り、二人の子供たちの近くに座る。

「……で。何して遊ぶんだ?」

「んー……アルラウネ、何がいい?」

「え?お話ししてほしい!」

ウンディーネに話を振られて一瞬戸惑っていたが、すぐに答えた。

「何の話がいい?」

「英雄の話!」

「分かった。昔な、ランスという騎士がいて––––」

夜も更けてきた。今夜は冷えるだろう。念のため、温暖魔法をかけておく。



「準備は出来たか?出発するぞ。」

「待ってくれ。まだ服が着れてないんだ……。」

彼女はそう言いながら喉元でマントを結び、上等な皮靴を履く。まるで、物語に出てきそうな旅人のようだ。

それに対して、俺は銀製の羽根を広げた鳥が描かれた胸当て、腰に魔剣を下げている。城の中で着ていた鎧は、売って金にした。

「準備ができたぞ。さぁ、旅人の扉に入ろう」

物語の中の旅人のように毅然とした態度で彼女は言い放った。




木で出来た巨大な扉を開く。

その先には、鬱蒼とした暗い森が広がっていた。森は深い霧に包まれていた。

「ここは……ガルウェイの森か?」

光も差し込まぬ魔の森。そこに光が当たることがあるならそれは奇跡だと言われるほど、暗い森だ。

「………教官殿。誰か居るそうだが」

ステラの指差す方を見ると、二人の人影が見える。どうやら二人は言い争ってるらしい。

かなり大きな声で、こちらまで聞こえてくるほどだった。

「大体ディオ様がいけないんでしょう!大事な竜笛をこんな所に落とすなんて……。」

「竜笛なんて無くても大丈夫だろ。」

「ダメですよ!あの噂で有名なセブレイスを滅ぼした竜なんですよ?大怪我を負ってしまいますー!」



確かに二人組は言った。

《セブレイスを滅ぼした竜》と。

気がつくと、俺は二人組に向かって斬りかかっていた。

「っ!……なんですか?」

紙一重で避けられた。間髪入れずに今度は横に斬る。女の着ていた白いドレスが横に裂ける。皮しか切れてなかったようで、血はそんなに出なかった。

「人間の分際で生意気な……。神に逆らうとどうなるか思い知らせてあげましょう。」

その澄んだ青の瞳が徐々に、赤く染まっていく。女は腰に下げていた双剣を引き抜き手に持った。



「そこで止めるんだ。エリウル」

同時のところで斬りかかった俺と女の間に、誰かが入った。

その男は赤い花が描かれた黒い鎧を身にまとい、黒い仮面の上からでもわかる程、それは大きな欠伸をした。

「ディオ様、しかし……」

「俺たちの目的は竜笛だ。それ以外には用はないんだ。お前もわかるだろう」

「…………はい。分かりました。」

エリウルと呼ばれる女は、渋々というように男の言葉に頷いた。それでも、俺に敵意を丸出しにした瞳で睨みつけてくるのは変わらない。

「お前が戦っている間に、竜笛は見つかったし、ダグノザラスに帰るか。」

もう一度、その姿を見ようとしたときにはもう二人はいなくなっていた。


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