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夢想森羅  作者: 秋時雨
1/3

第1話-少年と狗-

「腹減ったー」

 幕府の街、江戸に一人の少年と狗が歩いていた。

「何、心配することはない。それは俺も同じだ。」

「貴様に食わせる餌はない。」

「ほう、なら貴様を食べてやろうか。」

「すまない、冗談。」

 狗の方はクックック、と笑う。

「それでよろしい。ほら、もうすぐいつもの場所に着くぞ。」

 少年はため息をついた。

「はぁ・・・金無いのに。」

「金と命どちらが大事なのだ?腹が減っては戦はできぬぞ。」

「やっぱお前には敵わんわ。」

 少年と狗は笑いながら団子屋へと向かった。


「いつもの2つ頼むよ。」

「かしこまりました。」


 時代は江戸。黒船といい、新撰組といい、最近は治安が乱れてきた。

 幕府は混乱し、奴らはやりたい放題・・・。


 まったく、だらしないよな。


「団子2つどうぞ。」

「ありがとう。やっぱり団子と花見は最高だな。」

「そうですね〜。」

「…ん?見ない顔だけど新入りか?」

「あ、はい。真院寺鈴といいます。よろしくお願いしますね。」

「お鈴か。俺は六道時雨・・・と呼ばれている。この狗はシロウ。」

 鈴は首を傾げる。

「リクドウシグレ・・・?珍しい名前だね。」

 時雨は団子を食いながらこう答える。

「偽名だ。本名を明かすなと主人が言ってるからな。」

 そして飲み込んだ後こう言った。

「主人からの命令でね。妖怪退治というものをやってる。暇なときは女性をくど・・・」

「それをいうな。軽蔑されるぞ。」

 シロウは時雨の頭を殴る。

「いてっ!」

「…? よくわからない仕事やってるんですね。陰陽師・・・とかいう奴ですか?」

 時雨は、フッとした顔で

「まあそんなものだが、そんな野蛮な輩と同じにしないで欲しいな。」

「す、すみません・・・。」

「いや、別にいいよ。間違えられることはもう慣れたし。しかし本当にこの団子はおいしいな。」

「黙れ、この食いしん坊。」

 再びシロウは時雨の頭を殴る。

「いてーなコノヤロウ!」

「どうしたバカヤロウ。反抗すれば腕を一本もらうぞ。」

「んだとー!やってみやがれ!」

「あのー誰と会話してるんですか?」

「ああ、目にゴミが入った。」

 体勢を元に戻す。


 その時、大男が団子屋にやってきた。

「また来た・・・。」

「おうおばちゃん。いつもの団子くれや。」

「何なのだ?あの大男は。」

「最近この団子屋に来るようになってね。勘定も払わずに団子を大量に食っていっちゃうんだよ。」

 時雨はピンと来るような顔をした。

「ほらどうした。さっさと団子もって来んかい!」

「お前、妖怪だな?」

「ああ!?ん・・・」

「妖刀『七月』反応している・・・。容赦なく行くぞ。」

「き、貴様はもしかして───」

「はああぁ!」

 時雨は刀で大男を斬りつけた。

 が血は出ること無く、煙が吹き出た。

「ぐぎゃあああぁぁぁ・・・。」

「成仏しろよ・・・なんてな。」

 そのまま大男は消え去った。

「まったく、団子を盗み食いするなど許されんことだな!」

「・・・団子の方が大事かよ。」

 シロウが突っ込みを入れる。


「・・・今のは一体なんなの?」

「今のが妖怪だ。普段は人に化けてるから、外で歩く時には気をつけるんだな。」

「・・・この妖怪というのはいつ頃から現れたの?」

「黒船が現れてからだ。外の国のものが連れ込んできたらしい。」

 ふぅ、とため息をついて刀を収めた。

「あ、ありがとうございました!」

 団子屋のおばちゃんがお礼を言った。

「いやいや、たいしたことじゃありませんよ。ああいう化け物がいるので気をつけて下さいね。」

「は、はい!」


「時雨〜。詩音様が呼んでいるぞ〜。」

 相方の柳の声が聞こえた。

「ではそろそろ行くとしようか。」

「待って!貴方達は一体何者なの!?」

「森羅宗───俺たちが所属している宗はそう呼ばれている。腹が減ったときにまたいくぞ。鈴ちゃん。」

 そう言って時雨は軽くウィンクをして立ち去った。



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