ふたつの探し物
王の間を出たあと、リベラとノヴァは王宮の庭に面した回廊を歩いていた。暮れ始めた回廊の柱には、柔らかい光のランプが灯されている。
「ところでリベラ。王都へは何か用があって来たんじゃないのか?」
「ああ。昔、小遣い稼ぎに作った魔術符があっただろ?あれが残ってるみたいだから、探しに来たんだ。」
魔術符とは、紙に特定の魔法がかけてある便利アイテムである。大きさは様々で、銘柄も数多く出回っている。
「あぁ、あれか。何か問題でもあるのか?」
ふたりは王都で育った幼なじみだ。お互いの過去はよく知っている。
「発動が不安定なやつがあってさぁ…。」
リベラはばつが悪そうに言う。
「不安定って?」
「表記以外の魔法が追加発動したり。」
「危ないのか?」
「今のところは大した話は聞かないけど、信用問題にかかわる。」
魔導士は、それぞれに得意分野がある。それを活かして新しい魔法の研究や、アイテムの開発をしたりする。監視局で働くリベラだが、魔導士である以上それはライフワークでもある。そして開発したもののひとつが魔術符だった。
ただ、駆け出しの頃に作った不安定なものを、未だに古物屋がもっていたりする。銘も入ってはいないが、リベラはそれを探しては購入し回収していた。
「そうか。休暇はどのくらいある?」
リベラがノヴァを見る。
「タダ働きはしないぞ。」
「ケチだな。」
「ケチじゃない。渡世術だ。」
ノヴァが笑う。
「石のことか。」
「あぁ。探して欲しい。」
「う~ん…。」
確かに仕事の範疇だが、リベラは休みは休みたい。
「王都にいる間の寝食は提供するぞ。自分の探し物もあるんだろ?」
「一国の王様が宿代をとるのか。」
「監視局のお役目で来ているなら協力義務もあるが、休暇なんだろ?」
「お前は親友だと思ってた…。」
「俺も思ってる。だから、一番信用出来るお前に頼んでる。」
昔から、ノヴァの方が1枚上手だ。
「わかったよ。」
リベラは渋々頷いた。