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白鳩の魔導士と天秤の光  作者: 寿堂 有希
王都編
4/56

王妃と白い竜

 子供のように床に座り込んで、リベラとノヴァは石像の欠片を手にあれこれ話込んでいる。肝心の石の話をなかなか訊く機会がないフェーリークスは、すっかり退屈して広間を行ったり来たりしていた。

「あら、フェーリークス。」

 南の出入り口付近で日向ぼっこに落ち着いたとき、ふいに頭上から優しい声がした。

「おぉっ!これはお見苦しいところをお見せ致しました。王妃様におかれましては誠にご機嫌麗しゅう…。」

 フェーリークスは羽を広げ、仰々しくお辞儀をしてみせる。それに応えるように、王妃はドレスをつまんでふわりとお辞儀した。

 気を良くしたフェーリークスは飛び上がり、未だにこちらに気付かないふたりのところへ飛んでいく。

「おふたりとも!王妃様ですよ!」

「やぁ。ステルラ。相変わらず美しいね。」

 振り返ったリベラが、臆面もなくさらりと言う。

「リベラ様もお変わりなく。」

 王妃ステルラ・ウェリタスは、にっこり笑って答えた。

「ステルラ、どうかしたか?」

 先程まで少年のように無邪気に過ごしていたノヴァだったが、ステルラと侍女の姿を認めるとスッと立ち上がり迎える。

「ええ。オリエンスがおふたりとお話したいと言っています。」

「そうか。」

「ノヴァ、オリエンスの声が聴こえなかったのか?」

 リベラはふたりのやり取りを聞き、首を傾げる。

「いくら呼んでも返事がないからと、私に言ってきたようですよ。」

「聴こえなかったな。」

「そんなこと、ちょくちょくあるのか?」

「いや、初めてだ。」

 顎に手を当て、ノヴァは眉間にしわを寄せる。

「まぁ、とりあえず、オリエンス翁に会いに行くか。」

「あの、私は王妃様と一緒にいます。」

 フェーリークスが、おずおずと言う。

「使い魔が、相手が苦手だからって主人のそばを離れるのはどうかなー。」

「苦手だなんてそんな!ただ王妃様とお話がしたいのです!」

 きょどきょどと首を振る鳩は面白い。

「私は構いませんよ?フェーリークス、お茶にしましょうか。」

 クスクス笑ってステルラが言う。

「お、恐れ入ります。」

 フェーリークスは心底安堵した様子で、ステルラの側に寄った。

「あの、リベラ様、今夜は逗留なさいますか?」

 広間を出ようとしたリベラとノヴァに、ステルラの侍女のひとりが声をかける。

「そうだなぁ。ノヴァ、世話になってもいいか?」

「もちろんだ。」

「では、いつものお部屋をご用意しておきます。」

「ありがとう。そうだ。悪いんだけど、それならあの欠片も部屋に運んでおいてくれないかな?」

「かしこまりました。」

 侍女は深くお辞儀をし、ふたりを見送った。


 王の間へ向かいながら、ノヴァはリベラに訊く。

「あの欠片に何かありそうなのか?」

「そうだなぁ。何にもないんだけど、オリエンスの声が聴こえなかったのが引っかかる。」

「それが欠片のせいだと?」

 ノヴァは首を傾げる。

「破壊した犯人が魔導士っぽいのがなぁ。なんかヤなんだよなぁ。」

 リベラは歩きながら、うんうん唸る。

「オリエンスにも訊いてみるか。」

 そう言うと、ノヴァは突き当たりに現れた扉に手をかけた。高い天井まである大きな扉は、豪華な装飾が惜しげもなく施されている。一見重そうな扉だが、ノヴァが軽く力をかけただけでスゥッと開いていく。

「いつ見ても変な扉だな。」

 リベラはそう言いながら、ノヴァに続いて部屋に入った。

「久しいな。清浄の魔導士よ。」

 大気を震わす荘厳な声がする。

「その呼び方は嫌いですよ。オリエンス翁。」

 リベラは静かに異を唱える。

 部屋の中央、一際明るい場所に、白い大きな古竜が悠然と横たわっている。同じ城の中かと思わず疑うほど、その部屋には異質な雰囲気が漂っていた。


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