国王の腹心
リベラはしゃがみこみ、石像の欠片をまじまじと見つめる。そのうち、ひとつを手に取り撫でたり翳したりし始めた。
「何か分かるか?」
「いや、全然。」
リベラの手元を覗き込みノヴァが訊くが、なんとも気のない返事である。
「ノヴァ様、城内を含め王都の警備に衛兵と共に魔導士を配置いたしますが、よろしいですか?」
「あぁ。任せよう。」
ノヴァの承認を受け、ウィクトールが颯爽と広間を出ていく。
「では、僕は新しい石像の手配を始めますね。数日のうちに設計図のモデルをお願いしますが、よろしいですか?」
「かまわないよ。」
頷くノヴァにアルスは満面の笑顔で謝意を述べ、小走りにどこかへ向かった。
「元老院はどうします?」
ふたりが自身の役目を果たしに向かうのを見送ると、ユースが少し声を低くして言う。
「解決の目処が着くまで伏せておきたいが、お前はどう思う?」
「年寄りは耳が早いですからね。」
「すでに伝わっているか…。」
「おそらくは。概要の文書だけでも渡しておきますか?」
「仕方ないな。」
「では、早急に手配いたします。のちほど承認印をお願いします。」
「わかった。頼むよ。」
ノヴァの言葉を受け、ユースは速足で城の奥へ立ち去った。
「相変わらず優秀だな。」
それまで黙ってしゃがみこんでいたリベラが、肩越しに声をかける。
「おかげさまで。」
腹心を見送ったノヴァは、少し砕けた調子で言いリベラの隣にしゃがんだ。
「派手にやられたな。」
「まったくだ。自分の姿をしていたものが、こんなにバラバラになっているのを見るのは、あまりいい気分はしないもんだな。」
部下達に見せるのとは違う、少し弱気な言葉がノヴァの口から漏れる。
「そりゃそうだ。俺でもイヤだよ。」
「私もです。」
リベラとフェーリークスが、当然だろうと言わんばかりに立て続けにノヴァに言う。そんな気心の知れた幼馴染みの様子に、一国の王は何のてらいもなく笑った。