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白鳩の魔導士と天秤の光  作者: 寿堂 有希
王都編
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クラルス国ー 王都アルブスー

 ウィクトールは、ついさっき来た練兵場までの道を、今度は逆に歩いていた。

「ウィクトール、あの石像を壊したのは魔導士なのか?」

 解放されたリベラが少し後ろから聞く。

「マントを着た男が立ち去るのが、あの付近で目撃されております。」

「それはいつの話?」

「発見されたのは今朝です。」

「今朝かぁ。」

 両手を頭の後ろで組んで、リベラは何やら思案している。

「何か気になることでも?」

「うん。魔導士を捕らえるなら、それなりの準備がいると思うよ。」

「それなりの装備はございます。そもそも一般の魔導士は、あなたのように印も結ばず陣も書かずに魔法を使うことはありませんがね。」

 ウィクトールと話ながら、リベラは練兵場を見る。そこでは、王都の優秀な騎士達が鍛練に励んでいた。


 広間に着くと、バラバラになった石像の欠片が大きな布の上に並べられていた。その周りでは、クラルスの国王ノヴァ・ウェリタスとふたりの文官が話し込んでいる。

 ひとりは先程リベラを見捨てた事務官ユース・フラーテル。もうひとりは技官アルス・フラーテルだ。

「リベラ様をお連れしました。」

 武官ウィクトール・グローリアの太い声が広間に響く。

「おや。本物のリベラ様でしたか。」

 振り返ったユースが、眼鏡のつるを押し上げる。

「リベラ様!お久しぶりですね!」

 同じく振り返ったアルスが、人懐っこい笑顔で手を振っている。

「やぁ。相変わらず似てない双子だな。」

「よく言われます。」

 アルスが肩をすくめる。

「リベラ、久しぶりだな。マントはどうした?」

「今日は休暇で来たんだよ。あんな派手なの休みの日まで着ない。」

「お前くらいだろうな。そんなこと言うのは。」

 ノヴァが苦笑いを浮かべている。

青浄(セイジョウ)のマントを着ていらっしゃれば、牢に入ることも無かったでしょうに。」

 ユースがしれっと言う。

 青浄のマントとは、リベラが所属する世界均衡監視局の言わば制服のようなものである。青色の生地に銀糸の刺繍が入った上等な仕立てで、その鮮やかさから一目でそれと分かる。

 世界均衡監視局は、今いるクラルス国の隣、コンコルディア国にある世界のバランスを見守る組織で、そこに所属し、かつ、青浄のマントと青浄石(セイジョウセキ)懐中天秤(カイチュウテンビン)を支給されることは、魔導士にとっては最上級の名誉とされていた。

「そーなんですよ!リベラ様ときたら、あの誉れ高き青浄のマントより、ちまたで流行りのマントがいいと言って聞かないんです!王都アルブスへ行くなら、正装で行こうと何度も申し上げたのですよ!」

「しつこいなぁ。お前は。だから天秤は持ってるだろ。ところで、いつまでノヴァの肩にとまっているつもりだ?」

 キンキンと騒ぐフェーリークスが、我に返ったようにリベラの肩に移動する。

「しかし、リベラ様の場合、マントがなくとも充分目立ちますぞ?」

「ですよね!リベラ様の髪は珍しい色ですもんね!」

 リベラは背格好こそ十人並みだが、その髪は青銀色で美しく、瞳も青浄石に劣らない深い青色をしていた。

「ウィクトール、アルス、だからリベラは派手な格好を嫌うんだよ。」

 ノヴァの言葉に、なるほどとふたりは頷く。

「俺の話はいいから。ノヴァ、石像の中の石はあったのか?」

「いや。それを今話していたんだ。」

 ノヴァは深刻な顔で、自らの姿をしていたはずの石の欠片を見つめる。

「やっぱりか。」

「やっぱりとは?」

「石像の台座を見てきたけど、気配が無かったんだ。城に持ち帰ったのかと思って大人しく捕まってみたけど、城内にも石の気配が無い。まぁ、お前を訪ねる手間は省けたけどね。」

 肩をすくめてリベラが言う。

「中の石って何です?」

 リベラの肩から石像の破片を眺め、フェーリークスが訊く。

「その話は後でな。」

 広間には国王と上級官僚しか居ないとは言え、部屋自体が明け広げで気密性が低い。

 フェーリークスは、基本適当な主人の滅多にない真面目な声を聞き、それ以上口を開くのをやめた。

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