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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter5:彩りの義勇軍篇
99/330

第99話『傭兵戦争〜Vol.9〜』

シリーズ第99話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

彩りの戦士一団と蛮勇の傭兵団がぶつかり合うブルーノ国バーント平原──指折りの実力を誇る傭兵団精鋭部隊がガルセク渓谷の拠点から次々に押し寄せてくる。体勢が整い、両軍激しく火花を散らし合う戦いもいよいよ佳境に差し掛かろうとしていた。



「アンタ達…まさかこんなところで会うなんて思わなかったよ…」


「エレンさんの言う通りね…あたくし達を導く運命の流れは時に残酷だわ…」


「おお…身の毛も弥立つようなこの雰囲気!臨場感!しっかりと記事にしなきゃ…エレンさん、今の気持ちを聞かせてくださ──」


「アイリス、仕事熱心なのは感心だけどさぁ…取材は後にした方が良いと思うんだけど…」


「まあ、ある意味ではプロ意識の塊とも言えるのである。ある意味では、ね…」


「すみません、クローマ・ジャーナルの者です!戦いへの意気込みを一言どうぞ!」


「OK!私、シンディ!東方のPower,見せつけてやりマ〜ス!」


「キャハハ!シンディも律儀に答えるお利口さんなのね!いい子いい子してあげるピョン♪」


「アイリス…アンタって奴は…」



急場を迎え、今にも泣き出しそうな分厚い雲が覆う怪しい空模様の中、一行は即座に臨戦態勢を整えた。精鋭部隊襲来の一報を受け、一行の全スクラムが前線の一帯に集結する。敵軍に見知った顔触れが現れたことに一行の胸中には驚きと戸惑いとが交差していた。



「貴女はシンディ…!相変わらず奇妙な姿だわ…歪な外殻に潜める異様なほどの精霊の力…恐ろしい人が現れたわね」


「あっちゃ〜…コーネリアもおったんかいな…ホンマ面倒な奴やわぁ…」


「お前はシーニー州で会った奴ッスか…!ジャンヌ…えっと〜…ジャンヌなんとかッスね!」


「ジャンヌ・“パンサー”だ!テリー・フェルナンデス…今度こそ叩きのめしてやる!覚悟しろよ!!」


「キャハハ!テリーちゃんはおバカなんだね〜♪人の名前を覚えられない悪い子ちゃんはお仕置きしちゃお〜!」


「OK!磨き上げた新・東方styleでsay buyしてくれるでござるぞよ!」


「おいおい、みんなしてアタシを除け者にするつもりかい!?抜け駆けは許さないよ!」


「キャハッ、そうだった♪ごめんなさ〜い!」


「悪りい悪りい、お前の力も借りないとな…ポルポ!」



傭兵の人だかりを掻き分けながら一手遅れてジャンヌ、コーネリア、シンディの徒党に加わったのは武装商船団の首領ポルポ──オクトパスレッドの彩りの海賊皇だ。彼女と相対する無色透明の彩りの海賊キャプテン・ロビンは彼女を視界に捉えるや否や反射的に前へと飛び出し、赤黒い敵意を燻らせた眼差しを突き刺した。



「ポルポ…お前も傭兵団に協力してたなんて!」


「フン、虫けらのくせに踏み潰されずに生き長らえてやがったな…ロビン!」


「ヘヘン!ダテに7つの海を渡ってないよ〜だ!海賊ナメんなよ!」


「おやおや、元気なこったねぇ…その威勢がどこまで続くかな?ペーシュ国の借りを返してやるから、かかって来やがれ!」



互いに惹かれ合うように敵対する者同士が並び立って向かい合う。テリー、アミィ、クレア、ロビンの4人がジャンヌ、コーネリア、シンディ、ポルポの4人と対峙し、一触即発の緊迫した空気が辺りに充ち満ちる。傭兵団の一員として戦う4人の姿は荒くれ者の粗暴さと祝福の証の華やかさ──相反する存在が共存する少し異様な様相だった。



「ドラララララァ!」


「キャッハハハ〜!」


「ぶるわああぁぁ!」


「うおおらあぁッ!」


「ひいぃ…シンディ、前より迫力が増してるよ!あわわわ…」


「こりゃ骨が折れそうやな〜…完全に本気モードやで…」


「クレア、アミィ、怯んではいかんッス!魂の友である自分らは絶対負けないッス〜!」


「テリーさんの言う通り!私達は1人で戦ってるんじゃない…“絆の力”がある!」



ロビンの言葉が一行を再び鼓舞する。皆が臆することなく目の前の脅威へと立ち向かっていった。



「あの4人、ただの荒くれ者じゃない…精鋭部隊は伊達じゃないということね」


「そうですね、イレーヌ。4人とも前より強くなってる…私達も援護を──ううっ!?」


「ヒャヒャヒャッ!そうはいかねぇぜ!」


「モニカ、大丈夫!?肩に銃剣が…!」


「この辺には拠点の建物も大きな木もないのに…いったいどこから現れたの!?」


「チッ、マチルダ…!」



剣の柄を握り直したモニカに不意討ちが飛び込んでくる。仁王立ちで揃い踏みするのはカーディナルレッドのリベラ、ハンターグリーンのマチルダ、インクブルーのジェンシア、ポテトイエローのグラーノ、スイートポテトパープルのセレアル──祝福の証を持つ破落戸5人組が敵軍の増援として姿を現した。



「さすがはマチルダ!不意討ちの腕はたいしたもんだよ!」


「貴女達は…!スプルース国で会ったならず者!」


「ピンポン、大正解!やったね、セレアル!ウチらのこと覚えててくれたよ〜!」


「おお、良かったなぁ〜…。あれだな、いよいよ勝負なんだな〜…うん」


「アンタらにはジャッロの坊やとローザ様、2人の借りをまとめて返してやらなきゃならないからねぇ…覚悟しな!」


「まあ、そういうこった。あたしゃテメェらを倒して、たんまり金を頂いて、遊んで暮らしてやらぁ!ビクトリア、泣かしてやるよ…ヒャヒャヒャッ!」


「ハッ、そうはいかねぇよ!あたいらの“絆の力”、見せてやるよ!」


「はい!今こそこの戦いに決着を着けるのです──」


「お待ちなさい。モニカさん、無理はいけません。まずは肩の傷を治療してからですよ」


「そんな猶予はありません。皆に遅れを取っている場合では──」


「お待ちなさいと言ってるのがわからないのですか!貴女はこの軍の大将です。貴女が倒れたら負け、皆で協力して乗り越えてきた全てが終わりなのですよ。もっと御自分の役割を、立場を自覚しなさい!!」


「…はい。アムール、すみません…」


「いえ、こちらこそ声を荒げてしまい申し訳ありません。さあ、治療しましょう。すぐに終わりますからね」


(私の役割…私の立場…“大将”…私の、立場…!)



舞台に役者が次々に揃っていき、戦いのボルテージはますます高まっていく。昂る彩りの力を惜しみ無く振るい、バーント平原という名の舞台を華やかに彩った。



「フン!はああッ!」


「チッ、お堅い奴だね…ちょっとやそっと小突いたくらいじゃ倒れなさそうじゃないか…」


「この鎧女、前にいなかった奴だね…私はリベラ、アンタも名乗りなよ」


「…水瓶座のヴィボルグ。皆を守ってみせる…負けはしません」


「ヴィボルグ殿…では、こちらも!」



他の者達を凌駕する圧倒的な防御力を誇り、ならず者達の猛攻を受け止める水瓶座の重装騎士ヴィボルグに続きグラーノ、セレアルと同じアーマーナイトのサンディアが前衛に躍り出る。愛する祖国フルウムのため、己の信じる義のために立ち向かう覚悟を胸の内に燃やしながら挑みかかっていった。



「この人もアーマーナイト…セレアル、気合い入っちゃうよね〜!」


「むむぅ〜…負けないんだな〜…!」


「へぇ、やる気満々だね…それなら相手に不足なし!フルウムの盾として、貴女達に絶対勝つ!!」


「サンディア、小生も加勢するでごわす!ぬおおぉぉッ!!」


「ひゃああッ!?この斧使いさん、デカいよぉ…!」


「あれだな〜…190センチはあるんだな、うん」


「サンディア、重装騎士同士の戦いに割り込んですまぬ。だが、フルウムの戦士として共に悪を討ちたいでごわす!」


「ヴァイン…ありがとう。貴女がいてくれれば百人力よ!援護頼むわ!」


「おう!ブッ飛ばすでごわす!そりゃああぁぁッ!!」


「クッ、強い…!セレアル…負けたくないよ…!」


「あれだな…オイラはグラーノを信じてるんだな。うん」



サンディア、ヴァインの2人と激しくぶつかり合う重装騎士の2人──グラーノとセレアルも共に戦いの中で紡いだ絆を胸の内に燃やしていく。一方、インクブルーの彩り、鴉の細剣士ジェンシアにはリタが臆することなく立ち向かっていた。



「レイヴンエッジ!」


「そんなの当たるか!シャドウバレット!」


「クッ、ガキのくせになかなかやるじゃないか…銃使いなら懐に──」


「デスサイス・サマーソルト!」


「何ぃッ!?」


「フッ、俺をガキだと思ってナメるなよ?絶対に負けないぜ!」


(このリタという少女…なんて緻密な戦いだ…なんて…美しいんだ…!)



祝福の証の彩りで繋がる皆が結託し、次々に迫り来る敵軍を真正面から迎え撃つ。しかし、討つべき相手は祝福の証を持つ者達だけではない。リベラ達彩りの戦士達の周りを固める傭兵達も精鋭部隊に選抜されるだけの実力を持ち合わせており、手練れの小慣れた戦いぶりに一行は次第に苦戦を強いられていった。



「すまん、深手を負ってしまった…不覚…」


「私もヘマしちまった…私とアヌビスに勝つなんて、なかなかやるじゃないか…カタリナ、治療を頼むよ…」


「ポワゾン、少し待ってて。私達だけじゃ回復が間に合わないの…」


「あらあら、困ったわね〜…急いで治さないと──」


「ぐわああぁぁッ!」


「ひいいっ!た、助けてくれ…!」



傭兵団の一端から断末魔と戦慄の悲鳴が続けて木霊する。一行が一点に集める視線の先で剣を構えていたのはクリムゾンの彩り──大勢の軍を率いる王である獅子ミノアとは相反する孤高の獅子──フレアだった。



「うぬが武勇、我が武を討つに値せず…笑止!」


「貴女は…フレア…」


「モニカ…うぬが太刀筋、片時も忘れはせぬ。百獣を嬲り、万象を屠る我が滅殺の剣、今こそその身に焼き付けよ!」


「クッ…こんなときに…!」



モニカはフレアと対峙する──否、正確に言えば対峙せざるを得ない状況に追い込まれてしまった、と言うべきか──モニカは迷いを抱いたままフレアを迎え撃ち、刃を交えていった。



「せいやあぁッ!」


「ぬぅん!ふんッ!」


「フレアも前より格段に強くなってる…このままでは──」


「ちょ〜っと待った!主催者の私を差し置いて盛り上がらないでよね!」


「リモーネ…!」



レモンイエローの彩りが刃を交える2人の間に割り込んでくる。敵将は最悪のタイミングで現れた。お飾りと蔑まれながらも手練れ達を率いるリモーネは意気揚々と剣を掲げながら、初対面のフレアへと歩み寄っていった。



「……」


「アンタ、いい腕してるじゃない!よければ私の傭兵団に入って一緒に──」


「獅豪閃!」


「キャアアァァッ!」


「リモーネ!…なんてことを!」



鬼気迫る一閃に皆が息を呑む。歩み寄ろうとしていたリモーネを他を一切寄せ付けず相容れぬクリムゾンの閃光が撃ち抜く。自らの眼前に倒れるリモーネを睨み付ける紅き獅子の瞳には一片の慈悲も無かった。



「一介の人の子が我が上に立とうなど笑止千万!叩き斬ってくれるわ!」


「クッ…酷いご挨拶してくれたわね…許さない!」


「惰弱也!信念無き武勇など振るうに及ばず!疾く去ねぃ!!」


「フン、随分と偉そうな口利いてくれるじゃない…誰だか知らないけど、アンタもまとめてやっつけてやるわ!覚悟しなさい!」


「フレア…リモーネ…貴女達に勝ち、皆をこの先に続く明日へと導いてみせる!この軍の…大将として!!」



彩りの戦士達を統べる大将モニカ、孤高の獅子王フレア、復讐に燃える敵将リモーネによる三つ巴の様相を呈してきた。手練れ揃いの巨大傭兵団との戦いもいよいよ最高潮に達しようとしている。一行は大いなる戦いに打ち勝ち、その先に待つ運命を切り拓くことが出来るのだろうか?




To Be Continued…

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