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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter5:彩りの義勇軍篇
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第94話『傭兵戦争〜Vol.4〜』

シリーズ第94話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

ブルーノ国バーント平原──祝福の証の彩りのもとに旅路を歩む一行は巨大傭兵団との長き戦いの渦中にいた。偶然にも対峙したリーベの双子の妹ピカンテを仲間に加えるが、リーベが不意討ちを受けて負傷してしまう。ビクトリア、フェリーナ、ケイト、ピカンテの一団はネイシアを中心とした救護班の待つ拠点へとリーベを連れ帰って来た。



「ネイシアちゃん、怪我人です…お願いします」


「リーベちゃん!?可哀想に…すぐに治しますからね…あ、貴女は…?」


「私は紅蓮のピカンテ…天使リーベと共に生を受けた双生の妹だ。姉リーベを守るため、この一団の勝利のため、この力を惜しみ無く使わせてもらおう…ひとつよろしく頼む」


「リーベちゃんの双子の妹さん…でも、私達の軍にはいませんでしたよね…?」


「ええ、敵軍の一員だったけど、私達の方に加勢してくれることになったわ。大袈裟な言葉遣いだけど、お姉ちゃん思いの優しい娘よ」


「むぅ…そう言われると調子が狂うのだが…まあ、否定はすまい。リーベは私にとって誰より大切な人だ。それはたとえ悠久の時が流れようとも変わらぬ不変の摂理だからな…」


「ハッ、また何を訳のわからないことを言ってるンだい…まあ、腕は確かみたいだし、頼りにしてるよ!」


「ピカンテ、気を付けて…私も怪我を治したらすぐに参りますわ…共に戦いましょう!」


「…ああ!リーベという光さえあれば私には怖いものなど何も無い。立ち塞がる者は皆、我が身に宿る邪竜の餌食にしてくれる!」


「じゃ、邪竜!?しかも我が身に宿るって…大丈夫なんですか?」


「大丈夫さ、ネイシア。変な設定の芝居だから、気にすることじゃないよ」


「し、芝居とか言うな!さあ、我らの正義の体現しに行くぞ!」



リーベを救護班に預け、彩りの戦士の一員として戦う決意を新たにしたピカンテは再び駆け出す。愛する姉リーベのために強くなるという決意と赤々と燃える意思が爛々と煌めいていた。



「ふうぅ…我が胸の内に住まう邪竜が血を求めている…力が暴走する…!」


「何の力が暴走するかはわからないけど…なぜピカンテは傭兵団に入ったの?」


「うむ、それはだな…一緒に旅していたリーベと騎士団領ではぐれてしまい、私の心は漆黒の闇に閉ざされた…だが、己を鍛え、強くなればいつかきっと会えると信じていたのだ」


「へぇ、あんたも騎士団領まで来てたってのかい…あんたとももっと早く会えてたかもしれないって思うと、奇妙なもんだねぇ…」


「つまり、ピカンテちゃんはリーベちゃんを探すために傭兵になろうと思った、ということですか?」


「そうだ、ケイト。傭兵なら心身の強さが求められるし、依頼で津々浦々に赴くこともあるだろう。強くなるためにもリーベに会うためにも一番都合が良いのは傭兵だという結論に行き着いたんだ」


「そう…動機はどうあれ、結局はリーベを想ってのことだったのね。やっぱりピカンテって優しいのね」


「よせ、フェリーナ。私に優しいなんて言葉は相応しくない。それにリーベを守るためにはまだ足りぬ。先ほどの戦いでそれが証明されてしまったばかり…もっと強くならなければ!」


「ハハッ、なかなか根性あるじゃないのさ!その意気だよ!」


「本当に頼もしいわね。こんなに大切に想ってくれる人がいるなんて、リーベは幸福者よ」


「仲良しな双子の姉妹ってトリッシュとカタリナみたいだけど…あたいらってこんな奴らばっかりなのかねぇ…」


「フフフッ、そうですね。さあ、リーベちゃんが治るまで私達が頑張りましょう!」



一方、他の一団も傭兵団相手に奮戦する。一行の大将であるモニカ率いる一団は、大剣を得物とするモニカが後衛に据わっていた。



「クッ…させないわ…!みんな、今です!」


「ブライトエッジ!」


「龍尾返しじゃい!」


「ドルチェサーベル!」



バーミリオン騎士ティファの堅牢な守りに助けられながらモニカ、ステラ、ドルチェが力強い連撃を繰り出す。モニカが剣から放つ金色の陽光に続いてステラの豪快な猛攻とドルチェの軽快な速攻が美しい彩りを紡ぎ、傭兵達に打ち勝っていく。モニカは共に徒党を組む3人──旅の始まりにコバルト岬で出会い、数多の苦難に一緒に立ち向かってきたステラ──克己的な姿勢で意気投合し、共に鍛練を積んだ騎士ティファ──そして、フルウムの地で巡り会った自警団の長ドルチェ──共に歩む彩りと息の合った連係を見せていた。



「フフッ…いつもリーダーとして先頭に立って戦うモニカに後衛を任せるなんて、不思議な気分ね」


「すごいよ!モニカって剣術もピカイチだけど、光の魔法も使えるんだね!さっすがはこの軍のリーダー!」


「うむ、さすがはワシらの大将といったところじゃのう!攻守に隙無しの横綱相撲、見事なもんじゃわい!」


(ティファ…ドルチェとステラまで…私に大将、リーダーとしての器があるというのでしょうか…?)


「モニカ…どうしたの?まさかケガでもしたの…?」


「…すみません、ドルチェ。大丈夫ですよ。さあ、行きましょうか!」



モニカの胸の内に燻り続ける疑問が膨らみながらも無理矢理に心の奥底に押し込み、再び戦いに飛び込んでいく。モニカは自身に与えられた役割を担い、光の魔法を行使して後衛として傭兵団に立ち向かっていく。祝福の証の彩りが導く戦いの道を歩むモニカの瞳には一片の迷いも無かった。



「そりやぁっ!どすこいっ!」


「てやあぁッ!くらえぇッ!!」


「ぐわぁッ!つ、強えぇ…!」


「調子に乗んなよ!オラァ──」


「ガードシェル!…モニカ、援護をお願い!」


「はい、行きます!ブライトエッジ!」



更に一行は武勇だけでなく知略も武器にして戦う。ルーシー、エリス、アンジュ、ミノリの一団は拠点付近に陣を敷き、静かに戦局を見通しながら迎撃体勢を整える。忍者ミノリの偵察による情報を元に勝利への道筋を見出だす戦略を練っていた。



「ミノリ、前線の状況はどうなっていたかしら?」


「うむ。敵陣、現在の兵は凡そ二千、未だ数多の兵がガルセクの渓に控えておる見込みにござる。我が軍の部隊は平原にて奮戦しているが、多勢に無勢、先ほど数名が救護班の元に搬送されたとのこと…」


「そう…やはり相手は手練れ揃いの巨大傭兵団…一筋縄ではいかないみたいね」


「ありがとう。ミノリがいてくれて僕達も助かるよ。隠密行動はシノビの特殊な技能だし、一朝一夕で習得出来るものではないからね」


「ええ、頭数で遥かに劣る私達にとってはミノリからの情報が頼りね。まだ先は長いから、重要な役割を担ってもらうことになるわ」


「はい、まだ先鋒部隊ですものね…ミノリさん、みなさんに指令の伝達をお願いしますわ!」


「承知。ルーシー殿…軍師の重責、気苦労も多かろう。御見舞い申し上げる」



ミノリの報せ通り、救護班の控える拠点にはちらほらと負傷した者が戻ってきていた。ネイシア、カタリナ、アムール、エルヴァ、ペルシカが救護班として待機している中、傷を負ったテメリオがビアーに連れられて担ぎ込まれる。癒し系の5人が穏やかな空気を醸し出す空間がにわかに慌ただしくなっていた。



「テメリオがケガしちゃったよ〜…手当てをお願い!」


「イタタ、しくじったのだ…すまないのだ…」


「は、はい…今、治療しますね!」


「すみません。テメリオさん、治療を受けながらで構いませんので、今の戦況を聞かせていただけますか?」



ペルシカから治療を受け横たわるテメリオの側にアムールが座り、戦況を尋ねた。救護班は治療を施しながらも積極的に前線の情報を収集する。実際にバーント平原に立ち、傭兵団と戦う者達の見ている“生きた戦局”はミノリの諜報と並んで軍師を務めるルーシーへの情報源だ。



「ああ、傭兵団は倒しても倒してもひっきりなしにガルセク渓谷の方から押し寄せて来る大軍なのだ。予想していた以上の規模で、明らかに数で押し切られそうな状況なのだ…」


「そうですか…別働隊の到着がまだみたいですからね…神よ、我らに慈悲を…」


「あらあら、大変ね〜…はい、薬草に漬けた湿布よ。これですぐに良くなるわ」



隣のベッドではリーベがカタリナとネイシアの治療を受けている。戦いで傷を負いながらも想われるのは戦場で再会を果たした双子の妹ピカンテのことであった。



「リーベちゃん、傷は大丈夫ですか?」


「はい、だいぶ落ち着きましたわ…ピカンテ、無事かしら…」


『リーベという光さえあれば私には怖いものなど何も無い。立ち塞がる者は皆、我が身に宿る邪竜の餌食にしてくれる!』


「フフフッ、ピカンテってリーベのことが大好きなんだね。私もトリッシュのことがとても大切だから、ピカンテの気持ち、すごくわかるよ。きっとリーベもそうでしょ?」


「…はい!ピカンテは私の大切な人、愛する人ですわ!私の愛でピカンテを守り、支えていきたいのです!」


「そっか…じゃあ、早く傷を治して元気な姿を見せてあげなきゃね♪」



日が傾き始め、碧のバーント平原がオレンジ色に染まる頃、一行に敵対する傭兵団の拠点──ブルーノ国ガルセク渓谷──大将リモーネはかつてスプルース国にて一行と対峙したカーディナルレッドの彩りを持つならず者リベラと並び、遠くバーント平原に広がる戦場を見つめていた。そこへピカンテの造反を受けた傭兵が慌てて駆けてきたが、リモーネはさして慌てた様子もなかった。



「リ、リモーネさん!ピカンテの奴、裏切りました…!」


「あっ、そう。わざわざありがと。まあ、1人2人裏切ろうがまとめてやっつけるだけよ!」


「私らも久しぶりに奴らと戦えるなんて、腕が鳴るよ。ジャッロの坊やとローザ様、2人の借りをまとめて返してやろうじゃないか!」


「そうね、リベラ。まあ、私達の出番が来る前にアイツらが全滅する可能性の方が高いけどね〜♪」


「ハハハ!それならそれで大歓迎さ!手を汚さないで勝てるなんて、最高じゃないか!」


「そうそう、楽に勝てるならそれに越したことないわ…ちょっと、ブラック!グレイ!アンタ達もキチンと戦ってもらうわよ!準備は出来てるの!?」


「……」


「……」


「…チッ、盗賊だか何だか知らないけど、返事くらいしなさいよね…戦場漁りなんて汚い真似したらただじゃおかないわよ!」



盗賊でありながら傭兵団に加担したブラックとグレイ──上着のフードを目深に被って顔を隠している2人は悪態をつかれながらも我関せずという様相で無言のままだ。



「フフッ、まあ、腕は確からしいし良いじゃないか。2人共しっかり頼むよ!」


「……」


「……」


「もう!なんとか言いなさいよね!ったく、何考えてるんだか…」



リモーネは物言わぬ2人に辟易しながらもリベラを連れて拠点へと下がっていった。頭数で大きく劣勢に立たされている一行は手練れ揃いの傭兵団との戦いに打ち勝てるのか?そして謎の盗賊ブラックとグレイの目的とは?一行と巨大傭兵団との戦いはまだまだ続く…




To Be Continued…

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