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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter5:彩りの義勇軍篇
93/330

第93話『傭兵戦争〜Vol.3〜』

シリーズ第93話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

ブルーノ国にて巨大傭兵団と対峙した一行。別働隊がスプルース国で魔物に足止めを喰らってしまうが、突如として乱入した滅紫の暗殺拳士ヒイラギを加え、リタとの共闘戦線を張って妖しい滅紫の花を咲かせる。静かに闘志を燃やしながら手練れ揃いの蛮勇の戦士達を毅然とした意思と彩りの力で迎え撃っていた。



「フン、誇り無き蛮勇など、我が拳の前には無力也…」


「ふぅ…さすがだな、ヒイラギ。ちょっと一息つこうぜ…ほら、傷薬!」


「ふむ…礼を言う」



冥紫の騎士リタと滅紫の殺手ヒイラギの戦線は少しずつ制圧圏を広げていく。その同じ頃、皆が協力して次々に押し寄せる傭兵の軍勢と相対していた。



「みなさん、大丈夫ですか?…ファーストエイド!」


「アムール、ありがと!さ〜て、燃えてきた!みんな、気合い入れていくよ!!」


「はいっ、エレン姐さん!7つの海の魔物に比べたら、傭兵団なんて目じゃないです!」


「ああ、金だけのために戦う輩に負けたら蛮族の名折れさ!ブッ飛ばしてやる!」


「わたし達も賊長に顔向け出来るようにしないと…ヴァネッサ、頑張ろう!」


「オッケー、メリッサ!わたし達に敵は無〜い!!」



エレンに続き、賊達が荒々しく傭兵達に刃を向ける。人々の平穏を脅かす賊から更正し、彩りの力を振るう誇り高き戦士として自らの正義を体現するべく、果敢に傭兵団に挑んでいった。



「ミラースラッシャー!」


「ワイルドファング!」


「ぐえっ!つ、強えぇ…!」


「邪魔すんな、汚ねぇ賊が!オラオラァ!!」


「チッ…やってくれたね…蛮族は恩も恨みも倍返しなんだよ!喰らいなぁ!!」


「うげえっ!な、なんてこった…!」


「うっひゃ〜…こりゃ倒しても倒してもキリがないね〜…しかも、ルーヴさんの傷、痛そう…」


「ルーヴさん、大丈夫!?けっこう大きい傷だけど…」


「メリッサ、ヴァネッサ、山賊のくせに心配性だねぇ。これくらいの傷、ツバでも着けときゃ治る!どうってことないよ!」



ルーヴは蛮族のプライドを燃やし、戦いの傷を一顧だにせず我武者羅に突き進む。体が傷付けられても賊としての熱い心と彩りの戦士としての誇りは傷付かない。ルーヴの勇猛な戦い振りにメリッサとヴァネッサも背中を押され、厚い鎧を着た重装兵に山賊仕込みの斧を振り下ろした。



「でやぁっ!メリッサトマホーク!!」


「そぉれぃっ!ヴァネッサアックス!!」


「ぐぬおおぉぉ…!」


「よ、鎧を叩き割りやがった…!ひえぇ…!!」


「イェイ!山賊ナメんなよ!ヴァネッサ、次行こうか!」


「イヤッホー!また2人でガンガン叩き割ってやろう!」



一方、他の陣営も奮戦していた。ダスティグレーの彩りを持つブライアが騎士の誇りを潜めた赤錆まみれの剣を得物として攻守に奮闘する。すぐ後にはゼータがバスターの照準を定め、更にその後には道具袋を携えたコレットとリデルが控えていた。



「スパイダーネット!」


「ピエージェ・ド・リエール!」


「よし、掃討射撃!発射!!」


「せぇいやッ!はああッ!」



コレットとリデルの援護を受けながら血紅色の零闘士ゼータとテラコッタの騎士ブライアは息の合った連係を見せる。2人の緑の少女も毅然と戦うゼータとブライアの姿に自ずと勇気を振り絞っていた。



「コレット、リデル、絶妙な援護だったぞ。お前達のおかげだ、礼を言う」


「エヘヘ…ゼータとブライアさんのお手伝いが出来て嬉しいな!ね、リデルちゃん?」


「は、はい…よかったです!」


「よし、次の標的が来るな…みんな、気を抜くなよ」


「ええ、ポワゾン達の情報だと彼らはまだ先鋒隊…決着はまだまだ先よ。頑張りましょう」



更に別の陣営では奇妙な事態が起こる。ケイトの薙刀を払い除け、膝をつかせる戦果をあげたのは1人の少女だった。意思の強そうなキリッとした切れ長の赤い瞳、ショートボブの赤髪に赤と黒を基調とした衣装を着ているが、その髪型と服のデザインは何処か既視感がある。少女は溜め息をつきながら何やら仰々しいポーズをとり、何故か左手にだけ黒い手袋をはめていた。



「ケイト、大丈夫かい!?」


「はい、大丈夫です…小さい女の子なのに、強い…」


「フフッ…今日の私は手加減出来ない。命が惜しいなら早々に立ち去れ!」


「理性で制御出来ないほどの力だなんて…貴女、何者なの?」


「フッ、軽々しく名乗るのは趣味ではないのだが…まあいい、教えてやる。我が名は紅蓮のピカンテ!神々に代わり、貴様らを粛清する!甘んじて地獄に堕ちるがいい!!」


「なんだってンだい、コイツは…わけのわかんないこと言って…」


「どうした?まさかこの期に及んで怖じ気付いたのではあるまいな?まあ、我が力の前に足がすくむのも無理はあるまい──」



紅蓮のピカンテと名乗る少女とビクトリア、フェリーナ、ケイトが睨み合いを続ける中、援護に駆け付けたリーベがピカンテを視界に捉えるや否や目を見開く。ピカンテも何かを察したのか、瞳に燃えていた敵意が一瞬にして消えていた。



「あ…あ、貴女は…!」


「何ッ!?ま、まさか貴様は…神々の啓示のもと、私と共に現世に生を受けた愛の戦士、リーベ!」


「ええっ!?リ、リーベちゃん…もしかして、この娘…」


「そうです、ケイトさん。ピカンテは私の双子の妹なんですの…ああ、ピカンテ…!こんな所で会えるなんて…嬉しいですわ!」


「わわっ!?リーベ、手を取るな!振り回すな──」



ビリビリッ!



リーベが両手を取って引っ張った拍子に黒い手袋のマジックテープが剥がれ、左手が露になる。隠れていた左手にはペッパーレッドの紋様が印されていた。



「あ、あんた…それ、祝福の証じゃないのさ…!」


「フフフ、見てしまったな…そう、これは悪魔との契約の証、私は呪われし悪魔の戦士なのだ!」


「大丈夫よ。それは悪魔ではなく精霊の刻印、呪いではなく、誉れ高き祝福よ」


「むむむ…私の話を聞いていなかったのか?この印は私の奥底に眠る悪魔の力を呼び覚まし、多くの血と贄を糧として私を邪竜として覚醒させ──」


「よかった…私達は皆、貴女の仲間なんです。ほら、みんなが祝福の証を持っているんですよ♪」


「だから私の話を聞けと言って…って!?な、なななな…何だとッ!?つまり貴様らは神々の代行者というわけか…むぅ、恐れ入った…」



ケイトの言葉を受けてその場に居合わせた皆が祝福の証を見せるや否や、ピカンテは慌てふためく。本当に悪魔の印と信じ込んでいるのか、あるいは1人1人に印された万物の力の象徴にこの上無い畏怖を感じているのだろうか──



「さあ、ピカンテ、貴女も私達と共に世界に愛と希望の光を灯しにいきましょう!」


「うむ…我が愛する双生の姉リーベよ…残念だが、それは無理な相談だ…」


「そんな…ピカンテの力は必ずや多くの人を救えることでしょう。不安ならば私の愛で支えますわよ」


「し、しかし…リーベは天使の祝福を受けた愛の戦士、私は悪魔の契約に堕ちた哀の戦士だ…そんな相反する2人が相容れるなど──」


「ああ〜っ!うるさい!煮え切らない奴だねぇ!ゴチャゴチャ言ってないで黙ってあたいらに着いてきな!!」


「は、はい…すみません…」



リーベの説得とビクトリアの折檻で“自称”悪魔の戦士である紅蓮のピカンテを仲間に加えた。傭兵団を裏切ったという形になってしまったが、姉リーベとの再会の喜びが勝っていたためか、悪びれる様子は微塵も無かった。



「さあ、行くぞ!我が神器──デビルズファングの餌食となるがいい!」


「ゲゲッ!?ピカンテ、裏切ったのか…!」


「たしかこの娘、自分のことを悪魔の戦士とか言ってたわね…本当に危ない娘かもしれないわ…」


「ハハハ!じゃあ手始めに俺らを呪い殺しでもするのか?怖〜い悪魔さんよぉ!」


「ち、力が…暴走する…!でやああぁぁッ!!」



ピカンテは得物を仰々しく振るい、女性傭兵に斬りかかる。一閃したかと思われた──が、片刃の剣を逆手に持っていたため峰打ちの格好となってしまい、呆気にとられるほど締まりのない様相になってしまった。



「あれ…?な、なんともないわよ…?」


「何ッ、不発だと!?そんなバカな…!」


「ギャハハハ!まさかそれが必殺技のつもりかよ!?ヒヒヒヒッ!!」


「それじゃ、こっちの番だな…うおらぁ!」


「クッ、しまった…!」


「スイートベール!」



リーベがピカンテを守るべくキャンディピンクの衣を纏わせる。ピカンテを包む甘やかな彩りの法衣は柔らかな愛情と暖かな優しさが満ちていた。



「ピカンテ、大丈夫ですの?」


「ああ、手間をかけさせたな。愛する双生の姉リーベ…荒んだ私の心を癒す天使の微笑み…漆黒に染まった私の心を照らす一条の光──」


「戦場でイチャイチャするとは余裕だな!隙だらけだぜえぇッ!」


「キャアアァァッ!」


「何いぃッ!?そ…ん…な…」



一瞬にしてピカンテの表情が絶望に翳った。自身の不注意でリーベを目の前で傷付けられてしまった。傷付き倒れたリーベに視線を落とし、俯くピカンテの胸中に沸き上がるのは自責の念とやり場の無い憤りだった。



「貴様ら…死ぬ前に言い残すことはないか?」


「は?なんだよ、ピカンテ…また変なこと言いやがって…」


「勝手に裏切って、勝手に恨み出して…随分とお子様なのね」


「テメェ、調子乗ってんなよ!首根っこ捕まえてリーダーに突き出してやるぜ!」


「黙れ!鬼神と化した我を止められると思うな!天使を汚した罪の代償、死で購え!!」



ピカンテは赤黒い怒りを全身に纏いながら悪魔の牙と称する剣を振るう。夢想に惑いながら闇雲に戦っていた先程とは打って変わって真剣な顔付きで、傭兵達に突き刺す眼差しは真摯に戦いに挑む熱意に満ち溢れていた。



「せいやあぁッ!」


「な、何だ!?さっきよりも動きが格段に早くなってるぞ!?」


「攻撃もさっきより強い…本気だわ!」


「ピカンテの奴…チクショウ!!」


「フン、もう諦めるがよい。天使を汚した時点で貴様らの敗北が決まった。これは天命によって定められた罰なのだ!」


「ピカンテ…私の愛する大切な妹…」


「覚悟!邪竜の炎に焼かれるが良い!パーガトリアル・イービルフレイム!!」


「キャアッ!あ、熱い…!」


「これは…本物の炎じゃないかよ!どういうことなんだ!?」


「クソッ、撤退だ、撤退!逃げろ!!」



ピカンテを嘲っていた傭兵達はペッパーレッドの焔に焼かれ、火傷を負いながら逃げ去っていった。が、双子の姉リーベが負傷してしまい、ピカンテにとってはほろ苦い決着となってしまった。



「やれやれ…なんとか勝ったけど、怪我人が出ちまったねぇ…リーベ、可哀想に…」


「そうね…まずはリーベを救護班の所に連れていきましょう。ピカンテも一緒に来てくれる?」


「…はい…」


「ピカンテちゃん…一緒に戦いましょう。リーベちゃんは大丈夫だから、自分を責めないで、ね?」


「リーベ…私の1番大切な人…今度こそ絶対に守ってみせる…!」



“自称”悪魔の戦士ピカンテを加えた陣営はリーベの怪我の治療のために拠点に一時撤退した。しかし、巨大傭兵団との戦いはまだ始まったばかり──この先どれほどの脅威が一行に降りかかるのか?そして、到着が遅れている別働隊の動向は…?




To Be Continued…

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