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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter5:彩りの義勇軍篇
89/330

第89話『常磐の緑』

シリーズ第89話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ〜!

フルウム国の英雄である覆面の怪傑カンタループとして戦う2人──エレナとセレナの姉妹剣士と共に盗賊団を駆逐した一行。穏やかなフルウムに蔓延る悪を討つことに成功したが、敵対した盗賊団の首領はあろうことかヴィオだった。仲間として共に歩んでいた彩りの戦士と幾度も敵対者として顔を合わせることに、モニカは心を曇らせていた。



「ヴィオは…まさか、心まで盗賊に堕ちてしまったのでしょうか…?」


「モニカ…?皆との絆を信じる貴女ともあろう人が、何故そう思うの?」


「ティファ…ヴィオはアヌビスと戦うことに一切の躊躇いがありませんでした。それと同じように私達にも迷い無く殺しに来るのではないかと思ってしまって…」


「…そうね。ヴィオの真意はまだわからないけど…信じましょう。今の私達にはそれしか出来ないわ」


「はい…信じたいです…ヴィオとの、絆を…」


「モニカ、不安かもしれないけど…ヴィオを信じて、貴女自身が言った言葉を信じて。“今は”道を違えている…そうでしょう?」


「そうですね…ありがとうございます。さて、そろそろ時間ですね…もう行かないと…」


「ええ、きっと皆も待っているわ。急ぎましょうか、大将!」


(大将…?ティファも私のことを…私が…“大将”…)



モニカとティファは部屋を飛び出し、足早に皆が待つ場所へと向かう。その夜、一行は宿の食堂に集結していた。営業時間を終えた食堂に一行以外の姿は無く、壁には大きなホワイトボードが掲げられている。宿の主人であるドルチェの父の厚意により食堂を貸し切り、リモーネ率いる巨大傭兵団に挑むための会議が執り行われようとしていた。



「来た来た!モニカ、ティファ、こっちだよ〜!」


「コレット、みんな…すみません、お待たせしました」


「よし、全員揃ったね。では、会議を始めよう。ルーシーの立てた作戦案をみんなで確認し、不明な点があれば質疑応答をして適宜クリアにしていこう。では、ルーシー、よろしく」


「はい、アンジュさん。では、わたくしが作戦を説明させていただきますわ」



食堂の空間にピンと張り詰めた空気が満ちる中、一行の軍師を務めるルーシーがホワイトボードに向かい、作戦の構想を図に示しながら自身の頭の中にもイメージを構築していく。その叡知に満ちた瞳には軍師として一行を導く確固たる決意と覚悟が爛々と燃えていた。



「手練れ揃いの傭兵団を相手にして足場の悪いガルセク渓谷に飛び込むのは不利です。まずは少数で遊撃してバーント平原に誘い出すのが得策でしょう」


「ああ、そこは間違いないね。その役目は私達ビアリー親衛隊、毒の彩りに任せておきな!みんなもそれでいいね?」


『ウイィッス!!』


「ありがとうございます。では、ポワゾンさん達が先鋒隊として敵軍を誘き出し、バーント平原でわたくし達本隊と合流してから一斉に迎え撃ちます。そして、この地点に向けて東側から別働隊を──」


「ちょっと待って!私達に別働隊がいるなんて聞いてないよ!?」


「カタリナの言う通りよ。私達以外の精霊の戦士…いったい何者なのかしら…?」


「ルーシー、別働隊ってどういうこと?相手は一国の軍に匹敵する規模の傭兵団、机上の空論では絶対に勝てないわ!」



仲間達もざわめくほど突拍子もない策にイレーヌが詰め寄る。が、ルーシーは顔色を変えることなく携帯端末を手に取ると、自身の策を疑うイレーヌに対して悪戯な微笑みを浮かべた。



「問題ありません。別働隊はわたくしが手配していますわ。このインテリフォンで、ね」


「な、なんと抜け目の無い…外部に連絡をする素振りもなかったし、全然知らなかったわ」


「そうだね、エリス。さすがの軍師様だね…恐れ入ったよ」


「うん、それじゃ別働隊の件はルーシーに任せるわ。今の進捗状況はどうなってるかしら?」


「はい。まだ全員は揃っていないのですが、ブルーノ国と東部に隣り合うスプルース国に集まっていただいております。決行の日取りに合わせてブルーノ国内に入り、別働隊として行動していただくことになりますわ」


「う〜ん、それはありがたいけどさ…そもそも見ず知らずの人達が俺達に協力してくれるのか?しかも相手は巨大傭兵団だぜ?」


「あら…リタさん、心配無用ですわよ♪みなさんわたくし達と絆で繋がった“仲間”ですので、大丈夫ですわ!」


「そっか…それなら大丈夫だな!絆が俺達の一番の力だもんな!」


「そうだよね〜!ウチとリタ様の小指と小指を結ぶ赤い糸…それも確かな絆だもんね♪ウチとリタ様の愛は無敵だよ〜!」


「あらあら…イオスさん、やる気満々ですわね。では、遊撃の際に単騎突撃していただこうかしら?」


「ちょっ!?ま、待って待って!ルーシーさん、目がマジになってるって!冗談キツいよ〜!」


『アハハハハッ!』


「まあ、冗談は抜きにして、決行はいつにするの?あまり放っておいたら傭兵団がどんどん膨れ上がっちゃって面倒になるんじゃない?パパッとやっつけちゃおうよ!」


「エレンさん、気持ちは解りますが、もう少し体勢を整えましょう。ドルチェさんの仲間も全員揃っていませんし、別働隊のみなさんが準備する時間も必要だと思います」


「そうだね、ケイト…確かにこれだけの大所帯だし、足並み揃えていかなきゃね!」


「では、決行は今週末はどうでしょう?準備を整えるにも十分なはずです」


「賛成ッス!正義の力を見せてやるッスよ!行くぞ〜ッ!!」


『うおおぉぉ〜ッ!!』



翌朝、一行は宿の玄関先に集結する。フルウムの平和の一助となるべく、次なる依頼に赴こうとしていた。



「さ〜て、今日は何をするってンだい?張り切ってやろうじゃないのさ!」


「今日の依頼は薬の材料探しだよ!専門の先生をお招きして郊外の森で薬草とかいろいろ探す仕事なんだ!」


「専門の先生…?また精霊の導く出会いがあるのかしら…楽しみね」


「ドルチェの一門の仲間にも会えるかのう?全く楽しみでたまらんわい!」


「ほい、準備完了やで!カタリナ姉ちゃんとネイシア姉ちゃんの愛情たっぷりのお弁当お待ち〜♪」


「ウヒョヒョッ!こりゃ楽しみぞなもし!」


「イエーイ!姉貴とネイシアの弁当マジ最高!超張り切っていこうじゃん!」



一行は弁当を楽しみに勇んで歩を進めていく。目的地の森が眼前に広がり始めた頃、突然ドルチェが駆け出し、森の入口で待っていた人物を一行のもとへ引き連れてきた。



「みんな、この方が先生だよ!薬草の専門家である──」


「貴女は…山羊座のエルヴァ!」


「ええ、久しぶりですね〜、アムールさん…みなさん、はじめまして。ギャラクシアより参りました、山羊座のエルヴァと申します。よろしくお願いしますね」



穏やかに微笑みながらゆったりした動作で挨拶を交わす。十二星座の1柱を担う山羊座のエルヴァは間延びしたおっとりした物言いの穏やかな女性だ。麦わら帽子を被り、グリーンのTシャツにデニムのオーバーオールを着ている。屋外で日焼けした左手にはエバーグリーンの紋様が印されていた。



「エルヴァは腕利きの薬草摘みで、薬草の知識もすごく豊富です。とても頼りになる方ですよ」


「そうですか…私、モニカ・リオーネを始め、薬草については不案内にございます。御指導御鞭撻のほどをよろしくお願い致します」


「あらあら、モニカちゃんって礼儀正しいのね〜。でも、そんなに畏まらなくても大丈夫よ。気軽に接してね〜」


「あ、ありがとうございます…では、よろしく、エルヴァ」



山羊座のエルヴァを加えた一行は森へと踏み入る。依頼の品である薬草を手にするべく方々へと散り、手当たり次第に探っていった。



「エルヴァさ〜ん、これは薬草ですか?」


「あらあら〜、クレアちゃん、これはアンコクゼリという毒草よ。これを飲んだらお腹を壊しちゃうわ」


「ゲッ!?危ない危ない…いろんな草があって難しいなぁ…」


「ドルチェちゃん、探してる薬草の特徴ってわからないのであるか?それがわかればみんなも探しやすくなるのである!」


「そっか!えっとね…葉の根本が青紫で、大きな木の陰に生えることが多いって!」


「それならきっとアオカゲミツバね。いろんな症状に効くけど、なかなか見つからないわよ…大丈夫かしら?」


「大丈夫ッス!自分、闘魂メラメラ燃えてるッスよ〜!!」


「あらあら、元気の良い人ね〜…私も頑張っちゃうわよ〜!」



その後も皆が捜索に尽力するものの、薬草に精通したエルヴァの手助けを受けてもアオカゲミツバは簡単には見つからない。一行は先の見えぬ地道な作業に次第に疲労していった。



「うむぅ…なかなか骨の折れる仕事じゃのう…足が痛くなってきたわい…」


「確かに疲れてきましたね…では、そろそろお弁当にしましょうか」


「モニカ、それを待っていたのだ!お腹減ったのだ〜!」



待ちに待った弁当の時間が訪れ、一行は舌鼓を打つ。料理上手なカタリナとネイシアが愛情を込めて拵えた弁当は一行の空腹を満たし、活力を与えた。



「おおっ、美味い!こりゃ美味いねぇ、ミノリ!」


「うむ、見事…素材の味が活きた、絶妙な味付けである…」


「あらまあ、美味しいわ…火を通したお野菜の甘味がよく出てるわね〜」


「エルヴァさん、野菜も美味しいけど、このチキンも美味しいよ!食べてみて〜!」


「あ、あの…私、お肉はちょっと…ごめんなさいね…」


「遠慮しないで!ホントに美味しいよ!ほらほら、一口だけでもいいからさ!」


「あっ、ドルチェさん!エルヴァに肉類は…!」


「ちょっと…や、やめて…って言ってんだろうがああぁぁ!!このウスラボケッ!!」


「ひいっ!?エ、エルヴァさん…!?」



ドルチェに鶏肉を放り込まれて口にした刹那、エルヴァの目付きが鋭くなり、凶暴な人相に豹変する。ドルチェを罵る荒々しい口調はおよそ同一人物とは思えないほどの変わりようであり、一行は唖然呆然だ。



「テメェ!人がイヤだって言ってるのがわからねぇのか!?非常識じゃねぇのか!?あぁ!?」


「す、すみません…はい…以後気を付けます…」


「これは驚いたでごわす…アムール殿、どうなってるでごわすか?」


「はい、元来エルヴァは菜食主義者なのですが、何故か動物性のタンパク質を口にすると暴走してしまうんです。先に言うべきでしたね…すみません…」


「に、二重人格というやつか…事象として聞いたことはあったが、実際の事例は初めて見たな。エルヴァの行動パターンを記録して、詳しく分析してみるとするか──」


「ゼータ、いちいち真面目に分析してたら疲れるぜ…それにしてもすごい変わりっぷりだな…」


「…ハッ!わ、私はいったい何をしてたのかしら…?」


「エルヴァ…憶えてないのですか…?」


「そうなの…どうしてなのかわかんないけど…私、お肉やお魚を食べると記憶が飛んでしまうのよ…困っちゃうわ…」


「そうですか…た、大変ですね…心中お察し致します…」


「ふう…お腹いっぱいになったね!さあ、また頑張ろ〜!」



一悶着あったものの、アオカゲミツバを捜す士気は再び高まった。意外な“裏の顔”を持つ山羊座のエルヴァを加えた一行は更に鬱蒼と木々が生い茂る森の奥へと踏み込んでいった。




To Be Continued…

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