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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter5:彩りの義勇軍篇
85/330

第85話『Frutta Guerrierota』

シリーズ第85話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

闇夜の皇女ビアリーとその臣下である毒の戦士達の奮戦により邪教戦士ローザを退けた一行。魔族七英雄ベガの配下ディアボロ7人衆ラストの助言を受け、リモーネ率いる巨大傭兵団を迎え撃つべく、南部のフルウム国へと赴こうとしていた。



「とりあえず、ワシらは反逆者扱いからは解放されたと考えていいんかのう?」


「ああ、そう考えてくれて構わないよ。アヌビスがテラコッタ領を沈静化させてくれたから、熱りもすぐに冷めるだろうね」


「アヌビス、貴女の力であたくし達の運命を切り拓いてくれたのね…素敵よ♪」


「はっ、ビアリー様にお褒めいただき、身に余る光栄に御座います…」


「ラストさん、優しい人だったね♪わたし、ラストさんとお友達になりたいな!」


「コレット、あまり情けをかけるな。奴も敵対勢力の1人、いずれは戦うことになってしまう…そのときに要らぬ悲しみをお前に負わせたくはない」


「そっか…ゼータ、ごめんね…」


「いや、謝る必要はない。お前の優しさと素直さは何物にも替えがたい宝物だ。その澄んだ心はずっと大切にしていてほしい。私は今のコレットが大好きだ」


「うん…ありがと♪わたしもゼータがだ〜い好きだよ!」


(コレット…私はお前を守り通してみせる…お前の綺麗な心を、お前の彩りを…)



ゼータはコレットの純粋な心に惹かれ、守り抜く決意と共に暖かな想いを募らせていく。敵に対して向ける刃のような鋭い視線とは別人のような優しい眼差しをコレットに向けていた。



「さて…傭兵団の動向が気がかりだけど、ベガ達も見過ごせないわ…いずれにせよ、まずは体勢を整える必要があるわね」


「そうね、イレーヌ。とにかく今はフルウム国に向かいましょう」


「ああ、僕達には為すべきことが山とある。立ち止まらずに進むだけさ!」



広大なバーント平原を南へ南へと渡っていき、フルウム国へと到着した。ブルーノ国から跨がるバーント平原の南部を有し、豊かな土地と自然に恵まれた国である。穏やかな空気が包んでいたが、一行はそれに浸る気にはなれなかった。



「宿は街の方に行かなアカンみたいや。ちょっと気乗りせぇへんなぁ…」


「そうですわね…隣のブルーノ国であんなことがあったばかり…わたくし達に対する風当たりは強いかもしれませんわ」


「そうね…ローザの残党兵が潜んでいるかもしれない。念のため用心しておきましょう」



一行は緊張を保ったまま、宿がある都市部に繰り出す。が、緊張の糸は一瞬にして断ち切られる。ブルーノ国と国境を接している隣国同士であるにも関わらず、反逆者騒ぎなどどこ吹く風とばかりに穏やかであり、一行に友好的に接してくる。ブルーノ国にて反逆者の汚名に甘んじ、緊迫していた一行にとってはやや拍子抜けというほどの歓迎ぶりであった。



「毎度あり〜!お嬢ちゃん、良い旅を!」


「ほい、買い出し完了や!バッチリ安く買えたで〜♪」


「商店街の人、あたし達にすごく気さくに話してくれたよ!平和なところだよね!」


「そうだな、クレア。ラストはこれを見越してフルウム国に行くように言ってくれたのかな?敵なのに俺達を助けてくれるなんて…変な気分だぜ」



物資の補給を済ませ、無事に宿に到着した。拒むことなく出迎える暖かな温もりは久しく宿で休んでいなかった一行の心を安堵させる。広々とした解放感のある宿舎の壁には手書きの依頼書が何枚も貼られていた。



「これは…魔物退治、護衛、物資輸送…いろんな仕事が記されていますね」


「嬢ちゃん、これに興味があるのかい?ここにはフルウム国各地から依頼が入るんだ。やるのはほとんど傭兵だけど、やる気さえあれば誰でも構わないよ!」


「よし、買い物したばかりだし、軍資金稼ぎをしておこうじゃないのさ!フルウム国に長くお世話になるだろうし、これだけの人数になりゃ金もかかるだろう?」


「そうですね。では、どれにしましょうか…」


「たくさんあって目移りしちゃうね…1つずつコツコツと頑張ろ♪」


「そうだな、姉貴。それなら最初は近場がいいんじゃないか?」


「そうですね…では、雑木林の魔物退治をやらせてください」


「おう、ありがとよ!じゃあ、この用紙に代表者さんの署名よろしく!」


「はい、では私が…よろしくお願いします」


「はいよ、代表者はモニカ・リオーネさんだね…嬢ちゃん、こ〜んな大勢のリーダーやるなんて、若いのにたいしたもんだよ!」


「そうなんです。モニカさんはいつも私達みんなの中心にいてくれて、頼りになる人です!」


「ケイトさんの言う通りですね。モニカさんは我らを見守ってくださる天のように、強い意思で私達を導いてくださる御方です…」


「ハハハ!仲間達からもお墨付きってわけか!それならこの依頼は朝飯前かもな!」


(ケイト、ネイシア…私が、リーダー…マリーも私のことを“大将”と呼んでいた。私にこの一団を束ねる存在たる資格があるのでしょうか…?)



宿に併設された食堂に集まり、穏やかに夕食を摂る。一際目立ち、一際賑やかな一行のテーブルに1人の少女が駆け寄ってきた。鮮やかな黄色の長い髪をポニーテールに結い、黄色と白を基調とした服を着ている。初対面とは思えないほどに友好的に接してきた少女の左手にはバナナイエローの紋様が印されていた。



「ねえねえ、貴女がモニカ・リオーネ?」


「は、はい…私がモニカ・リオーネですが…どなた様でしょうか?」


「あたしはドルチェ。この国の治安を守る自警団やってます!よろしくです♪」


「貴女にも…祝福の証…!」


「そうなんだ。あたしの仲間も全員この印があるんだよ!」


「ぜ、全員ですって!?精霊の刻印を持った人が何人いるの!?」


「え?あ、あの…あたし含めて9人しかいないんだけど…」


「十分だよ!しかも自警団なら手練れ揃いだね!」


「エレンの言う通りッス!どうか自分らに力を貸してほしいッス〜!!」


「ええっ!?そ、そんなにたくさんいるのにまだ必要なの!?貴女達、いったい何者なの…?」


「まあ、無理もないね。僕が説明しよう。実は──」



数多の絆で繋がる一行は1つの義勇軍と言っても差し支えないほどに膨れ上がっていた。一子相伝の剣技を磨く剣士に始まり、帝国皇女、格闘家、騎士、機械少女、国際警察、ごく普通の少女、果ては賊に至るまで入り乱れ、総勢46人もの大所帯でありながら尚も仲間を求める様相にドルチェが怪訝な表情を見せる。甘黄の戦士が眉を潜めるや否や、アンジュが事情を説明した。世界の平和を脅かす魔の脅威や手練れが世界中から集う巨大傭兵団が迫っていることをつぶさに、そして真摯に伝えた。すると次第にドルチェの表情が和らぎ、友好に彩られていった。



「そっか…わかった。そっちの方が楽しそうだし、貴女達に協力するね!」


「いいのかい?先ほどまで僕達を訝しがっていたけど…」


「うん、巨大な傭兵団っていうのも見てみたいし、自分達の力を試す良い機会だもん!魔物退治も出来るし、良いことずくめだよ!」


「ドルチェ…ありがとうございます!」



翌朝、一行はドルチェと宿の前で待ち合わせる。仲間らしき人物を引き連れ、爽やかな笑顔で駆け寄ってきた。



「やっほ〜!連れてきたよ♪あたしの仲間、アーマーナイトのサンディア、ウォーリアーのヴァイン、ヒーラーのペルシカ!よろしく!」


「へぇ、ドルチェが言ってた通りの大所帯だね!こりゃ楽しそうだ!よろしく頼むよ!」


「おお…小生も些か血が騒ぐでごわす…何卒、よろしゅうでごわす…」


「あ、あの…ペルシカです。不束者ですが、よろしくお願いします…」



深緑と赤を基調とした厚い鎧に身を包んだアーマーナイトのサンディア、筋骨隆々の長身に紫の鎧を身に纏うウォーリアーのヴァイン、可愛らしいピンクのワンピースを着たヒーラーのペルシカが順々に挨拶を交わしていく。3人の左手にはウォーターメロンレッド、グレープパープル、ピーチピンクの紋様がそれぞれ瑞々しい色彩を煌めかせていた。



「あれ?4人だけなのである。他は留守なのであるか?」


「ああ、他の5人は別の依頼に出掛けてるんだ。後で合流するって」


「さて、出発しよっか!頑張ろ〜!」



ドルチェ、サンディア、ヴァイン、ペルシカを加えた一行は依頼書に記された魔物の雑木林へと向かう。新たな彩りを加え、50人となった一行にドルチェ達は感嘆しきりであった。



「こ、こんなにたくさん仲間がいてくださると心強いです…!」


「うむ。小生、これほどの大所帯は初めてでごわす…血沸き肉躍るでごわす!」


「そういえば…ドルチェ、何故私の名前を知っていたのですか…?」


「ああ、実は宿の主人があたしのお父ちゃんなんだ。で、依頼の受付の書類を覗き見しちゃったんだ…ゴメンね〜」


「そうだったのですか…では、私達はドルチェにお世話になっていたということですね…」


「ああ、いいっていいって!そんな細かいこと気にしないでよ!気楽に仲良く楽しくいこう!」


「ハハッ!あんたとは気が合いそうだねぇ!あたいらで力合わせて、魔物なんてチャチャッと片付けてやろうじゃないのさ!」


「オッケー!あたし達だって負けないよ〜!イェ〜イ!!」


「フッ、はしゃぎ過ぎだ…まあ、悪くはないな」



ドルチェ達が打ち解けてきた頃、一行は目的地の雑木林に到着した。人の気配がない静かな林の中には微かに邪の薫りが漂っていった。



「確かに邪気を感じるわ…この辺りに魔物がいるみたいね」


「ん、足音がする…いきなりお出ましみたいだぜ」


「うん…じゃあ、まずはあたしがやるね!」



薄紫の毛皮を身に纏った猪のような姿の魔物が群れを成して迫ってきた。クレアが先陣を切り、ライフルの引き金を引く。銃声と共に銀色の閃光が駆け抜け、群れの1体を射抜いた。



「よ〜し、いっちょあがり!ガンガンいこう!」


「ふむ、クレアは猟銃使いでごわすか…では、小生が前に出るでごわす!援護を頼むでごわす!」


「ヴァイン、抜け駆けはさせないよ!やろうか!」


「ペルシカ、治療をお願いね!よし、行っくよ〜!」


「あっ…は、はい!気を付けてくださいね〜!」



治癒の杖を携えたペルシカが見守る中、ニューフェイスの3人が群れに飛び込む。使い込まれた剣で素早く斬り込んでいくドルチェ、強固な鎧で突進を受け止めながら槍で迎え撃つサンディア、身の丈ほどもある巨大な斧を振るって怪力を見せ付けるヴァイン──3人の勇猛な戦いは一行の闘志にも火を点けていった。



「へぇ、なかなかの手練れだねぇ…よっしゃ、あたいらもやってやろうじゃないのさ!」


「おう、自分らも負けてられないッス!突撃ッス〜!!」


「イェイ!魔物なんてブッ飛ばしてやろうじゃん!」



ドルチェ達に負けじとモニカ達も次々と戦列に加わる。数多の色が勝利への道を紡ぎ合い、鮮やかな連係へと昇華していった。



「シャドウバレット!」


「リタ…すまぬ、礼を言うでごわす」


「カシブさん…無理しないでください!ファーストエイド!」


「おお…ペルシカちゃん、ありがとうなのである♪」


「バグズバンプス!…ドルチェさん、大丈夫ですか…?」


「リデル、ありがと!強いんだね〜!」



一行が優勢に立つ最中、巨大な猪の魔物が地鳴りを起こしながら現れる。その様相は明らかに荒れており、同胞を討たれたことへの怒りに震えていた。



「デ、デカい…!たぶんこの魔物達の親じゃないかな?」


「任せて、エレン。これくらい私が…って、うわあぁッ!?」


「サンディア!ヤ、ヤバいかも…どうしよう…」


「よし、小生が食い止めるでごわす!ぬぅん!ここは通さんでごわす!」


「ワシもやるぞい!土俵際の粘りでなんとかしたるわ!」


「アタシも手ぇ貸すよ!蛮族の底力を見てな!」



サンディアが押し退けられるほどの猛烈な突進を見舞う魔物の長をヴァイン、ステラ、ルーヴの3人で組み止める。力自慢の3人が束になるが、次第に押し込まれ、背後には余裕がない状況に追い込まれていった。



「ぬうぅ…凄まじい力でごわす!」


「このままじゃ樹にぶつかっちまう…クソッ!」


「グッ…しかし、ここはワシらがどうにかせんと──」



グサッ!



窮地に立たされた刹那、魔物の頭部に両刃の短刀が突き刺さる。巨大な魔物はたちどころに気を失い、地響きと共に倒れ込んだ。魔物が姿を消すと、刃の飛んできた位置に潜んでいた影が木々を飛び回り、ドルチェの前に降り立った。



「間に合ったか…まあ、これだけ大きければ目を瞑っていても当てられたな」


「ミノリ!美味しい場面を持っていったね〜!」


「ドルチェ…皆も無事で何より」



ミノリと呼ばれる女性はドルチェの仲間らしいが、装束で顔が隠れており、瞳には鋭い眼光が見え隠れしている。黒に近い茶色の装束に身を包んでいる左手には栗色の紋様が印されていた。



「精霊の刻印…貴女も私達と同じく精霊に導かれし者なのね…」


「うむ、我はミノリ。フルウムの地の自警団の忍の者だ」


「シノビ、ですか…それはどういう…?」


「ああ、ミノリは東方から来てくれたんだ。シノビは東方では戦いの他にもいろんな仕事をするんだよね!」


「応。しかし、我は未だ修行の身、仲間と共に任務と鍛練に励んでおる」


「そうですか…私はモニカ・リオーネ。共に切磋琢磨していきましょう。ミノリ、よろしくお願いします!」


「承知。モニカ殿、お頼み申す」



新たな絆の力を受け、また1つ魔を退けた。新たな瑞々しい色を加え、更に彩り鮮やかになった一行は拠点となるドルチェの宿へと戻っていった。




To Be Continued…

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