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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter5:彩りの義勇軍篇
83/330

第83話『幽玄の凶皇』

シリーズ第83話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

野営地に襲来した蔦の魔物を狂える毒氣の猛襲と冷たい血紅色の闘気で退けた一行。しかし、勝ちはしたものの、仇為す者を討つべく荒ぶる魔の血を身に宿すアンブラに対し、ゼータの胸中には懐疑心が芽生えていた。



「さて、もうすぐマホガニー領だね。気合い入れるよ、アンブラ!」


「……」


「フン、どうも気に入らないな。コレットとリデルを助けることなく戦うことだけに傾倒するとは…」


「…悪いね。アンブラも悪気はないから、そんな不景気な顔しないでくれよ…」


「ゼータ…お願い、アンブラさんとケンカしないで。お友達なんだから仲良くしようよ…」


「ポワゾン、コレット、すまん…出来る限り努力はしよう」


「さて、そろそろ敵の本拠地が近いのである。頑張るのである!」



一行は遂にマホガニー領へと踏み入る。縦横に広がるバーント平原の西部に荒野や山岳地帯が入り交じった独特の地形が特色である。目的地であるガルセク渓谷が近付くと同時に邪の巣窟が迫る中、皆の表情にも緊張が滲み始めていた。



「情報によると、この辺りにローザが潜んでいるわ。しかし、どこにいるかまではわからない…」


「では、二手に別れて本拠地を探ろう。昨夜のように魔物が夜に活性化するなら、なるべく早く突き止めた方が良いだろうからね」


「それなら邪気を探ることで見つけられると思うわ。私とカシブさんで探査しましょう」


「了解なのである♪皆で協力してローザをやっつけるのである!」


「よ〜し、いよいよ悪者退治だね!頑張るぞ〜!」


「そうだな、ビアー!いよいよ正念場なのだ!邪教戦士なんてブチのめしてやるのだ!」


「ハッ、気合い入ってるねぇ…それじゃさっさとグループを決めようじゃないのさ!」


「ほいほい〜、クジ引きするで!張り切って行こか!」



一行は二手に別れ、邪教戦士ローザが潜むという拠点の探査を開始する。自らの正義を示す戦いを間近に控え、反逆者の汚名を晴らすべく1人1人が決意を新たにしていた。



「いよいよローザと決戦ですね…世の平穏を脅かす者達に私達の絆の力を見せる時です!」


「うん、もうすぐ反逆者なんて汚名とおさらば出来るね!あのオカマ、消し炭にしてやる!」


「ああ、みんなでバリバリ行こうじゃん!ブッ飛ばしてやろう!」


「うおぉ〜ッ!燃えてきたッス!正義の拳で悪を討つッス〜!」


「フフフッ、みんなやる気満々なのである。リーベちゃん、一緒に頑張るのである!」


「ええ、私達の愛と勇気で希望の光を灯しに参りましょう!私達なら出来ますわ♪」



血気盛んなモニカ班に対し、フェリーナ班は慎重な姿勢を見せている。道を見出だした先に待ち受ける邪の脅威、囚われた彩りの騎士達にに思いを馳せていた。



「ブライアさんの仲間は無事か気掛かりじゃのう…早く助けに行かんとなあ」


「ヴィオの動向も気になるわね。いずれにせよ、ローザに勝たなければ道は開けない…気を引き締めて挑みましょう」


「ええ、運命を切り拓くのはあたくし達自身です。あたくしの家臣達も心を1つに、邪を討つ力となってくれますわ」


「仰る通りにございます。我等が身命はビアリー様と共に…」


「そうだね、リーダー。ウチだってビアリー様に超感謝してるもん。ね、ドゥイヤオ!」


「おう、ビアリー様はわっちらの大切な御主人様だがや…主人のため、正義のために戦うがや!」



一方、魔族七英雄ベガの居城。玉座に鎮座するベガと共にテラコッタ・ソシアルナイツが妖しげなを醸し出す中、ディアボロ7人衆ラストが焦りを滲ませた表情で駆け付けた。



「ベガ様、シエナ領の配下の魔物が倒され、あの娘達はマホガニー領に入りました。間もなくローザの潜伏地点に到達する見込みです。いかが致しましょう?」


「何、慌てることはないさ。彼でも多少の足止めくらいは出来るだろう」


「しかし…お言葉ですが、アルニラム様とカストル様を討った彼女達の力は私達の想像を遥かに超えるものと思われます。こんなに悠長に構えて大丈夫でしょうか…?」


「ラスト…流石は私の家臣だ。確かにそれも一理ある。だが、私達には力を貸してくれる者がこんなにもたくさんいてくれる。そうだろう?我が花園を彩る美しい花達よ…」


「はい…ベガ様の仰せのままに…」


「ああ…ラスト様…どうか私に貴方の愛をお与えください…」


「ミュゲ…なんと可憐で美しい…ラスト、まだ君の手を煩わせるまでもない。もう少し泳がせておきなさい。さあ、君の愛を求めるエーデルを愛でてやりなさい」


「…畏まりました」



暫くしてフェリーナが禍々しい力を察したという荒廃した寺院の前に一行は集結する。傍目には人の気配が無い古びた寺院だが、精霊の世界に触れた涼緑の狩人の瞳には魔の彩りである黒紫が確かに映っていた。



「この寺院から強い邪気を感じたわ。間違いなくここに潜んでいるはずよ」


「いよいよだな…俺達の意思を、俺達の信念を見せてやるぜ!」


「なかなか重そうな扉ッスね…ステラ、自分らの出番ッス!」


「任せろ!行くぞぉい!」


『せーの!!』



テリーとステラが力尽くで抉じ開ける。錆び付いた扉が軋みながら開き、邪の巣窟が一行を出迎える。辺り一面に立ち込める黒紫の瘴気はフェリーナが眉を潜めるほど強く、同時にカシブも苦悶に顔を歪める。噎せ返るほどに回廊に充ち満ちた妖しい瘴気は一行の足を鈍らせた。



「これは酷いのである…まさしくここは悪の温床なのである…」


「カシブさんの言う通りね。立っているだけなのに気分が悪くなってきたわ…」


「僕達が長居すべき場所ではないということだね…息苦しいな──」


「待て!何者だ!」


「貴様らは…ローザ様の命を狙う反逆者ども!覚悟しろ!!」


「ここでは分が悪いわ…広いところに移動しましょう!」


「そうだね、エリス…急いで逃げないと…うわわわっ!?」



ガタンッ!



「クレア、大丈夫!?ケガはない!?」


「ごめんね、カタリナ…あたしは大丈夫だよ…って、あれ…?」



クレアが転んだ拍子に埃まみれの壁に隠れていた扉が開く。黒紫の気が寺院の本堂──本来なら祀るべき神の像が鎮座しているであろう位置に邪教戦士ローザが兵を従えて待ち構えていた。



「あ〜ら、誰かと思えば薄汚い反逆者さんじゃない…歓迎してあげる♪」


「邪教戦士ローザ!貴方の悪が蔓延るのもここまでです!覚悟なさい!!」


「もう…相変わらず騒がしいわね…目障りなハエは本気で叩き潰すまでよ!」


「チッ…今度は何の術を使うってンだい!?」


「覚悟しなさ〜い…この力で1人残らず地獄逝きよ!オホホホオォォッ!!」


「邪気が強くなった!?ヤバい気がするのである…」


「こ、これは…!?いったい何が起こってるッスか!?」



黒紫の魔術書を携えたローザは魔の力に身を委ね、姿を変えた。肌が薄紫に染まり、魔の彩りである黒紫の薔薇を身に纏っている。妖しい狂気に満ちた歪な容貌は既に人間であることを放棄しており、魂さえも魔族に売り渡したことが容易に窺えた。



「さあ、お楽しみはこれからよ…おバカな逆賊もろとも地獄に堕としてあげるわ!オホホホ!ヒョホホホホ!!」


「ローザ…貴方はもう私の知る主君ではない…テラコッタの騎士の名に賭け、ここで貴方を倒す!」


「みんな、行きましょう。私達の正義のため、邪を祓う時です!」



ブライアの固い決意に背を押され、一行は己の正義を貫くための戦いに飛び込んでいく。目の前に立ちはだかる邪の脅威を討つべく、反逆者と後ろ指を差されながら世の片隅で怯え過ごす日々に終止符を打つべく、左手の甲に印された彩りの力を躊躇うことなく惜しみ無く振るう。ローザも兵を従え、狂乱しながら一行を迎え撃った。



「ブライトエッジ!」


「バグズバンプス!」


「タキシンエッジ!」


「ぐわあっ!つ、強い…!」


「怯むな!ローザ様に指一本触れさせないぞ!」


「ディバインソード!」


「ソニックブーム!」


「何ッ!?馬鹿なぁッ!」



モニカ達一行の大軍勢が兵を率いるローザと激しくぶつかり合う中、ローザ軍の兵の中には少なからず戦意を失う者もいた。自らが遣える主君が人であることを捨て、魔物に成り果てて敵を喰らい尽くそうとしている──もう自分の知る主君ではない──ブライアの言葉に心を揺らし、武器を携え敵に立ち向かう気力を失っていった。



「まさか…ローザ様が化け物だったなんて…」


「あら…どうしたの?あなた、何をボーッとしているのかしら?」


「ローザ、様……」


「戦えないならアタシが戦わせてあげる…ほら、“捨て駒”はアタシの力となって、思う存分戦いなさい!」


「あ…ああ…う、うわあああぁぁッ!!」



ローザは兵を荊の蔓で絡め取り、自らの一部として取り込んでしまった。戦意を削がれた兵を“捨て駒”と見限り、自身の糧とした。狂気に囚われた支配者の凶行に一行は言葉を失った。



「そんな…自軍の兵を切り捨てるなんて!最低の策ですわ!!」


「酷い…なんて醜いの!?大切な家臣の命を弄ぶなんて…許しません!闇に堕ちなさい!!」


「あ〜ら、そんなに怒っちゃ美人が台無しよ〜?アタシの薔薇で綺麗に飾ってあげるから、安らかに眠りなさ〜い♪」



暴君というべきローザの凶行がビアリーの怒りに火を点けた。家臣を捨て駒として亡き者とする身勝手極まりない振る舞いに我慢がならなかった。自身の信念を踏みにじり、正義を汚す邪の薔薇に単騎で飛び込んでいった。



「ダークスフィア!」


「あらあら…なかなか強いのね。綺麗な薔薇にはトゲが付き物ということかしら…」


「フン、貴方のような身も心も醜い者、視界に入れるだけで不快だわ。すぐにひれ伏しなさい!」


「ンまあ!随分な言い方ね!もう美人だからって手加減してあげないんだから〜!」


「ビアリー様、援護するのだ!」


「そうそう!みんなで一緒ならすぐに──」


「なりません!貴女達は下がりなさい!!」


「ビアリー様…どうして…?」


「イオス…今は我慢するのだ。ビアリー様のご意志を尊重するのだ…」


「テメリオ…うん、わかった…ビアリー様、頑張れ〜!」



援護に回ろうとしていたテメリオとイオスを強い口調で突っぱねる。トゲを持ったように聞こえる言葉もビアリーにとって家族同然である家臣の身を案じる強き意思に裏打ちされた優しさによるものだった。



「ムーンライトバインド!」


「あら〜、そんなものなの?縛るならもっとキツく激しく…ね?」



ローザは自身を縛り付けた濃紫の鎖をもろともせず、魔の蔓で闇の鎖を砕く。形勢が逆転し、ビアリーはトゲだらけの蔓に囚われた。



「クッ…そんな…!!」


「これで貴女はアタシの一部よ。貴女の強さも美貌も色香も、全部アタシが受け継いであげるわ♪」


「そうはさせるか!ビアリー様…!!」


「ポワゾン姉ちゃん!?何するつもりなん!?」


「なるほど…私達の力はビアリー様と同じルーツであるとフェリーナさんから伺っています。つまり…」


「あっしらの力を使えば…勝てるかもしれないぞなもし!」


「よし、リーダーに続け!ウチらがビアリー様をお救いするんだ!!」


「グルル…行クゾ!」


『ウイィッス!!』



ビアリーが邪の薔薇の魔手に囚われてしまった。このままでは闇の皇女ビアリーはローザの一部となり、彼女の運命は虚無と消え潰えてしまう。主君の危地にポワゾンは何を決断したのか?配下である毒の彩り達は主君ビアリーが囚われる邪の薔薇へと臆せず駆け出していった。




To Be Continued…

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