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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter5:彩りの義勇軍篇
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第81話『毒手の魔戦士』

シリーズ第81話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ♪

ブルーノ国シエナ領にて邪に心を染めたローザに反旗を翻した元テラコッタ・ソシアルナイツの逆賊ブライアを加え、正義を貫く道を歩み出した一行。追っ手や魔物から逃げ延びるように足早にマホガニー領へと向かっていた。



「シエナ領って広いな〜…歩けど歩けど平原じゃん…」


「ええ、シエナ領はブルーノ国の交通の中継地点だし、バーント平原は国土の4割ほどを占めるわ…ガルセク渓谷のある山間部と並んでブルーノの大自然を体現する場所なのよ」


「それにしてもすごい広さッスね…いくらでもランニング出来そうッス!」



ブルーノ国一帯に青々と広がるバーント平原を横切り、隣のマホガニー領へと駆けていく。反逆者という不本意なレッテルは簡単には剥がれず、悪の汚名は一行の心を急き立てていく。謂れ無き汚名を濯ぐためには魔と邪を討って自分達の正義を証明するしかない。信念を貫き、祝福の彩りの導くままに我武者羅に突き進んでいった。



「魔族を追っていたが、まさか逆に追われることになるとはな…エレン、また協力して敵を焼き払うぞ」


「そうだね、ゼータ。反逆者扱いで窮屈な毎日なんてまっぴら御免だよ!早くローザの奴を懲らしめてやらないと──」


「強い邪気を感じるわ…みんな、来るわよ!」


「うん、どんどん近付いて来るのである…かなり大勢の団体さんなのである!」



フェリーナとカシブの察した通りに辺りを邪の空気が包み込み、魔物が次々と地から這い出てくる。黒紫の肌の禍々しい魔物が引き連れてきたかのように一帯にドス黒い瘴気が立ち込め、息苦しさを感じるほどにブルーノの大気を蝕んでいった。



「けっこうな数じゃのう。こりゃ骨が折れそうじゃわい…」


「酷い瘴気です…みなさん、気を付けて…」


「アムール、ありがとう。私達は負けません!みんな、私達の道を拓くため、戦いましょう!!」



モニカの号令を受け、彩りの戦士達が得物を手にして臨戦態勢をとる。行く手を阻む魔物の軍勢に対し、毅然とした意思を胸の内に燃やしながら立ち向かっていった。



「ブライトエッジ!」


「ダークスフィア!」


「よし、モニカとビアリーに続くぞ!標的は多数、気を緩めるな!」



皆が迫る魔の脅威に立ち向かう。小さき緑の戦士2人も勇気を振り絞り、戦いに飛び込んでいった。



「スパイダーネット!」


「チャ〜ンス♪シードポップガン!」


「リデル、コレット…見事な連係ね。見た目は普通の女の子なのに、さすがに素人ではない…強いのね」


「エヘヘ、ブライアさんに褒められた〜♪やったね、リデルちゃん!」


「はい…ありがとうございます♪」


「フフッ、では次は私がテラコッタの剣技をお見せするわ!」



一行は各々の彩りを紡ぎ合い、魔物達を駆逐していく。が、次から次へと押し寄せる黒紫の群れは途切れる様子は全くない。魔物の大軍勢は次第に皆を疲弊させていった。



「もう疲れてきた…いったい何匹いるの!?」


「これはちょっとキツいかも…いたた…」


「メリッサ、ヴァネッサ、無理しないで!アミィ、こっちに傷薬の補給をお願い!」


「ほいほい〜…なんとか持ちこたえてや…」



一方、魔族七英雄ベガの居城。テラコッタ・ソシアルナイツを自身の花園の彩りとして愛でていた。



「フフフ…君達はどんな花よりも美しい…」


「ベガ様、ローザから報告がありました。現在問題なく潜伏出来ており、あの娘達が到達する見込みもないそうです。あるいはあの娘達はもう既にローザの追っ手かベガ様の配下の手に堕ちたかと…」


「かもしれないな…彼女達の華やかなる美は過酷な地で育まれるのだろう…フフッ、私達の花園は運命に守られるのだな…」



そんなベガの推察は少なからず的中していた。一行は疲れ果てており、戦局は依然として苦しいままであった。



「倒しても倒してもキリがないぜ…どうしたら良いんだ!?」


「ビアリーさん、毒の彩りの笛でヴェレーノ・ノーヴェのみなさんを呼びましょう。少しでも頭数を増やさないと──」


「いいえ…それはなりません」


「そんな…どうして!?渋らないで手伝ってもらおうよ!」


「この業はあたくしが運命に従って背負い、あたくしが運命に従って清算せねばならない。そのためだけにあの娘達に要らぬ業を負わせたくはありませんわ」


「そんな綺麗事言ってる場合じゃないって!ほら、私だってルーヴを呼ぶから!」



自らの配下である毒の彩り達を喚ぶことを躊躇うビアリーを尻目にエレンは蛮族の角笛を吹き鳴らす。ものの数秒でルーヴが姿を現し、即座に戦列に加わった。が、1人が加勢したところで戦局は変わらず、魔物の大軍勢に押し込まれている。斧を手に暴れるルーヴの表情にも焦躁の色が滲み出ていた。



「チッ、なんて数だ…蛮族の森にも魔物はいたけど、こんなにたくさんはいなかったよ…」


「私とネイシアで治癒術を使っても間に合わないかも…どうしよう…」


「傷薬の補給も間に合うか心配や…こんなん数の暴力やで〜!」



魔物達は鋭い爪と牙を剥き、統制のとれていない不規則なリズムで畳み掛ける。闘争本能に従うままの荒々しい応酬は一行の体力と気力をジワジワと削ぎ落としていき、窮地に追い込んでいった。



「ハァ…ハァ…このままじゃキリがないッス…」


「敵が多すぎます…どうしたら──」


「ヴェレーノ・ノーヴェ、参上!ってことで夜露死苦!!」


『ウイィッス!!』



眼前に広がる光景にビアリーは目を疑った。呼び笛を吹いていないにも関わらず毒の彩りの10人が集結していたのだ。ビアリーは不安そうな表情になり、慌てて詰め寄った。



「ビアリー様、私らも加勢するよ!」


「なんてことを…貴女達も反逆者の汚名を着ることになるのですよ!?」


「ケッ、不良だったあっしらに汚名の1つや2つなんてあって無いようなもんぞなもし!」


「そうそう!ウチらはどこまでだってビアリー様に着いていくよ!」


「…ありがとう…」


「ビアリー、感傷に浸ってる場合じゃないぜ。一気にカタをつけよう!」


「イェ〜イ!久しぶりにリタ様と一緒に戦える!リタ様〜♪私の王子様〜♪」


「イオスも張り切っとるなぁ!久しぶりに大暴れ出来そうだがや!」


「おっと、後でアザレア支部が助っ人を連れてくる予定だから、なるべく見せ場は残しておいてくんな!」


「す、助っ人、ですか…?わかりました。では、いきますよ!!」


『ウイィッス!!』



毒の彩り達も戦列に加わり、劣性の戦局が変わり始める。少しずつ魔物が減り始めた頃、“助っ人”を連れた2人が駆け付けた。



「ポワゾンの姉御、お疲れ様です!」


「助っ人さん連れてきたッスよ〜!これで勝ち間違いなしッスよ!」


「ゲゲッ!?ま、まさか…!」


「アンブラ、姐さん…!?」



アザレア支部のポソニャとペソシャに連れられ、助っ人として現れたのはアンブラと呼ばれる女性だった。が、その姿はかなり異様だ。顔は大きなガスマスクでほぼ隠され僅かに黒紫の頭髪が確認出来るのみであり、両手と両足にはチェーンに吊り下げられた錘が装着されている。マスク越しに怪しい呼吸音を鳴らす狂気の戦士の左手にはダスティパープルの紋様が印されているが、その全容を知る毒の彩り達は戦慄していた。



「リーダー…正気かい!?まさかアンブラ姐さんを引っ張り出してくるなんて…」


「ああ、なるべくならコイツを使いたくはなかったんだけど…やむを得ないだろ?」


「テメリオ、アンブラさんってそんなに凄い人なの?」


「うん、私も会うのは初めてなのだ…リーダー、スラッジ、ヤートと一緒にヴェレーノ・ノーヴェを結成した創設メンバーの1人なのだ。だけど…」


「アザレアとペーシュの国境付近の廃坑に封印していたんだよ…それなのに…!」


「テメリオ、イオス、そんなに怯えるな。フフフ…さて、獲物はたくさんいるよ…アンブラ、殺っちまいな!」


「オ゛オ゛オ゛オォォッ!」



アンブラはダスティパープルの彩りの力を暴走させるがままに魔物達を蹂躙していく。禍々しささえも感じさせる咆哮がガスマスク越しに木霊する。魔の黒紫に染まった毒手で引き裂き、自らを拘束する鎖や錘をも得物として獲物を打ち据える。封印を解かれた狂気の戦士にモニカ達も恐怖していた。



「グア゛ア゛ア゛ァァッ!」


「ああ…怖いです…」


「リーベちゃん、キミは私が守るのである。たとえこの身に代えても…」


「リーベ、カシブ、こんな場面でイチャイチャしないでよ…やれやれ…」


「それはともかく、なんだって仲間なのに封印してたっていうのさ?確かに危ない奴っぽいけど、仲間であることには変わりないだろ?」


「うん…アンブラ姐さんにはほんの少しだけ魔物の血が流れてるんだ…だいぶ薄くなってはいるみたいだけど、ああやって戦いの時は暴走するから危険なんだよ。それに──」


「く、苦しい…体が…重い…」


「ネイシア、大丈夫!?あたしは今のところ大丈夫だけど…どうなってるの!?」


「ケッ、もう来ちまった…アンブラ姐さんの毒は敵味方関係なく蝕むぞなもし。あっしらでも完全な抗体は無くて、どうにか暴走を抑えるのが精一杯ぞなもし…」


「そりゃ恐ろしいのう…諸刃の剣というわけじゃな…」


「そういえば、バラキエルはいないの!?超ヤバいって!」


「オトロヴァが連れてくるッス!たぶんもう少しだと思うんだけど…」


「“たぶん”じゃダメだよ!このままじゃビアリー様達がもたないって!!」


「これが…毒の精霊と魔の血の力…立つことも、出来ない、なん…て…」


「ダメです…もう…気が…遠、く…──」


「狂える毒氣よ、鎮まりたまえ!浄めよ、アンチドート!!」


「その声…バラキエルさん!!」



まさに九死に一生を得た。聖なる気が辺りを包み込み、一行を絶望の淵から救い出した。ダスティピンクの紋様を持つ赤紫の髪の神官姿の女性が充ち満ちていた瘴気を浄化し、自らの彩りで中和する。残り僅かとなった魔物さえも浄化し、殲滅していた。



「間に合いましたね…皆様、ご無事ですか?」


「ありがとうございます…貴女は命の恩人ですね…」


「畏れ入ります。私はバラキエル、毒の彩りの浄化を担っております。お見知り置きを」


「貴女がバラキエル…お話には伺っていましたが、大変に慈悲深い力なのですね…」


「フェトルの言う通り!マジ超デンジャラスって感じだったから助かった〜!」


「アンブラ、ポワゾン様が貴女の封印を解かれるご決断をされたと聞いて来てみれば…やはり力を暴走させましたね?」


「…バラキエル…」


「まあ、今回は間に合ったので良しとします。やはり私が着いていないと危険でなりませんね」


「なあ、この状況、ビアリー様が“反逆者”と仰ったが…大方敵にはめられて濡れ衣を着せられたってところだろう?」


「大正解!あんた達は察しが早くて助かるねぇ!」


「それならウチらだって戦う!濡れ衣を着せた奴をボコボコにしてやるんだから!」


「ビアリー様、協力させてください。お願いします!」


「ビアー、グィフト…ええ、貴女達の覚悟、見せてもらったわ。あたくしに異論はなくてよ」


「よ〜し、張り切っていくッス!全員マホガニー領まで突っ走るッスよ!」


「アンブラは私にお任せください。私の力があればいつでも浄化出来ますので」


「…ヨロ、シク…」



ビアリーの命を受けることなく自分達の意思で戦いに飛び込んだ毒の彩り、更にその一員である狂気のアンブラと慈しみのバラキエル──対を成す新たな毒の彩りを加えた一行は魔を退け、改めて歩を進める。目指すマホガニー領は少しずつ、確かに近付いていた。




To Be Continued…

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