第8話『疾風の狩人』
※この作品はpixivにて同時掲載しています。
シリーズ第8話目です。だいぶ久しぶりの投稿になってしまいましたが、これからまた投稿していこうと思います♪ごゆっくりお楽しみください!
アイビー国に程近いモエギ台地で“魔族七英雄の1人”と名乗るシリウスと対峙した一行はシリウスとの死闘で受けた傷で倒れてしまったモニカをシャルドネ侯国郊外、エルム村の小さな宿に運び込んだ。皆が代わる代わる、夜通し見守り続け、翌朝を迎えたところであった。
「ん…うう…ここは…?」
「モニカ!気がついたんだね!」
「ここはちょっと引き返したところにある宿屋だよ。モニカが急に倒れちゃって、すっげぇ驚いたんだからな!」
「よかった…アンタ、あれから丸一日眠り続けてたんだよ。どうなるかと思った…」
「モニカ、傷の具合はどう?すごく酷かったから…」
「大丈夫です。みんな…ありがとう…」
「さすがはモニカッス!不屈の心、不屈の魂の持ち主ッス〜!!」
モニカの傷も無事に回復し、一行は再びアイビー国を目指す。宿屋を後にしようとしたそのときであった。
「あんた達、待ちな!」
宿の前に立っていた女性が一行を呼び止める。健康的な小麦色の肌にワインレッドの髪が美しい。
「はい…なんでしょうか?」
「あんた達が来てから左手が疼いてしょうがないのさ。ほら…これに見覚えは?」
その左手はガーネットのような力強い深紅に輝いている。祝福の証だ。
「お…おい、待てよ!見覚えも何も…!」
「ウチらみ〜んなこの印持ってんで!ほれほれ〜♪」
一行は左手に印された祝福の証を見せる。旅を進めるほどに増していく彩りは更に煌めきを増していた。
「…!そうかい。もしかしたら、印同士が引き合っていたのかもしれないねえ…それにしても、なんだってこんな大勢で?」
「はい。この印は祝福の証といって、創造神の祝福を受けた者の印なのです。私達は祝福の使命を全うすべく、魔族討伐の旅をしているのです。」
「なるほどねえ…にわかには飲み込みにくい話だけど…まあ、堅ッ苦しいこたぁ抜き抜き!そっちの方が面白そうだし、あたいもあんた達に協力するよ!」
「ありがとうございます!私はモニカ・リオーネです。貴女は?」
「あたいはビクトリア・スコールズ。エンジ国スオウ市自衛団所属の兵士の端くれさ。よろしく頼むよ。」
ビクトリアを加えた一行は一路アイビー国を目指す。ビクトリアもその気さくで飾らない人柄の為かすぐに打ち解け、仲間達と楽しげに言葉を交わしていた。
「ねえねえ、ビクトリアって兵隊さんなんだよね?きっとすっごく強いんだね!」
「ん〜…コレットが思い描いてるのとは、ちょっと違うかもしれないねえ…」
「え…えっと…どうして、違うんですか…?」
「あたいらはあくまでも街の自警組織だし、援助してくれる国の財政もそれほど豊かじゃないからね。ああやって他国の村に赴いて用心棒の仕事でもやらなきゃすぐに傾いちまうのさ。」
「ふむ…兵士稼業も大変なもんじゃなぁ。生きにくい世になったのう…」
「まあ、世のため人のためなら苦じゃないさ。この旅だって結局はたくさんの人を救うことになるんだろう?腕の振るい甲斐があるってもんだね!」
「ハハハ…自警団とは言え兵士のビクトリアがいてくれたら心強いよな!頼りにしてるぜ!」
一行はアイビー国に到着した。その眼前に果てしない大草原が青々と広がる光景が飛び込んできた。
「わぁ〜…すご〜くおっきい草原だね…」
「うん、アイビー国は国土面積の7割が草原で占められているんだよ。こんなところをバイクで風を切ってブッ飛ばしたら気持ちいいんだろうな〜♪」
「えっ?エレンってバイク乗れんの!?いいなぁ〜…すごいROCKだなぁ…」
「うん…まあ、仕事で、ね。さあ、先に進むよ!穏やかな風を感じながら歩くのも一興だからね!」
一行がどこまでも続く草原を歩いていると遠くから獣の群れが迫ってきた。草原には視野を遮るものがほとんど存在せず、体毛のベージュの塊が迫り来る様相が肉眼で確認出来る。
「グウオオォッ!」
「よし、かかって来い!」
「あ、あの…トリッシュさん…やめた方が…いいと思います…」
「は!?なんでだよ、リデル!」
「この獣達は…魔物ではありません。だから…きっとわかり合えると思います。急に私達が草原に来て、ビックリして…怖がってる…だけだと思うんです…私に…任せてもらえますか?」
リデルは今にも飛び掛かって来そうな獣達の前に歩み寄った。左手の紋様が若草色の光を放ち、足下には若草色の魔方陣が浮かび上がっていた。
「ハニーサークル!」
蜂蜜色の柔らかな方陣が獣達を包み込んだ刹那、獣達は嘘のようにおとなしくなった。荒々しく剥き出しにしていた敵意は消え失せ、リデルになついているようにも見える。
「ほら…わかってくれました。よかった…フフッ♪舐めたらくすぐったいです…」
「へえ…リデルにはこんな力があるのかい。こいつは驚いたよ…」
「あっ…リデル、危ない!シャドウバレット!」
「グガアァアッ!」
リタがリデルの背後めがけ銃撃を見舞う。辺りに視線を移すと、リデルが宥めたものとは異なる黒い体色の獣が一行を取り囲んでいた。
「グルルル…グガウアァッ!」
「ぬぅ…今度は正真正銘、魔物のお出ましじゃのう!」
「そのようですね…みんな、いきましょう!」
一行は獣達を守るような陣形を取り、魔物達に対峙する。新たに加わったビクトリアも武器の長尺棒を猛々しく振るう。
「よっ!せいやっと!」
「グア!ガウアァッ!」
「オラァ!…あっ、リタ!そっち行ったぞ!」
「オッケー!任せろ!」
魔物達の狙いは獣達を己の血肉にすること─目の前の命を守る使命に突き動かされる彼女達は次々にその力を振るった。
「ファイアボール!」
「エレキテルショット!」
「グギャアアッ!」
「ぬりゃあ!龍鱗砕きじゃい!」
「うらぁ!熱き血潮のブローッス〜!」
「グガガァァッ!」
アミィの紋様が鮮やかなマゼンタに、コレットの紋様が生き生きとした緑色に、クレアの紋様が煌めく銀色に彩られた。祝福の証─左手の紋様に託された力を目覚めさせる。
「行くで!スターライトレイン!」
「負けないもん!リーフエッジ!」
「これならどう?メタルスピナー!」
「グウアァアァッ!!」
一行は有利に戦いを展開するが、モニカの動きが鈍い。剣を振るう腕も足取りも重く、魔物の素早い動きに翻弄されていた。
「グルオオォッ!」
(クッ…しまった…!)
「フロストザッパー!」
「ガガァアァッ!!」
「カタリナ…ありがとうございます。」
「モニカ、無理しちゃダメだよ?あなたは1人じゃない。私達がいるんだからね…ファーストエイド♪」
(カタリナの治癒術…柔らかで優しくて、暖かくて…この優しさが─)
「グウオアァアッ!」
モニカが少し集中を切らした瞬間、一匹の魔物が獣達の群れに飛び込んできた。禍々しい牙を剥き、今にも獣達を喰らおうとしている。
(しまった…間に合わない…!)
バシュッ!
「ガアァギァァ…!」
何処からともなく眼にも止まらぬ速さの矢が放たれ、魔物の心臓を射抜いた。僅かに残った魔物達は恐れおののき、足早に逃げ去っていった。矢が放たれた方向へ視線を移すと、1人の少女が駆けてきた。やや肌の露出が多い民族衣装に身を包み、ミントグリーンの髪を無造作に結っている。その凛とした力強い眼差しは意思の強そうな印象だ。
「…大丈夫?」
「あ…はい。ありがとうございます。」
「いいえ…こちらこそ、草原の獣達を救ってくれてありがとう。」
少女は獣達を逃がす。獣達は夕焼けでオレンジ色に染まった草原を遠くに駆けて行った。
「きっと…貴女達が…」
「ん…ウチらが…なんや…って、あっ…!」
少女は凛々しい表情を崩さず、無言で左手を向ける。その左手にはミントグリーンに煌めく祝福の証が刻まれていた。
「祝福の証…そうです。私達も皆、持っていますよ。私達は祝福の使命を果たす旅をしているのです。」
「やっぱり…この草原を護る風の精霊シルフが私を貴女達のところへ呼び寄せたんだわ。」
「ん〜…なんだかよくわからないけど…とりあえず、あんたもあたいらの仲間ってことだね?」
「ええ、そういうことですね。私達は“祝福の証”という名の樹に息づく実り…」
「ふえ?えっと…わ、私達って…フルーツなの!?」
「いや、そういうことじゃないだろコレット…比喩を鵜呑みにするなって…」
「フフッ、楽しい娘ね…きっと素敵な旅になるわ。私はフェリーナ・グリューネ。よろしく。」
「私はモニカ・リオーネです。よろしく、フェリーナ。」
「ええ、よろしく…だいぶ日が傾いてきたわ。私達の集落でおもてなしするから、着いてきて!」
エルム村でビクトリア、アイビー国大草原でフェリーナを仲間に加えた一行。祝福の証の煌めきは更に彩りを増していく。魔物の手からこの地に息づく命を救ったモニカ達はフェリーナの集落へと招かれることとなった。
To Be Continued…




