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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter5:彩りの義勇軍篇
75/330

第75話『Terracotta Social Knights』

シリーズ第75話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

ブルーノ国テラコッタ領の主ローザはあろうことか一行に敵対する邪教戦士の1人だった。実弟であるリールを地下の牢獄に捕え、下級騎士達さえも駆り出して一行を徹底的に蹂躙しに襲いかかる姿はまさに魔族に魂を売り渡した無慈悲な悪魔の遣いだ。しかし、一行は魔の脅威に臆することなく立ちはだかる彩りの騎士達に揺るぎない闘志を向ける。彩りの力──そして絆の力が少女達の原動力となっていた。宮廷の謁見の間の中央、モニカとマリーは彩りの力と共に剣を交えていた。



「モニカと言ったか…なかなかやるな。その剣術、敵とするには惜しい…」


「…貴女こそ。誇り高き騎士としてたゆまぬ精進を重ねたのですね。太刀筋を見れば解ります」


「フッ、これほど強き剣士のお眼鏡に叶って光栄だ。しかし、私の前に立つ選択だけは誤りだったな。大将である貴様を討てば勝ちは決まったも同然。チェックメイトだ!」


(大将…?私がこの一団の、大将…)



モニカの胸の内に“大将”という言葉が引っ掛かる中、ヴィオと対峙するのはコーヒー色の鎧の凶騎士ツィガレ。2人は向かい合うや否や一言も発せずに互いに素早い連撃を仕掛ける。寡黙で感情の発露も無い静かな狂気を纏う騎士の左手には煙草色の紋様が印されていた。



「…貴女、断影のヴィオ…」


「ほう…だから貴様はどうするつもりだ?」


「……殲滅する。任務再開」


「話が早いな。行くぞ!」



ステラが向かい合うのは朽葉色の紋様を持ち、橙色の鎧で身を固めた重騎士ガーベラ。先の戦いにてティファに膝をつかせる殊勲の勝利をあげた手練れだ。守りの要としても活躍するガーベラの鎧は他の者よりも重厚な造りであり、ちょっとやそっとでは傷1つ着かなそうだ。が、ステラは微塵も気後れする様子はない。



「ん…どうした?武器を忘れてきたのか?」


「武器なら既に持っておるわい!お前さんにスモウ・レスリングの真髄を味わわせてやるぞ!」


「ハハハ!面白い奴だ…気に入ったぞ!直々に始末してやる!」


「さあ、待ったなしじゃい!かかって来んしゃい!」



コレットとリデルの相手は緑の幼騎士エーデルと若草色の若騎士ミュゲ。鎧を身に纏いながらも幼い容貌の2人は騎士達の中でも年少であるらしい。碧の侯国から共に歩みを進める小さき彩りの戦士2人は勇気を振り絞り、戦いの舞台へと踏み入る。



「わたし達は強いもん!怖くなんかないよ!」


「言ったね〜?あたし達だって負けないからね!」


「私とエーデルは強いですよ。覚悟はいいですか?」


「…はい!私とコレットさんの方が…強いです!」



仲間達が次々に彩りの騎士達との戦いの口火を切っていく中、モニカとマリーは激しく剣を振るい、彩りの力と闘志を刃に込めてぶつけ合う。双方の“大将”である2人は互いに勝ちを譲る気は毛頭なく、刃が触れ合う度に胸の内の熱き心を燃やしていった。



「せいやぁ!」


「フッ、大振り過ぎだ!それッ!」


「クッ…!」


「どうした?次は足元を薙ぐくらいでは済まないぞ?さあ、立ち上がれ!」


「それでは、こちらも…ブライトエッジ!」


「何ッ!?剣から光が…間合いを掴めない奴だ…」


「これが私の彩りの力…そして、絆の力です。共に歩む仲間達がいる限り、私は負けません!」



普段はモニカを傍らで見守るエレンとビクトリアの2人が紅蓮の焔騎士ランタナと深紅の剛騎士グラジオとぶつかり合い、赤々と燃える火花を散らしていた。



「チッ、意外と強い…流石に素人じゃないってわけか…」


「ハッ!素人だなんて、あんたの目は節穴かい!?騎士だかなんだか知らないけど、あたいは自警団で場数踏んでンのさ!嘗めてかかって泣くんじゃないよ!」


「私だってビクトリアに負けないくらい燃えてるんだからね!私の炎で黒焦げにしてやるよ!」


「へぇ、そりゃいいや!どっちが先に燃え尽きちまうか、お手並み拝見といこうか!」



一行のまとめ役である2人が紅き彩りを振るって奮戦する中、トリッシュとカタリナは黄色の鎧の槍騎士ミモザと青い鎧の刀騎士サルビアを迎え撃っていた。同じ年の同じ日に共に生を受けた姉妹の2人は手を取り合いながら、目の前に迫る脅威に立ち向かっていった。



「ファーストエイド!」


「なんですって!?治癒術を使うなんて、ただ者じゃないですね…」


「それなら回復が間に合わないくらい一気に畳み掛けるぞ!覚悟しやがれ!」


「そうはさせない!痺れちまいな!!」


「私もいるよ!フロストザッパー!」


「ぐああっ!くそぉぉ…!」


「強い…ミモザと私がこんなに苦戦するなんて…予想以上の連携だわ…」



優位に立ち、戦いの主導権を握る者がいる一方で劣勢に立たされている者もいた。リタとルーシーは薄紫の銃騎士ヒーザーと水色の蒼騎士ヒアシンスに相対していたが、標的を絞っていた2人の銃撃がリタの得物を弾き飛ばした。



「しまった!銃が…!」


「リタさん、わたくしに任せてください。落ち着いて銃を取りに──」


「おっと、お前には人質になってもらうぞ?おとなしくしてな、お嬢様!」


「イヤッ、リタさん…!」


「ルーシー!クソッ…なんて卑怯な…!!」


「フフフ…チェックメイトよ。貴女達2人のどちらかは間違いなく死ぬわ!」



ヒアシンスが銃口をルーシーの側頭部に突き付け、ヒーザーはリタに冷たく光る銃を向ける。人質を取って追い詰めるという第3者的視点から見てもあまりに卑劣な戦術はとても騎士の戦いとは思えない。ルーシーの表情が恐怖に陰り、リタの額にも冷や汗が流れていた。



「ルーシー…待ってろ、今助けるから──」


「そうはいかないわ。今、そこから1歩でも前に出たら私がこの娘の頭を撃つ。そして、貴女が銃を取りに後を向けばヒーザーが貴女の背を撃ち抜くわよ」


「リタさん…そんな…」


「さ〜て、どうする?後に下がってお前の背中に風穴が開くか、前に出てお嬢様の首が吹っ飛ぶか…究極の選択だな!ハハハハ!」


「…前にも後にも動かなければいいんだな?」


「は…?お前、何を言って──」


「そらよっと!」


「キャッ!」


「ヒアシンス!ま、まさか…!?」


「ルーシーお姉様ッ!」



リタが弾き出した“第3の選択”に敵の騎士達はおろか一行も驚愕する。リタは冥紫の銃撃を足から放ち、サッカーボールのように蹴り飛ばした。ヒアシンスの手元から銃を弾いて2人の連携を乱した矢先、横からリーベが現れ、ルーシーを救出した。



「ルーシーお姉様、お怪我はございませんか?」


「リーベさん!?もう倒したのですか?」


「はい。私の術で目を眩ませたと思ったら階段で足を滑らせてあっという間に倒れてしまいましたわ♪」



リーベが指し示す方向に視線を移すと、キャンディピンクの鎧を着た甘騎士ハイビスが目を回して仰向けに倒れていた。他の者達が奮戦する中、ハイビスがあまりに呆気なく倒れたのはリーベの強運の賜物だろうか。騎士達の一角を討ったことで均衡が破れ、少しずつモニカ達一行に流れが傾き始めていた。



「うう…負け、ちゃった…」


「ハイビス…なんてこった…」


「ルーシー!無事で良かった…」


「ありがとうございます♪リタさん…いつの間にあの術を習得してましたの?」


「実は秘かに足から冥の気を撃つ練習してたんだ。どんな状況でもシャドウバレットが撃てるように訓練したんだぜ!」


「フフッ…さあ、形勢逆転ですわよ!覚悟なさい!」


「俺の技とルーシーの策、リーベのサポートを相手にして簡単に勝てると思うなよ?やってやるぜ!」


「はい、私も頑張ります!愛と正義の力、受けてみなさい!」


「ハイビスが負けるなんて、窮地だわ…なんてこと…!」


「ヒアシンス、慌てるな。頭数だけで勝負は決まらないさ。返り討ちにしてやるぞ!」



アミィ、クレア、ネイシアの3人はマゼンタの華騎士カメリアと銀色の鉱騎士ラミウム、ピンクの麗騎士ラナンに対しクレアを中心に迎え撃つ。3人の攻撃を一手に受け止めるクレアが持つ山登りや鍛練で培われた無尽蔵の体力と前向きな心がもたらす底無しの胆力は攻め落とさんとする3人を疲弊させ、辟易させていた。更にアミィの傷薬補給とネイシアの治癒術を受けて何度でも立ち上がる姿は不死鳥のように煌めいていた。



「ど、どうしよう…弾が無くなっちゃった…」


「何なのこの娘〜!?マジでどんだけ体力あるの〜!?」


「わたくし達宮廷騎士よりも鍛えているかもしれません…なんと恐ろしい方かしら…」


「お客さん、ええ飲みっぷりやね〜♪傷薬のおかわり、まだまだあるで〜!」


「フフフッ…ファーストエイド♪」


「2人ともありがと!まだまだ戦えるよ〜!」


『ひいいぃぃ〜っ!助けて〜!!』



リーベがハイビスを打ち負かすのを皮切りにモニカ率いる一行が一気に攻勢に回る。テリーの拳が棍騎士ランディニを捉え、闘魂の燃え盛るがままに何十発、何百発もの猛々しいラッシュを浴びせた。



「オラオラオラオラ!オラァァァッ!!」


「ぐうああぁぁ〜ッ!」


「よっしゃ!KOッス!みんな、助けに行くッスよ!」



フェリーナと対峙した弓騎士バジルは疾風の一閃を受けて宙を舞い、吹き飛んだ。倒れたバジルの前に歩み寄るフェリーナは弓を構えるが、バジルの焦りに反して射つ気は全くないようだ。先程まで弓で射ち合っていたバジルに穏やかな眼差しを向け、諭すように語りかける。



「しまった──!!」


「勝負ありよ。武器を納めて。私は無用な戦いはしたくないわ。騎士の誇りを捨てていないならば、負けを認めて」


「…参り、ました…」



次々とテラコッタ・ソシアルナイツの面々を制圧していく中、下級騎士達の相手をしていた仲間達も少しずつ下級騎士の軍勢を退けていき、戦局を優位に導いていた。



「よし、こっちは片付いたのである!」


「僕の方も粗方制圧出来た。皆の援護に回ろう!」


「そうね、ではまず私達から一番近いビアリーを──」



救援に回ろうとビアリーのもとへ駆け寄ったエリスとアンジュは唖然呆然。ビアリーがパンジーの背をヒールで踏みつけ、濃紫の鞭で叩き打っている。パンジーは泣き叫びながら抵抗するものの、武器である斧も奪われ、ビアリーに為されるがままだ。



「ふええぇ〜ん!痛い〜!イヤだぁぁ〜!」


「あら、素直じゃないのね…悪い子には、お仕置きよ!」



ピシャン!



「ふええぇ〜ん!痛〜い!ふええぇぇ〜ん!!」


「ああ…可愛い哭き声…最高よ…」


「…ビアリーは大丈夫そうね…み、見なかったことにしておきましょう…」


「そうだね、エリス…帝国皇女様はやはり恐ろしい御方だ…」



コレットとリデルは彩りの力を収束させる。緑と若草色の紋様が常磐の翠を紡ぎ出し、更に大きな彩りの力へと昇華させていった。



「リデルちゃん、わたし達も頑張ろ!」


「はい…頑張ります!」



『大いなる恵みよ、我らに永久の加護をもたらせ!エバーグリーン・ライブエナジー!』



「きゃああぁぁッ!」


「不覚、です…!」


「エーデル!ミュゲ!そんな馬鹿な…貴様らごときに…!!」


「マリー、先程の言葉、貴女にお返しします…チェックメイト!」



モニカは劣勢に立たされ焦燥に駆られるマリーに畳み掛けるように剣を振るう。さあ、大将の“詰み”は目前、彩りの騎士達に正義の鉄槌を叩き込め!




To Be Continued…

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