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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter5:彩りの義勇軍篇
74/330

第74話『邪の淵に咲く薔薇』

シリーズ第74話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

ブルーノ国バーント平原にて色とりどりの薔薇が咲く庭園を持つ物腰柔らかな青年リールと出会い、一行はテラコッタ領主ローザの居城を目指していた。リールが愛情を込めて育む薔薇の香りが仄かに辺りに残る中、領主のもとへ軽やかに歩を進めていた。



「リール、協力してくれてありがとうございます」


「礼には及ばないよ。目の前に困ってる人がいるのに、放っておけないさ」


「貴方って優しい方なのね。心身共に美しく、高貴な方…あたくしも貴方のように誇り高き人間で在りたいですわ」


「ビアリー様、勿体無い御言葉、謹んで頂戴致します…さて、もうすぐ着くよ…ほら、そこだ!」



テラコッタ領西部、バーント平原の中央部に程近い整地された地域にテラコッタ領の主ローザが住まう宮廷が姿を現した。モニカが先頭に立って入口へと歩み寄ると、門に控えていた2人の兵士が槍を構えて行く手を遮り、一行を緊迫した空気が俄に包む。



「止まれ!此処はテラコッタ領主ローザ様の宮廷である。余所者は帰った帰った!」


「待ってくれ。この方々は僕の友人なんだ。どうか丁重にもてなしてほしい。道を開けてくれ」


「リール様…畏まりました…──お客様、どうぞお通りください。但し、くれぐれもローザ様にご無礼のありませぬように」


「ふう、良かった…さあ、中にどうぞ」


「わぁ…素敵!なんて美しい宮廷なのかしら!愛に溢れた世界が形になったみたい…」


「ホントだね♪もっと奥も見てみよう!」


「おい、リーベ!カタリナ!…やれやれ、賑やかな奴らだぜ。どうなることやら…」


「フフッ…さて、謁見の間が近いですわね。わたくし、ちょっと緊張してきましたわ…」



リールに案内され、ローザ廷に通されたが、内装は領主の住まう宮廷であるにも関わらず厳かな雰囲気は微塵もなく、ロココ調の可愛らしい装飾が目立つ。随分と少女趣味な宮廷の最奥──謁見の間の玉座にはリールと同じピンクの髪を短く整えた細身の男性が鎮座していた。



「あら、リールちゃ〜ん♪パンジーから聞いたわよ〜!ちょっとおいたが過ぎるんじゃな〜い〜?」


「兄さん…」


「それにどうしたの?女の子をたくさん連れ込んで…それにみんな可愛いじゃない!」


「…なんか拍子抜けッス…いろんな意味で…」


「貴方が…ローザ様…ですか?」


「そうよ。弟がお世話になったみたいね〜!可愛いお客様♪」



テラコッタ領の主であり、リールの実兄でもあるローザとの対面を迎えた。一領主との謁見ともあって否応なしに一行を緊張が取り巻いていたが、クレアの笑いが緊張と沈黙を同時に破る。



「クククッ…変なしゃべり方…」


「クレア、さすがに笑うのは失礼だよ…まあ、変なのは間違いないけどね!」


「エレン姉ちゃん…言い方がストレート過ぎや…」


「全くだ。率直な感想とは言え、あまりに弁えが無さすぎる…」


「あ…あの…ローザ様、怒ってます…」



アミィとヴィオがたしなめるものの、クレアとエレンが口を揃えて“変”と形容するのも無理はない。ローザの外見は明らかに男性だが、口調は何故か女性のそれであり、声色も高めに装っている。奇怪な相手に一行は戸惑いを禁じ得ない。一方、対するローザも小馬鹿にされて黙ってはいなかった。



「何よ何よ!失礼しちゃうわね!アタシこそがテラコッタ領主ローザ様なのよ!?ディアボロ7人衆のラスト様のご寵愛を受けた──」


「ディアボロ7人衆だって!?お前、俺達の敵か!?」


「あらまあ…口が滑っちゃったわ…もう隠してもし方ないわね。その通り。アタシの領主としての姿は仮の姿、真の姿はラスト様、そして“あの御方”のために戦う邪教戦士ローザよ!」


「邪教戦士…貴方も天の愛を無くした哀しき戦士なのですね…」


「化けの皮が剥がれたのう!“あの御方”が誰かは知らんが、どの道お前さんと戦わんといかんな!」


「そうよ。弟と仲良くしてもらって悪いんだけど…アタシのダーリンに頼まれてるから、早速アンタ達を始末させてもらうわよ!」


「やはりそうだったのね…誇り高きテラコッタ・ソシアルナイツの裏には誰か別の影が潜んでいると思っていたわ。ディアボロ7人衆のラストの他に貴方達の糸を引いてるのはいったい何者?」


「さあ、どうなのかしらね?ただ、1つだけ教えてあげるけど…ラスト様と同じくらいすご〜くいい男よ〜♪」


「…そんなことを聞くつもりは毛頭ない。貴様も魔道に踏み入った輩ならば、私に切り刻まれたいか?」


「そんな野暮なこと答えてあ〜げない♪そんなに聞きたいなら力ずくで聞き出してもいいのよ〜?命の保証はしないけど♪」


「兄さん、待ってくれ!みなさんも落ち着いて──」


「リール、止めてくれるなッス!我が正義の拳、叩き込んでやるッス〜!」


「テリー、よく言った!あたいも白黒着けないと腹の虫が治まらないんだよ!ベラベラ喋る暇があるならかかって来な!」


「あ〜ら、お話のわかる素直な娘達ね〜!それじゃ、こちらも遠慮なくやらせてもらうわ…マリー、頼んだわよ♪」


「はっ!騎士の誇りに賭け、この命、必ずや果たしてご覧にいれます!」


「そんな…兄さん、マリー…やめてくれ!」


「リール!この地の主はアタシよ!アタシの決めたことに文句を言うつもり!?」


「違う!僕は…僕は…大切な家族である兄さんや宮廷騎士の皆と…大切な友達であるモニカさん達が戦って傷付け合うなんて耐えられない!」


「リールさん…」


「あ〜ら、さっき会ったばかりの人が友達だなんて…おめでたいわねぇ〜…それにさっき家族である騎士達を傷付けたのはどこの誰だったかしら?」


「クッ…!!」


「とにかく、半人前のアンタは口出ししないで黙って見てなさい!さあ、始めるわよ!」


「兄さん!頼むから、やめて!…クソッ、離してくれ!」


「リール様、ローザ様の命にございます。お下がりください」


「離せと言っている!聞こえないのか!!」


「リール様、なりませぬ!…やむを得ん、地下牢に連れていけ!!」


「そんな…どうしてリールさんを牢屋に!?酷い…」


「やめてよ!リールさんをいじめちゃイヤだよぉ…」


「カタリナ、コレット…悔しいけど話が通じる状況じゃないぜ。俺達がリールさんの分も戦うしかない!」



リールは配下の兵士に両脇を抱えられて拘束され、地下牢に囚われた。モニカ達は自分達を“友”と呼ぶリールを救うべく戦意を瞳に燃やし、玉座の前に陣取る宮廷騎士達に向かい合った。



「さて、お膳立ては整った。あとは貴様らを叩き潰すのみ!」


「そうはさせません。私達の彩りの力、絆の力…何者にも屈しはしません!」


「モニカの言う通りだ!テメェら全員ブッ飛ばしてやる!」


「ハハハ!その言葉、覚えておくよ!その威勢がいつまで持つか見物だな!」


「ちなみに逃げようなんて思っても無駄よ?後の守備もバッチリ、清き乙女はガードが固いのよ♪」



ローザの言葉を受けて一行が振り返ると下級の宮廷騎士の軍勢が一行の退路を阻んでおり、既に逃げ場は何処にもない。しかし、臆することも動じることもなく、1人1人が思い思いのタイミングで武器を構え、心を構え、一丸となって立ち向かう決意を固めた。



「やるしかないか…青国空軍の底力、見せてやるわよ!」


「相手に不足はないわ。アンジュ、準備はいい?」


「もちろんさ、エリス。僕達も力を尽くそう!」


「宮廷騎士だかなんだか知らないけど、山賊ナメないでよね!」


「そうだよ!山賊仕込みのパワーで兜も鎧も搗ち割ってやるんだから!」


「私だって…ダテに7つの海を渡ってない!邪教戦士なんかに負けるものか!」


「ザコは私達に任せるのである!この背中、皆に預けるのである!」


「私も頑張ります。モニカさん達はマリー達をお願いします!」


「カシブ、ケイト、みんな…ありがとう…そうです、私達には彩りの力…そして、旅路で培った絆の力がある。絶対に負けません!」


「さあ、覚悟が出来たなら来るがいい。我らの前に跪かせてやろう!」



下級騎士の相手を共に歩む仲間達に託し、一行の中核を担うモニカ率いる18人の少女達は毅然と燃える意思を胸に、彩りの騎士テラコッタ・ソシアルナイツに立ち向かっていく。屋内での戦闘であるためか馬には乗らず、武器と盾を携えてローザの前にズラリと勢揃いしていた。少女達はそれぞれ引き寄せられるように己の紋様と同じ色の鎧を着た騎士へと駆けていく。まずテリーが口火を切り、琥珀色の鎧を着た棍騎士ランディニと対峙し、臆することなく拳を振るう。棍を握るランディニの左手にはケイブブラウンの紋様が印されていた。



「そらぁ!チェスト!」


「フン、騎士に素手で挑むとは…その度胸だけは褒めてやろう」


「そうやって武器の強さに傲る奴には負けんッス!自分の拳は弱きを守る盾となり、強きを挫く剣となるッス!」


「フフフ…拳が剣や盾になるものか!そのふざけた幻想ごと粉々にしてやる!」


「なんの!その悪の心、武器ごと、鎧ごと砕いてやるッス!!」



ランディニの振るう棍を華麗に避けながら闘魂が琥珀色に燃える鉄拳を唸らせる。勇猛なテリーの姿に闘志に火を点けられたフェリーナがミントグリーンの鎧を纏った弓騎士バジルに涼緑の一矢を放った。ランディニと同じくバジルの左手にはハーブグリーンの紋様が彩られている。



「貴女にも精霊の刻印…この戦いも精霊の導きなのね…」


「精霊?私の力は騎士の誇りと鍛練の賜物。超自然的存在は関係無いわ」


「気付いていないのね…貴女の命、貴女の精神には精霊が宿っているの。貴女にも、私にも…」


「そう…生憎だけど、私は目に見えない世界には興味ないの。ただ…今私の目の前にいる貴女には興味がある。ここから先は弓と矢で語りましょう」


「ええ。それが望みなら、全力で応えてみせるわ!」



ビアリーは濃紫の鎧を着た斧騎士パンジーと相対する。ノワール帝国の皇女として多くの民を虜にするビアリーと嘗てシリアルキラーとして恐れられながら、マリーに実力を買われ宮廷騎士となったパンジー──毛色は違えど互いに妖しげな雰囲気を醸し出す2人が対峙する様相は嵐の前のように不気味なほど静かで、なんとも形容し難い奇妙な空気が一帯を支配する。ビアリーの彩りに呼応するようにパンジーの左手にはパンジーパープルの紋様が妖しく浮かんでいた。



「あ〜!蝶みたいに綺麗だけど毒蛾みたいにアブナいお姉さん発見!キャハハ!」


「あら…貴女があたくしの相手?見たところお子様だけど…ちゃんとあたくしを悦ばせてくれるのかしら?」


「うん!アタシ戦うの大好き!早く遊ぼ!殺ろう殺ろう♪」


「ウフフッ、貴女はどんな声で哭いてくれるかしら…?楽しみね…」



濃紫の2人が妖しく火花を散らす中、モニカは山吹色の紋様を持つ剣騎士マリーと対峙する。共に属する一団の先頭に立ち、多くの仲間達を牽引している2人だ。事実上、双方の大将同士の戦いとあって周りとは段違いの緊張感が取り巻いていた。



「マリー…祝福の証を持ちながら、貴女達は…」


「フン、無駄口を叩く必要はない。互いに剣で語ろうか!」


「はい。モニカ・リオーネ、参ります…覚悟!!」



1人1人が次々に挑まんとしている中、金色の紋様モニカと金色の鎧を纏う騎士マリーは激しい鍔迫り合いを見せる。突如として現れた邪教戦士ローザとその配下として再び牙を剥いたテラコッタ・ソシアルナイツ。その脅威を退けることは出来るか?そして、ローザの語る“あの御方”とは…?




To Be Continued…

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