第7話『飛翔の剣』
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シリーズ第7話目です。お盆休みも楽しく創作であります♪どうぞお気軽にお楽しみください!
コバルト岬でステラを仲間に加えたモニカ達一行はシャルドネ侯国から隣国のアイビー国を目指していた。アイビー国への道は遠く、朝早くに出発し、何時間もかけて移動したにも関わらず、シャルドネ侯国の郊外の辺りという所で夕方になっていた。
「ふえぇ〜…もう疲れちゃったよ〜…」
「バスと電車とケーブルカー乗り継いだと思ったらまたバス乗って…もうクタクタだぜ…」
「そうですね…では、そろそろ野営の準備をして夕飯にしましょうか。」
「よっしゃ、それならワシが作ったる!みんなに食うてもらいたい料理があるからのう!」
ステラは荷物から大きな鍋を取り出し、豪快にぶつ切りにした食材をドカドカと放り込んでいく。調理にもどこか粗さを感じさせるのがなんとも彼女らしい。
「ほれ!出来たぞい!」
鍋の蓋を開けると鶏肉、白菜、茸類、パスタとは違う太い麺…様々な具材がごった煮になっていた。モニカ達は見たことのない料理に顔を見合わせる。
「ステラ…この料理は…なんですか?」
「おう、初めて見たじゃろう。こいつは“ちゃんこ鍋”っちゅう鍋料理じゃ!さあ、みんな食うてみんしゃい!」
一行はステラ特製の“ちゃんこ鍋”を食す。最初は恐る恐る口にしたが、一口食べた途端にその不安が杞憂であったと皆が確信した。
「ウマいッス!こりゃパワーが出そうッス〜!」
「この“うどん”っていうパスタ美味しい…サッパリしてるからたくさん食べられそうね♪」
「ホンマ美味しいわぁ〜♪ところで、ステラ姉ちゃんはどこでこんな料理覚えたん?」
「おお、よく聞いてくれたのう!こいつは東方の国で人気の“スモウ・レスリング”のレスラーが食べる料理じゃ。みんなもこれでパワー100000倍じゃい!」
「スモウ・レスリング…聞いたことはあるけど、どんな競技なのか俺、わかんないんだよなぁ…」
「うむぅ!スモウ・レスリングはいいぞ〜!なんたって鍛え上げられた己の肉体のみで戦う格闘技じゃい!厳しい稽古に耐え、肉体を鋼の如く鍛え、磨き上げる日々…熱き血潮の限りにぶつかり合う力と力…相手の動きを読み、仕掛けの刻をうかがう繊細な技巧…高いレベルでの心・技・体の融合と昇華…くぅ〜っ!何故こんなにも熱くなれる競技が西方には浸透しとらんのじゃ!!そもそも東方の文化には──」
「エキサイトし過ぎ…ビートが激し過ぎて鍋が冷めちまう…」
「ん、そやな。食べよ食べよ〜♪」
「うおぉおぉい!人の話を聞かんか〜いッ!!!」
明くる朝、モニカ達はアイビー国へ向けて再び歩を進めた。アイビー国の国境が見えてくるモエギ台地に差し掛かると、突然辺りの空が黒い影に覆われ、大きな羽音と共に魔物の群れがモニカ達に襲い掛かってきた。
「ガアッ!グアアァッ!!」
「怖い…鳥型の魔物が、あんなにたくさん…」
「あわわっ…来るよ!みんな散って!」
モニカ達は飛行する魔物達に応戦する。武器で一閃する度に墨で染めたような黒い羽が舞い上がっては散らばった。
「ファイアボール!」
「シャドウバレット!」
「グギアァアッ!」
モエギ台地が魔物達の血でドス黒い紫に染まる。モニカ達は血の匂いで更に闘争本能を昂らせる魔物達を次々と討ち倒していった。
「えいやっ!負けへんで!」
「そぉら、龍鱗砕きじゃい!」
「ガギャアァアッ!」
「フェザーエッジ!」
刀のような鋭さをたたえた白銀の羽が台地の岩を砕いた。魔物達の黒い羽が舞う合間から、1人の青年が姿を現す。上空から現れた彼は地に降り立つと、片刃の剣を両の手に携え、左手に持った剣をモニカ達に向けた。
「神々の子よ…この刃のもと、黄泉の塵と消えよ。」
「貴方は…何者ですか!?」
「我が名はシリウス。魔翔隊隊長、魔族七英雄の一員なり。我等魔族が理想のため、その祝福の証、貰い受ける!」
魔族七英雄─と自らを名乗るシリウスはその瞳に強い意思と信念を燃え上がらせている。それに呼び寄せられるかのようにモニカがスッと前に歩み出た。
「私が相手しましょう。この剣を以て貴方を、魔物達を征するまで!」
「ほぅ…うぬが剣、うぬが覚悟、見せてみよ。…いざ!」
モニカは剣の柄を握り直し、その眼差しをシリウスに向ける。その瞳には剣を振るう者としての誇りと祝福の証の使命に突き動かされる衝動がギラギラと燃えていた。
「せいやあぁっ!」
「ふん…はあッ!」
モニカの一薙ぎをシリウスはひらりと身を翻してかわす。着地するや否や右の剣で鋭い突きを見舞った。
「クッ…速い…」
「モニカ、大丈夫?あたしの銃で─」
「待たれぃ!その業、愚の極みなり!!我が相手はこの娘。我が“武”の場に立つ神聖な者なり。再びその業、繰り返してみせよ…その刹那にはうぬが首を先に掻っ斬ってくれようぞ!その肝に銘じよ!救い難き凡愚の徒よ!!」
シリウスの逆鱗に触れ、クレアは凍り付く。そこには他者の介入を許さぬ戦慄が渦巻いていた。戦慄の渦の中、モニカとシリウスは2人、刃を交える。
「ううあぁあぁっ!!」
「むうっ…はああぁっ!」
2人の剣が激しく討ち合わさり、大きな金属音が響く。金棒を振るう鬼神の如く討ち伏せるように力強く一閃するモニカに対し、シリウスは両手の剣で電光石火の速度で畳み掛ける。その速さに着いていくのがやっとというモニカは瞬く間にシリウスに押し込まれていった。
(うっ…二刀流だというのに…なんて速さ─)
「飛空斬!」
「ううっ…!」
シリウスは地を蹴り上げて舞うような回転斬りを見舞った。少しよろめくモニカに対し尚も攻撃の手を緩めない。
「落鳳刃!」
「くうっ…あうッ…!」
両の剣を大きく振り降ろすと、追い討ちとばかりに真空の刃が無数に飛び交う。真空が巻き起こす気流でモニカの体が宙に浮かぶと、シリウスは後を追うように飛び上がった。
「覚悟!鷹翔双牙襲!!」
「うあぁあぁッ…!!」
気流に打ち上げられ体勢の整わないまま、空中での斬撃をまともに受けてしまった。地に落とされたモニカは激しく体を打ち付ける。傷付いたモニカはフラフラとした足取りで、剣を地に突けて辛うじて立っていた。
「ああ…こ、このままじゃ…モニカが…死んじゃう…」
「マジかよ…モニカが押されるなんて、とんでもないヤツだぜ…」
「嫌…モニカさん…負けないで…」
「泣かないで、リデル。モニカは…きっと大丈夫だからね。」
「姉貴…そうは言っても、あんな虫の息じゃ…!」
既にモニカは心身共に屈しかけていた。その意識さえ遠退きかける中、彼女の剣術に捧げた日々の思い出が頭の中を駆け巡った。初めて剣を持ち、父の見よう見まねで振るった幼き日…厳しく辛い稽古に泣いてばかりいた日々…初段を修得した日…初めて兄に勝ち、免許皆伝を修めた日…その全てが色褪せることなく、鮮やかに脳裏に映っていた。
(クッ…このままでは…このリオーネ流剣術に泥を塗るわけにはいかない…負けるわけにはいかないのに…!)
「どうした!うぬが剣は其式か!自ら名乗り出ておきながらその為体…うぬが“武”を侮辱する気か!!我を失望させる気か!!」
思いがけぬ叱責の言葉にモニカはハッと目を見開いた。ふら着いていた体を起こし剣を構えると、左手に印された祝福の証が金色に輝く。視界が開け、それまでは耳に入らなかった仲間達の言葉もモニカに届いていった。
「モニカ姉ちゃん!魔族ナンチャラとかいう変な兄ちゃんに負けたらアカンで!」
「そうだよ!モニカは強い人だもん!そんなに簡単に負けるような人じゃないもん!」
「気合いじゃ気合い!気合い見せんしゃい!!」
「最後に勝負を決めるのは燃える闘魂ッスよ!モニカは…自分が会ってきた中で一番熱い闘魂を持ってるッス!!モニカなら出来るッス!!」
「モニカ!アンタはその程度じゃない…自分でもわかってるでしょう?祝福の証の使命、忘れたなんて言ったらゲンコツ喰らわすからね!!」
(みんな…そうだ…私は…祝福の使命、仲間との絆…そして、その全てが息づくこの世界…守りたい…負けられないんだ!!)
モニカの体が金色の光に包まれた。五感が研ぎ澄まされ、剣を握る手にも再び力がみなぎる。
(ふむ…目覚めたか…よかろう。それはそれで面白い!!)
「はあぁあぁッ!!」
「ぬぅ…むむうっ…!」
モニカが剣を振るう度に金色の閃光が放たれる。食らい付くので精一杯だったシリウスの動きもハッキリと視界に捉えていた。モニカはシリウスを力を込めてやや荒々しく薙ぎ払う。
「うおっ…其こそが目覚めし、うぬが力…!」
「負けられない…貴方に負けるわけにはいかない!!」
モニカの足下に金色の魔方陣が現れた。金色に煌めく左手を剣に添え、両手で精一杯に振り切る。
「ブライトエッジ!」
モニカの剣から金色の衝撃波が放たれる。衝撃波はシリウスの体を捉え、彼を弾き飛ばした。
「クッ…ぬぅうう…!」
「これが…私の“武”、私の使命です!!」
再び魔方陣が現れ、剣が太陽のような金色の煌めきを帯びる。残る力の全てを振り絞り、全身全霊をその刃に込め、猛々しく一閃を見舞った。
「ライジング・サンシャインブレード!!」
「ぬうあああぁぁッ!」
金色の光の斬撃に一閃されたシリウスは地に膝を突いて倒れた。が、すぐに息を切らしながら立ち上がり、ゆっくりとモニカに歩み寄ってきた。
「うぬが…名は…何と申す?」
「…モニカ・リオーネ。」
「モニカ、か…うぬが太刀筋…見る価値の在るものであった。此度は不覚をとったが次はこうは行かぬ。我が剣に屈し、黄泉へ逝く覚悟をしておくことだな!」
シリウスは黒い竜巻に包まれて姿を消した。モニカのもとへ仲間達が駆け寄る。
「モニカ!すげぇや!最高にROCKだったよ!」
「モニカの燃える闘魂の勝利ッス!自分、感動ッス〜!!」
「いやぁ、昨日ちゃんこ食うといて良かったのう!ガッハッハッハ!」
「フフッ、アンタってヤツは…大したもんだよ─」
エレンが肩に手を置いたその刹那、モニカはその場にうつ伏せに倒れ込んだ。一瞬の沈黙の後、一同を驚愕が支配する。
「モニカ!?モニカ!?どうしたの!!!?しっかりして!」
「ダメージが酷かったんだな…無理もないぜ…」
「姉貴、治癒術が使えるのは姉貴だけだ。早く手当てしてやってくれ!」
「わかったわ。まずは安全な場所に移動させましょう!」
突如姿を現した魔族七英雄のシリウス。彼との死闘の末に勝利を掴むも傷付き、力尽きたモニカ。この先の旅路に更なる魔族の脅威が彼女達に襲い来るのであろうか…?
(フッ、我が膝を地に突かせるとは…新たな楽しみが出来た。モニカ・リオーネ…あの力…あの太刀筋…)
To Be Continued…