表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter4:邪教戦士篇前編
55/330

第55話『森の都スプルース』

シリーズ第55話目です。どうぞお気軽にお楽しみくださいませ♪♪

深く萌ゆる緑の息づくスプルース国に到着した一行。嵐のように現れた勘違い東方戦士シンディをクレアの硬い決意と意思を以て退け、新たな地へと臆することなく一歩を踏み出した。草木の緑に浄化され、澄み切った空気が包み込み、戦いの旅路に身を置く一行の心を癒していった。



「気持ち良い〜!緑が綺麗で心が安らぎますね!」


「ケイトさんの言う通りなのである♪緑一杯の景色は大変美しいのである!」


「スプルース国…実はずっと来たかったんです…」


「リデル、よかったな。ノリノリのビートでガンガンいこうじゃん!」


「生き物達も生き生きしています。やはり自然のもとに生きることは活力になるのでしょうか…」


「そうだね、ネイシア♪さあ、出発しましょ!」


「こんにちは、旅の方々。スプルース国へようこそ!」



一行を出迎えたのはスプルースの草木に負けず劣らずの鮮やかな緑の髪を後で束ね、ベージュのレンジャー服に身を包んだ女性だった。穏やかな笑みを浮かべながら歩み寄る手元には幾つもの弁当箱を収納した手押しワゴンを携えていた。



「スプルースの豊かな大地で育った穀物と野菜の自然食弁当はいかがですか?」


「いいねいいね!あたし、お腹空いちゃった〜」


「そやな。お値段も手頃やし、ここでお昼にしよか!ほな、お弁当人数分お願いしますわ!」


「毎度あり!お腹一杯食べてくださいね♪」



一行は自然食弁当に舌鼓を打つ。弁当箱一杯に満たされた優しく穏やかなスプルース国の息吹を感じながら空腹を満たしていった。



「こりゃ美味いのう!自然のままの優しい味わいが心にもしみるわい!」


「モグモグ…美味しいね、お姉ちゃん!」


「うむ、素材の風味を大切にしているんだな。すごく食べやすいし、なんだか安心する味だ」


「ごちそうさまでした。私はモニカ・リオーネと申します。貴女は?」


「私はミリアム。スプルース国の自然食の広報活動と森林の保全管理活動をしています。どうぞよろしく──」


「むむっ!?邪気を感じたのである…向こうからなのである!」


「あっ、あそこ!変な鳥がいるよ!うわわわ…」


「グアアァッ!」


「ひいっ…た、助けてくれ!」



カシブに連れられ、邪気のへ駆けていくと、怪しい模様の鳥が通行人を襲っていた。赤き情熱を燃やすエレンと紅き闘志を昂らせるビクトリアが真っ先に飛び込み、臨戦体勢を整えんとしていたが、フェリーナの胸中にはそれを躊躇わせる一つの痞が燻っていた。



「あれは魔物…みんな、出番だよ!燃えてきたね!」


「よし、行くよ!やってやろうじゃないのさ!」


「待って。エレンの力を使ったら炎が辺りの木々に燃え移ってしまうし、ビクトリアの力で大地のエネルギーを昂らせたら木が根から裂けてしまうわ」


「ええっ!?いきなりそんなこと言われても…黙って見てるわけにもいかないじゃない!」


「エレン、それはそうだけど…スプルース国の大いなる緑は汚してはならないわ」


「じゃあどうしろってンだいフェリーナ!綺麗事ばっかり並べ立てて、あたいらに泣き寝入りしろっていうのかい!」


「そうは言ってないわ!私はただ──」


「ケンカはそこまで!心配には及ばないわよ。この地の緑は私が守ります!」


「なんと!?ミリアムさんにも御紋が…!よろしく頼みますぞい!」



毅然と2人の仲裁に入ったミリアムの左手にはエメラルドグリーンの紋様が印されていた。美しきスプルースの緑を守る──一片の迷い無き澄み切った意思を体現するような彩りが両掌に込められ、解き放たれた。



「アルヴェージャ・スプラッシュ!!」


「ギャアアァッ!」



ミリアムの両掌から透き通った緑のエネルギー弾が無数に放たれる。新緑の砲撃を見舞われた魔物は撃ち落とされ、黒紫の煙になって消えていった。



「よし、いっちょあがり!やりました!」


「アムール、治癒術で怪我の治療をお願いします」


「承知しました。癒しの力よ集え…ヒール!」


「助かった…ミリアムさん、旅の方々、ありがとうございます…」


「チッ…暴れ損ねちまった。フェリーナ、あんたって奴は…」


「……」


(あの…2人が険悪です…怖いです…)


(そうですね、リデルちゃん…アムール様、やはり仲裁した方が良いでしょうか…?)


(ネイシア、これは当事者同士で解決すべき問題です。心優しい貴女の心情は察するに余りあるものですが、今は耐え忍びなさい)



通行人の怪我は癒え、カシブが感じ取っていた邪気も取り祓われた。一行は安堵していたものの、ビクトリアとフェリーナの間には不穏な空気が流れ、ミリアムは1人悲嘆に暮れていた。



「あの…ミリアムお姉様、どうされましたか?」


「貴女はリーベちゃん、でしたね…最近、スプルース国にも魔物が増えてきたのよ…特に郊外は魔物の巣窟になっている区域もあって、私1人じゃ駆除が追い付かなくて…」


「ええっ!?1人で駆除しているのですか!?」


「そうなんです、モニカさん。森林保全管理課にさっきの力を持つのは私だけだから、私がやるしかないんです。危険だとわかってはいるんだけど…」


「そういうことでしたら助力は惜しみませんわ。わたくし達にお任せください!」


「そうね、世の平和を脅かす者を見過ごすのは騎士の名折れだわ。皆で協力しましょう!」


「ああ、俺も全力でやるぜ!魔物がいると知ってて野放しに出来るかよ!」


「ええ。皆で手を取り合い、スプルース国に平穏をもたらしましょう!ヴィオお姉様、よろしいですか?」


「フッ、いいだろう。仕事とあらば手は抜かない。きっちり働かせてもらう」


「ありがとう!助かります!では、一度私達の宿舎で休んでください」



一行はミリアムに連れられ、保全森林の近郊に建つ寄宿舎に到着した。木々に囲まれた一帯にひっそりと佇み、一行を優しく出迎える姿は大きな守人のような温もりと安心感に満ちていた。



「うわぁ〜!窓からの景色も緑がいっぱいだよ!よかったねティファ!」


「そうね、コレット。これなら落ち着いて休めそうだわ。騎士団領は岩場や乾燥地が多いから、すごく新鮮に映るわね」


「私は普段は海ばかり見てますけど、森もいいものですね!気持ちがスッキリします♪」


「では、のちほど集会所で作戦会議をしましょう。それまでゆっくり休んでくださいね」



ミリアムは一行に自然と馴染み、“仲間”として打ち解けていた。部屋割りも決まり皆がゆっくりと流れる時の中で安らぐ中、ビクトリアとフェリーナの2人は部屋で神妙な面持ちで向かい合っていた。



「フェリーナ…あたいは戦いになると形振り構わないタチだけどさ、やっぱり考えないといけないもんなのかねぇ…?」


「戦いを前に引き止めてしまってごめんなさい。ビクトリアもきっと歯痒い想いだったと重々理解はしているわ。ただ、この国の緑は国をあげて守っている宝なのよ。それだけは頭の片隅に置いておいて」


「国の…宝、か……」


「祖国を想いながら戦ってる貴女ならわかるでしょう?その国に暮らす1人1人、皆が大切にするもの、誇れるものがあるって」


「…ああ、すまないね。周りを巻き込まないように戦い方に工夫をしてみるさ。エレンとも話しておくよ」


「ええ、ありがとう。貴女ならきっと解ってくれると信じていたわ」


「フェリーナ…あんたの達観ぶりには恐れ入るよ。頼りにしているからね!」



地を司る深紅の紋様を持つビクトリアと風を司るミントグリーンの紋様を持つフェリーナ。相反する力を持つ者として互いを認め、信頼しているからこそ小さな軋轢も見過ごさずに共に向かい合い、正していく。2人が確かに結ばれた絆を確かめ合っていたその頃──魔物の邪悪な気配とは異なる怪しい影が潜んでいた。



「間違いない。奴らはここだよ。ジャッロの坊やの仕返しをしてやらなきゃねぇ…」


「ヒャヒャヒャッ!アイツらの呆気にとられた顔が見ものだわなぁ!」


「まあ、そう慌てなさるなよ。慎重に一手一手、じっくりといこう。ウチらだけで楽しんじゃ後から来る増援にも悪いからね」



一行は森の木陰に溶け込みながら静かに忍び寄る影など知る由もなく、集会所に勢揃いしていた。ホワイトボードに地図が貼り付けられており、その彼方此方に赤いバツ印が記されていた。



「手始めにここから約10分ほどで到着出来るこの地点から探しましょう。この一帯で魔物らしき足跡が多数発見されたので、巣が近くにある可能性が高いのです」


「そうですね、近場から魔物の足取りを掴みにいきましょう。私達の人数なら2、3組に分かれて探査してもいいでしょうね」


「あたくしの親衛隊も動員して徹底的に探しましょう。悪の根は余すことなく断ち切るのです!」


「ビアリー、気合い入ってるね。僕達も全力でやらせてもらうよ!エリス、準備は良いかい?」


「アンジュ、貴女は言い出したら聞かないものね。いいわよ、久しぶりに本気出しましょうか──」


「失礼します!ミ、ミリアムさん…玄関に変な奴らが…!」


「わかった。みんなも手助けしてもらえるかな?」


「うん、頑張ろ!みんな早く早く〜!」


「コレット!不用意に1人で動いたら危険です!待ってください!」



ミリアムに連れられて1階に降りると怪しげな雰囲気の女性5人組が玄関先に陣取り、一行に敵意という名の刃を向ける。今にも襲いかかって来ようかというピリピリした緊張感が辺りを支配する。



「緑の髪の姉ちゃんよぉ、アンタがここで一番偉い奴かい?」


「まあ、そうかもしれませんけど…何か御用でしょうか?宿泊なら空きがありますので問題ありませんけど──」


「ヘッ!誰がこんなボロ宿に泊まるかよ!お前の後にゾロゾロ着いてきてるのもガキ共じゃないのさ!」


「なっ…ボロ宿ですって!?どんな用事があるか知らないけど、ふざけないで!!」


「ハァ?本当のこと言って何が悪いのよ?リーダーは真実を言ってま〜す♪」


「うむ〜…真実はときに残酷なんだな、うん」


「それにアタシらはコイツを持ち合わせてるんだぜぇ?ヒャヒャヒャッ!」



ならず者の5人の左手に確かに印された彩り──カーディナルレッド、ハンターグリーン、インクブルー、ポテトイエロー、スイートポテトパープル──その彩りは一行の心を揺さぶり、驚嘆させた。



「何ッ!?テメェらにも祝福の証…!!」


「祝福の証を持つ破落戸がまだいるとは聞いていたが…まさか僕達の目の前に現れるなんて…!」


「アンジュ、怯んではいけないわ。仇なす者達に義の鉄槌を!」


「その振る舞い、下品極まりないですわね。闇に堕ちなさい!」


「闇に堕ちんのはテメェらさ!ちょっと遊んでやるよ!ヒャヒャヒャッ!」


(何!?…コ、コイツ…なんだってこんなところにいるってンだい!?)



緑に包まれながら過ごすスプルースでの時は穏やかに流れていたが、束の間の平穏は無情にも打ち破られる。突如として現れ、一行に刃を向けた謎の5人組。その1人に対して怪訝な眼差しを突き刺すビクトリア──祝福の証を持ちながらもペーシュ国にて打ち勝った邪教戦士ジャッロの影を思わせる彼女達の目的とは…?




To Be Continued…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ