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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter4:邪教戦士篇前編
52/330

第52話『Veleno Nove』

シリーズ第52話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

ペーシュ国に潜む毒のギルドの影に立ち向かう一行。営業マンに変装してプラタノ財団へ赴き、ジャッロ社長の所在への糸口を見出だそうとしていたオールとルーシーはボトルグリーンの彩りを持つフェトルの奇襲を辛うじてかわし、宿に待機する仲間達と合流すべく駆け出そうとしていたが──



「そんな馬鹿な…う、美しいペーシュ国が…!」


「なんてこと…酷い…」



変わり果てた様相に2人は絶句する。穏やかなペーシュ国の街並みが禍々しい彩りの毒の沼に浸食されていた。首領であるポワゾンの紫を筆頭に、青紫、ヘリオトロープ、ケミカルパープル、青鈍色、モーブ、灰汁色、ナイトグリーン、赤錆色、ボトルグリーン──それぞれの10色が怪しく蠢く毒の沼が一帯を覆い隠す中、ドゥイヤオとスラッジを乗せた1台のバイクが荒々しくエンジン音を鳴らしながら現れた。



「お疲れさん!迎えに来たがや!」


「ウヒョヒョッ!見習い、こっちぞなもし!」


「逃がしませんわ!スプラッシュロンド!」



スラッジに“見習い”と呼ばれるボトルグリーンの女は見た目からは想像もつかない跳躍力で何事もないようにルーシーの水流と毒の沼を同時に飛び越え、サイドカーに乗り込む。バイクは毒の泥水を辺りに跳ね飛ばしながら我が物顔で駆けていった。



「ウヒョヒョッ、遂にペーシュ国を占拠したぞなもし!」


「見習い、わっちらの時代だがや!酒をたんまり用意しておいてくれぃ!」


(私は…運命の巡り合わせで見習いになった。いや、してもらったんだ…)



──半年前──



『姉ちゃん、わっちらと目が合ったのが運の尽きだがや。さっさと持ってるもん出しぃ?』


『マジ諦め悪すぎんじゃん?遊ぶお金ちょうだいよ〜!』


(不良に絡まれるなんて…怖い、怖い──!!)


『こ、これは!?あわわわわっ!?』


『グィフト!…今、紋様が浮かび上がったぞなもし…』


『リーダー、これはもしかしたら…』


『そうだね、イオス…アンタ、見逃してやってもいいよ。一つ条件があるけどね…』



(この方々と出会ってこの左手の印が目覚めた。この力は私の運命を変えた…私を生まれ変わらせた!)



一方、ルーシーとオール。荒々しく牙を剥いて行く手を阻む毒の沼を渡る術も無く、立ち往生していた。



「辺り一面毒の沼ですわ。まさかこんなことになるなんて…」


「これでは不用意に動けませんね…どうしたものでしょうか──」


「お〜い、おふたりさん!こっちだ!」



2人は後方からのテレーズの声に振り返る。視線を移した先にはエレンが運転席に着いた大きな赤いバスが一面に広がる毒の沼をもろともせず、どっしりと車道に鎮座していた。



「バスじゃないか!?これ、どうしたんだ?」


「キャロルのジムのバスを借りたんだよ。エレンの安全運転で運行しております故、ご安心を♪」


「2人とも早く乗って!アイツらにお仕置きしに行くよ!プロト、どこに向かえばいい?」


「はい、エレン様。標的群は此処から約700メートル、座標N67.14、E09.60地点に集束しています」


「その場所はペーシュ国の国会議事堂よ。奴らはペーシュ国自体を乗っ取るつもりだわ!急がないと!」


「テリーさん…もう大丈夫なのですか?」


「…大丈夫ッス。負けっぱなしじゃいられないッス!」


「私やカタリナさん、アムール様もいますから安心してください。ただ、無理だけはしないでくださいね」



皆が待つバスに2人も乗り込み、国会議事堂へと急行する。毒の彩りとの対決も遂に佳境を迎え、否応なしに高まる緊張感に一行の表情も自然と引き締まる。



「遂に…毒のギルドと決戦だぜ!ブチのめしてやる!」


「そうね、テレーズ。彩りの力の使命を見誤った連中は正さなければいけないわ!」


「同じ彩りの戦士としての模範を僕達が示そう。悪は討つ!」



一行を乗せたバスはペーシュ国国会議事堂に到着した。辺りに毒の瘴気が立ち込める中、ロビーには見習いフェトルを加えた毒の彩り達が勢揃いし、階段の先にはポワゾンとジャッロが仁王立ちで待ち構えていた。



「ジャッロ・プラタノ、ヴェレーノ・ノーヴェ…貴方達を倒します!」


「今日を待ちに待ったわ!ペーシュ国全土を毒の沼に変えて、私達の国にする…我らの時代の夜明けが来た!!」


「私も邪教戦士として今日という日を心待ちにしておりました。では…Hide&Seek、かくれんぼを楽しみましょうか!」



ジャッロは躊躇い無く毒の沼に飛び込み、身を潜めた。怪しく蠢く毒の沼は彼の影さえも呑み込み、一切捉えられない。



「むむっ!?ど、どこにいるかわからんッス──」


「ここです!」


「うわっ!?」


「ケイト、大丈夫か!?クソッ、不意討ちなんてしやがって!まさかアイツが邪教戦士だったとは…」


「せいやっ!ブライトエッジ!」


「モニカ、闇雲に打っても当たらないよ。まずはアイツらを叩かなきゃ!」


「ふえぇ…なんだか気持ち悪いよぉ…」


「私もです…苦しい…」


「コレット、リーベ、大丈夫!?なぜかあたしはなんともないけど…」


「あたくしもですわ。闇の力に馴染んでいるみたい…」


「では、陣形を組みます。短期決戦でいきますよ!」


「そう言いなさるなよ。じっくり楽しもうじゃないか!ハハハハッ!」



ルーシーの指揮で陣形をとる。毒の力に蝕まれた2人を後衛に、抗える2人を前衛に据え、嬉々として一行を待ち受ける毒の彩りに立ち向かっていった。



「ポイズンラッシュ!」


「ベノムナックル!」


「モールドスプレー♪」


「ロトンレッグだがや!」


「ファンガススポール!」


「毒の彩り…凄まじい勢いなのである…」


「ソニックブーム!クッ…手強いですね…」


「これが毒の精霊の力…私も気分が悪くなってきたわ…」


「私とクレアの力で防御出来る時間も長くないわ。なるべく早くジャッロを仕留めないと…」


(フフフ…私を見つける前にこの小娘達は毒に蝕まれて死ぬ!たっぷりといたぶってやる!)



ティファとクレアが前衛で守る中、毒の彩りが次々に畳み掛ける。ジャッロの位置を探る猶予はおろか息つく暇さえも与えず波状攻撃を仕掛けてきた。



「タキシンエッジ!」


「ヘドロウェーブぞなもし!」


「ダストバーストなのだ!」


「ジャンクスマッシャー!」


「ウィルスブレード!」


「フン、それを待っていた!沈め!!」



ルーシーは密かにヴィオに耳打ちをしていた。飛び掛かるビアーをかわし、背後の沼に向かって蹴落とした。



「うわわわっ!?」


「フッ…ルーシー、成功したぞ!」


「わたくしの策に填まりましたね。毒を以て毒を制す、ですわ!」



背を蹴り飛ばされたビアーは紫色の沼に一直線に飛び込んだ。深みまで一気に到達するであろうと容易に想像出来るほどの勢いだ。ルーシーの策は的中した──かと思われたが──



「ヘヘン!残念でした〜♪」


「毒を以て毒を制すゥ?ウヒョヒョッ!笑わせるぞなもし!」


「ウチらはみんなそれぞれの毒の抗体を持ってるんだよね〜!備えあれば憂い無しみたいな?」


「トックの言う通りだがや!水色の嬢ちゃん、それなりに頭が回るようだがな、わっちらはその更に上を行っとるんだがや!惜しかったのう!」


「悪しき力が強まってる…ネイシア、やりますよ!」


「…はい!」



アムールとネイシアの紋様が呼応し柔らかに煌めく。ピンクとホーリーホワイトの彩りが紡ぐ聖なる力がペーシュの平穏を脅かす禍々しい毒の力を中和していった。



『天の御意思よ、我らに加護をもたらさんことを!アークエンジェル・ホーリーブレス!!』


「なんてこと…私達の力が弱まってる!?」


「ヤバいのだ…これではジャッロ様の隠れ場所がバレてしまうのだ!」


「ロビンさん、力を貸してください!」


「はいッ!ルーシーさんの意のままに!!」



ルーシーとロビンの紋様が呼応して煌めく。水色と無色透明の彩りが重なり、透き通る水面の如く美しい彩りに昇華していった。



『静かなる水面は仇なす者の心さえも映し出す!ヴァッセル・セレナーデ!!』



竪琴の調べと共に現れた澱み無く耀く水の壁は彩りの鏡となり、毒の沼の隠れ蓑に紛れていたジャッロの姿を確かに捉えた。



「な…何ぃッ!?」


「リタさん、今です!」


「Yes.My Lady♪」



ルーシーの号令を受け、リタは引き金を引いた。冥紫の銃弾は美しい水面鏡に映ったジャッロへと一直線に駆けていき、右手に携えられた剣を弾き飛ばした。



「うわぁッ!!」


「ポワゾン、貴女にもとどめですわ…ダークスフィア!!」


「うおおおぉぉ〜ッ!!」



ポワゾンは自身の力の母体とも言える闇の力に屈し、ジャッロは剣を飛ばされると同時に仰向けに倒れ込む。それを待っていたかのように魔族七英雄カストルの調査で同行したミッドナイトブルーの彩り──アンジュが薄ピンクの髪を伸ばした女性を連れて現れた。



「アンジュさん!」


「国際警察CPAだ!ジャッロ・プラタノ!威力業務妨害、公務執行妨害、並びに迷惑防止条令違反の現行犯で逮捕する!」


「グウッ…この私が…こんな小娘どもに敗れるなんて…!!」


「ヴェレーノ・ノーヴェ、あんた達も逮捕よ!しっかり反省してもらうからね!」


「その必要は無くてよ。さあ、貴女達にはあたくしが“淑女としての作法”を手取り足取り教えて差し上げるわ…覚悟なさいッ!」



『ああああぁぁぁぁ〜ッ!!!』



かくして、ヴェレーノ・ノーヴェの面々はビアリーから“淑女としての作法”を徹底的に叩き込まれた。余りにもおぞましいその詳細を此処に記すのは差し控えさせていただく。



「さあ、祝福の証の運命の旅路を切り拓くわよ!準備はよろしくて?」


『はいッ!ビアリー様!!』


(全員手なずけやがった…ビアリー、恐ろしいぜ…)


(リタ、胸中お察しするわ。これが帝国の国家権力…聞きしに優る脅威ね…)


「まあ、指導の方法はともかく、これなら確かに逮捕する必要はないわね…」


「ああ…そうだね、エリス…ある意味どんな拷問より恐ろしい光景だった…」


「ねえ、お姉ちゃん?ワタシいつまで目隠ししてるの?」


「そうだよ〜!わたしも前が見えないよ?ビクトリア、目隠し取って〜!」


「カシブさん、酷いです!ビアリーお姉様の“淑女としての作法”を私にも──」


「うん、3人にはまだ早いのである。知らない方が幸せなこともあるのである…」


「やれやれ、ビアリーのパンクな行動には毎度毎度驚くというか…脱帽だよ、マジで」


「そうだね、トリッシュ…でも、ペーシュ国が元通りになって良かった♪」


「また君達に協力してもらったね。ありがとう。こちらは僕の仲間のエリスだ」


「エリス・オークランドです。どうぞよろしく」


「実は僕達がここに来たのはジャッロ逮捕の他にもう一つ、君達に用事があって来たんだ。一度宿に行こう」



一行の奮戦が実り、邪教戦士ジャッロは国際警察に逮捕され、毒の彩りは全員揃ってビアリーの配下となった。安堵に包まれた一行はアンジュの用件を伺うべく宿へと帰り着いた。




To Be Continued…

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