第5話『GREEN×GREEN』
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シリーズ第5話目です。今回はゆるりとしたまったり回です。まったりと読んでみてください♪お気軽にお楽しみくださいね!
アマラント国を襲ったキャプテン・ロビン率いる海賊団を退け、リタを仲間に加えたモニカ達一行は次なる目的地へ向け、動き出そうとしていた。エレンが知り合いの船乗りに交渉に出向いているのを他の7人は宿屋で待っている。
ガチャッ!
「あ、エレン!どうだった?」
「うん…実は今、海は魔物や海賊が蔓延ってて航行数が少ないんだって…」
「ありゃ、ホンマかいな…で、どこか取れたん?」
「シャルドネ国行きのチケットなら取れたよ。それ以外は航路の海域が危険だから行けないって。」
「行ける場所があるだけでもいいじゃないか!シャルドネ国に行こうぜ!」
一行は船に乗り、一路シャルドネ国を目指した。船が進むテナールズ海の大海原は青く煌めき、非常に穏やかに揺れていた。
「うわぁ…青く澄んでてすごい綺麗ね♪」
「そうですね…私の国は内陸部なので、海が見られることはなかったんです。こんなに広いなんて…」
「うおお〜っ!この海以上に世界は広いッス!燃えてくるッス〜!!」
眼前に青々と広がるテナールズ海を眺めながらモニカ達はこれからの旅路、そしてそこに待ち受ける新たな出会いに思いを馳せ、創造神コローレによる祝福に託された使命を改めて噛み締めるのであった。そんな8人の姿をピンクの衣装にギターを持った不思議な身なりの青年が遠巻きに見つめていた。
(神々の子…その力は虹の煌めきのように世界を彩る。創造神コローレよ、彼女達の旅路に祝福をもたらしたまえ…)
一行はシャルドネ侯国に到着した。鉄道、空港、航路の全てが通り交通の便が非常に良く、毎日多くの人々が行き交う国である。
「うわぁ…アマラント国以上に人が多いな。なんだかワクワクしてきた!」
「シャルドネ侯国は大陸の交通の要やからな。世界各国からたっくさん人が集まるんやで!」
「すげぇな…さて、これからどうする?」
一行が船着き場のベンチでモニカ達が今後の方針について話し合いをしていると、オリーブ色の軍服を来た兵士が歩み寄ってきた。心当たりの無い来訪者に一行は咄嗟に身構える。
「君達、ちょっといいかな?モニカ・リオーネとその同行者だね?ちょっと侯爵邸まで来てもらうよ」
「えっ?私達が…侯爵邸にですか!?」
「ああ、ロアッソ共和国の国王陛下からのお達しがあってね。君達に引き合わせたい人物がいるんだ。では、案内するから着いてきてくれ。」
モニカ達は兵士に連れられ、侯爵邸に案内された。しかし、シャルドネ侯は持病の養生のため床に伏せており、代わりに皇太子がモニカ達の前に現れた。
「シャルドネ侯国へようこそ。早速だが、シノノメ国王陛下よりお話は伺っている。祝福の証、その使命を全うするための旅をしていると。」
「はい。この左手の紋様が祝福の証にございます。同行者も皆、同じ紋様があります。」
「うむ。そこで、国王陛下のお話を伺ってから調査したところ、我が国にもモニカ殿と同じ紋様を持つ者が2名見つかり、現在は国で保護している。その2人とモニカ殿ご一行を是非引き合わせたかったのだ。」
皇太子と共に紋様を持つ2人が暮らすという邸宅に足を運んだ。色とりどりの花が咲き誇る中庭に通されると、花々の彩りによく映える緑色の髪の少女2人が仲良さげに戯れていた。
「リデルちゃん大好き!ぎゅ〜っ♪」
「コ、コレットさん…恥ずかしい…です…」
冴えた緑色の髪の天真爛漫な少女がコレット、明るい黄緑の髪のやや内気な少女がリデルという名前らしい。2人の姿はその愛らしい容貌や周囲の雰囲気と相まって花の妖精であるかのようだ。立ち振舞いにどこかあどけなさがあり、庇護欲をくすぐるその姿はなんとも微笑ましい。モニカは笑顔を見せながら2人に語りかけた。
「こんにちは。はじめまして、モニカ・リオーネです。」
「こんにちは!私はコレット。コレット・フィオレです。よろしくね!」
「えっと…リデル・アールヴェロ…です…よろしくお願いします。」
モニカがコレット、リデルと挨拶を交わしているところへ皇太子が歩み寄ってきた。2人を見つめる彼の眼差しはあたかも2人が妹であるかのような優しさに満ち溢れていた。
「やあ、コレット、リデル。ご機嫌いかがかな?」
「あ…で、殿下…こんにちは…」
「こんにちは、リデル。コレット、元気かい?」
「ふえ?あ…あの…えっと…」
モニカに対しては朗らかにハキハキと応じていたコレットだったが、皇太子が声をかけた途端にしどろもどろになった。視線は泳ぎ、頬は少し紅潮している。
「コ、コレット!?どうかしたんですか…?」
「ああ、どうもコレットは男性に免疫が無いようなんだ。私だけでなく、従者や警護の者にもこのような反応を示すのでね…少しばかり閉口していたのだよ。ご一行は皆女性だと聞いて安心した。どうかリデル共々仲良くしてやって欲しい。」
コレットが少し落ち着いた頃、モニカの後に控えていた仲間達も次々に前に歩み出た。新たな仲間を迎える彼女達は揃って嬉しそうな様子でいる。
「私はエレン。仲良くやっていこうね!」
「ウチはアミィっていうねん!よろしくな〜」
「私はカタリナ。どうぞよろしくね♪」
「あたしはクレア!一緒にいい旅にしようね!」
「リデルです…よ、よろしくお願いします。」
最初は緊張して硬かったリデルも次第に表情が和らいできた。コレットも非常に楽しげな様子でいる。
「アタシはトリッシュ。よろしく!」
「自分はテリーっていうッス!」
「俺はリタ。よろしくな。」
(ふえ!?こ、この人達と旅…ふわわぁ…)
(コレットの妄想)
「この拳に誓って!コレットには指一本触れさせない!」
「コレットに手ぇ出したらブッ飛ばすぞコラァ!」
「テリー、トリッシュ…」
「大丈夫。コレットは俺達が守る。絶対に守るからな…」
「リタ…」
(以上、コレットの妄想)
(ほえぇ…ふわわ…)
「…なあ、リタ。コレット、なんか様子がおかしくねぇ?」
「うん…急に1人で上の空になってるよな…なあ、コレット、念押しに言っとくけど、俺らは皆女性だからな。」
「ふえ!?はわわわ、ごめんなさい!」
「ハハッ、いいよいいよ!アタシはこんな格好だから男に間違えられることもたまにあるからね。これから仲間としてバリバリセッションしような!」
「エヘッ、私もこれからみんなと旅するの楽しみ!よろしくね♪」
「ぬうぅおおぉぉ〜っ!新たな友よ!熱き絆と友情のハグッス〜!!」
ガシッ!!
「ふ、ふえっ!?*=※☆△%♯×〜ッ!!!」
「あれっ!?ちょ、ちょっと!コレットが気絶してるよ!!」
「コレット!コレット!!しっかりしてください!!」
「むむっ!?熱き情熱でハートが焦げてしまったッスか!燃えてるッス〜!」
「アンタねぇ…どこをどう解釈したらそんな結論になるのよ!」
一行は気絶したコレットを慌てて介抱した。ベッドに横たわるコレットを皆は心配した様子で見つめている。
「コレットさん…大丈夫…ですか?」
「うぅ…早速みんなに心配かけちゃった…ごめんなさい。」
「なんも気にせんでええよ。それにしても余程免疫ないんやなぁ…」
「テリーを男の子だと思っちゃったんだ…でもコレットってほっとけない感じで可愛い♪」
「確かに…なんか放っておいたら危なっかしいぜ。俺らが見ててあげなきゃな!」
「むぅ〜っ!リタひどい!私だって頑張れるもん!ちょっと待ってて!」
コレットはいそいそとキッチンへ向かう。取り出した材料は卵、小麦粉、バター、砂糖、生クリーム、イチゴ、バニラビーンズ。先程までのふわふわした雰囲気とはうって変わって、慣れた手付きでテキパキと楽しげな表情で調理していく。その姿にモニカ達はただただ目を奪われるばかりだった。
「はい、お待たせ!」
「えっと…紅茶も淹れました…どうぞ。」
コレットが作ったのはイチゴのショートケーキだった。とても綺麗に出来ており、リデルが淹れた紅茶との組み合わせは喫茶店のケーキセットであるかのようだ。
「…!すごい、美味しいです。」
「すっげぇ!コレットのケーキとリデルの紅茶、めっちゃ旨いな!」
「エヘヘ♪私、お菓子作りが好きなんだ。お口に合ったなら嬉しいな!」
コレットの左手には緑色の紋様が、リデルの左手には若草色の紋様が煌めいていた。その煌めきは2人の旅路の始まりを告げ、祝福しているかのようだった。
「うおぉ〜っ!旨いケーキはパワーを燃やすエネルギーになるッス!自分、幸せッス〜!!」
「ふぇ…テリー…ありが、とう…」
「ちょ、コレット姉ちゃん…また赤くなってるで!」
ケーキと紅茶でお腹も心も満たされたモニカ達一行。コレットとリデルを仲間に加え、遂に10人となった。新たな力を加え、さらに彩りを増していく一行の旅路。シャルドネ侯国から彼女達はどこへ向かうのか…?
To Be Continued…