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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter4:邪教戦士篇前編
45/330

第45話『アザレアを想う者達』

シリーズ第45話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

要人護衛の任務を受け、アザレア王国のボクシング国王御前試合に訪れた一行。テリーの先輩である女性ボクサー、キャロル・ヴァイスの美技に酔いしれていたのも束の間、邪教戦士ポールポラがアリーナに立ち込める興奮を打ち破った。



『ギャラクシアか…相手に不足無し、貴様の力も頂く──』


「プロトバスター!」


「エナジーボム!」



グレーと青緑の彩りがリングを改造したポールポラの機体を撃った。リングは空中でバラバラに分解され、アリーナにけたたましい金属音を撒き散らす。リングロープで縛られていたキャロルとユリアは警備していたモニカ班によって助け出され、貴賓席にいた両国陛下もヴィボルグによって避難した。



「キャロル先輩!大丈夫ッスか!?」


「ああ、すまない…大丈夫だ…」


『お前は…プロト!?』


「フッ、私達の新しい仲間よ。さあ、もう一度ご挨拶をなさい!」


「了解。プロトバスター!」


『クッ…貴様ああぁぁッ!』



プロトの右腕から放たれた閃光がポールポラのカプセル状のコクピット部分一点のみを撃ち抜く。が、何事もなかったように持ち直し、嘗てのパートナーを嘲り笑った。



『フハハ!ぬるいぬるい!このアザレアの新たな歴史を紡ぐのは私だ!そこで指を咥えて見ているがいい!』


「なんて卑劣な奴だ…許さん!」


「な、なんと!?キャロル先輩…!?」


『来るか?まあ良い。見せ物程度の技だが、貴様の力もコピーしてやる!』



キャロルの左手にピュアホワイトの紋様が美しく、誇り高く煌めく。毅然とした表情で邪に立ち向かうキャロルの勇ましい姿に客席からは再び黄色い歓声が沸き上がった。



「スパイラルコークスクリュー!」


『キャ〜〜〜ッ!!』


『フン、小癪な!水瓶座の力も得た今、此処に用はない。出来るものなら私を止めてみろ!』


「ぬうっ!?あやつ、一瞬で消えたぞい!」


「みんな、急いで!外に停めてあるヘリコプターに乗って!」


「コレットお姉様!私達も行きましょう!」


「ふえぇ…キャロルさんの試合見たいのに〜…」


「心配無用です。どうやらキャロルも一緒に行くみたいですよ。さあ、参りましょうか!」



ルーティが手配したヘリコプターに乗り込み、一行は国境付近へと飛んだ。岩が点在する荒野に銀色のドームのような研究所が明らかな違和感と共に聳えていた。



「なんと醜い…我らがアザレアに相応しくない建物だな…」


「オールの言う通りだ。僕達の力で退けねばならない!」


「あ、あれは…?何か向こうから迫ってくるのである!」


「ひいっ!み、みんな同じ顔…」


「間違いない…プロトのコピー体だわ!」



現れたのはプロトの群れだった。一行の“彩りの力”をそれぞれに分かち、大きな軍勢となって迫ってきた。



「みんな、特訓の成果を見せてやるよ!私の炎で燃やしてやる!」


「では、ここはわたくしが指揮を執ります。指示に従って、的確に弱点を突いてください!」


「ルーシーがリーダーか…心強いぜ!」


「よし、出撃しましょう!彩りの力で邪を祓う刻です!」



司令塔を担うルーシーを中央に据え、一行はプロト軍団を迎え撃つ。ルーシー班の面々は学びの成果からか、自然と力を発揮出来る彩りに向かい合った。



(風は氷河期に凍てつく風と吹雪の糧とされ、その力は弱まった──)


「風はミントグリーン…フロストザッパー!」


(青く硬き氷は星の力には脆くも砕け往く──)


「氷は青やな…スターダストボムや!!」


(聖なる力は闇を照らし、優しき月灯りとなる──)


「闇は濃い紫ですね…エンジェルフェザー!」



ルーシー班が次々と駆逐していく中、モニカ班の面々もルーシーの指示を受け、それぞれの力を向かい合う。指導したルーティは感慨深げな様子で見守っていた。



「リタさんはピンク、トリッシュさんは水色です!」


「アタシはコイツだな!エレキテルショット!」


「俺はコイツだ!シャドウバレット!」


「クレアさん、マゼンタが後ろにいますよ!」


「うえっ!?おっとと…メタルスピナー!」


(凄い…訓練の賜物ね。いや、もしかしたら私達以上の力を秘めているかもしれないわ…)



コピープロト軍団は瞬く間にその数を減らしていく。最後の1人にモニカが金色の一閃に込め、彩りの力の“写し”を斬り捨てた。



「リオーネ流奥義!覇刃閃光斬!」


「やれやれ…数には焦ったけど、特に問題なしね」


「フッ、ヴィボルグに同感だ…まあ、奴を叩きのめす肩慣らしにはなった」


「さて、研究所に急ぎましょう。同じ科学者として負けられないわ!」



一行は研究所へと突入した。ポールポラが仁王立ちするドーム状の研究所は多くのモニターが掲げられ、巨大なマザーコンピューターが鎮座していた。



「ようやく来たか!身の程を弁えずに死にに来たな!」


「この腐れ眼鏡!ここが年貢の納め時だぜ!」


「テレーズの言う通りだ。神聖なアザレアの地は我々が守る!」


「これ以上貴方の好きにはさせないわよ!おとなしく投降しなさい!」


「バカめ!全員まとめて地獄に送ってやる!」



ポールポラは巨大なロボットに乗り込んで襲いかかってくる。彼が操る怪しい鉄の塊は彩りの力とは相反する邪悪な気を纏っていた。



「くらえぇッ!!」


「ガッツナックルッス!」


「ダークスフィア!」


「グラッサージュ!」


「ソニックブーム!」


「なんのこれしき!その程度では傷一つ付かぬわ!」



ロボットの両手に搭載した銃が現れ、容赦なく荒々しく一行に火を吹いた。銃口から吹き出しながら轟き燃える爆撃は激しい掃射音をたてながら迫り来る。



「ハッハッハアァッ!」


「アクアプロテクション!」


「メタルウォール!」


「ハニーサークル!」


「リヴァプールビート!」



ヴィボルグに続きクレア、リデル、テレーズが前に飛び出し、サックスブルー、銀色、若草色、コーラブラウンとカラフルに彩られた防護壁を造り出した。攻撃を防がれたにも関わらず、ポールポラは余裕気で冷ややかな笑みを浮かべながら向かい合っていた。



「ふむ、少しは考えたか…だが、科学の力にいつまで抗えるかな?」


「科学の力は世のため人のために使うものよ。出力上昇ッ…!」



シェリーがスタンガンの出力を振り切れるまで上昇させる。奇声を発しながら青緑の電流を暴発させ、ポールポラの機体にありったけ浴びせかけた。



「キエエェェッ!」


「ぬうっ!なかなかやるじゃないか…だが、私は負けん!」



後方のモニターにシェリーの姿が映し出され、壁や天井から銃が機械的な音をたてながら現れた。シェリーに向けられた数多の銃口は一斉にレーザーやビームを発射した。



「うっ!?これはいったい…!?」


「フハハハ!既に貴様らは袋の鼠だ!せいぜい死ぬまで逃げ回っているんだな!ア〜ッハッハッハ!!」


『うわああぁぁっ!!』



シェリーだけでなく他の全員も例外なく標的となってしまった。無数のレーザーやビームが飛び交い、ドーム状の天井や壁、床に当たると再び一行に向かって跳ね返った。出入口は塞がれて完全に逃げ場はなく、逃げ回るばかりで反撃もままならない状態に陥ってしまった。



「クッ…これは恐ろしいのである…」


「うわっ、うわあぁ!?」



ザクッ!!



「あ…刺さっちゃった…」


「な、な…!?貴様…!」


「ザラーム、危ないッ!!」



ドカ〜〜〜ン!!



転倒したザラームの持った剣が突き刺さったのはロボットの動力炉だった。一行はすぐに退避し、ザラームはヴィオが即座に引き離したために事なきを得たものの、爆発に呑まれた辺りは焦げ臭い匂いと黒い粉塵にまみれ、その渦中にいたポールポラは言うまでもなく黒く煤けた顔で愕然と倒れ伏していた。



「お姉ちゃん…貰った剣が…」


「大丈夫。お前が無事なのが一番だ。剣はまた新しいのを買ってやるからな…」


「すみませんでした…すみませんでした…この通りです…許してくださ〜い!」



黒焦げになり、丸腰になり、抗う手立てを失ったポールポラは媚び諂いながら赦しを乞う。が、アザレア王国の平和を脅かした深き業が許される筈もなかった。



「断る。君が何者かは知らないが、神聖なリングを玩具にする輩を見過ごすわけにはいかない!」


「まったく…私達の仕事を余計に増やしてくれたわね!」


「貴方は科学者の本分さえ理解していないわ。身の程を知りなさい!」


「アザレアを汚した罪は重いぜ!ブチのめしてやる!」


「よし。みんな、行くぞ!」



『Finish!!!!!』



5人が声を揃え、色彩の力を解き放つ。シャンパンゴールドの棍が聖なる音色を刻み、コーラブラウンの両掌は大地を揺るがし、青緑の電流が唸りをあげ、オペラピンクの銃撃が爆炎を燃やし、ピュアホワイトのブローは空を断つ。祖国を想う5つの彩りが1つになり、美しき刻印へと昇華していった。



『この力、我らが祖国の為に!!ファイブスター・ユニオンジャック!!』


「ぎゃああぁぁっ!!」



ポールポラは身体を錐揉み回転させながら何処かへと吹き飛んでいった。モニカ達はアザレアの戦士達と共に清々しい晴れやかな表情で勝利の喜びを分かち合っていた。



「フッ…オール、美しく決まったね♪」


「そうだね、キャロル。最高の気分だ。アザレアを守ったぞ!」


「Yeah!!やっつけてやったぜ!」


「さて、アザレアの景観を損なうヘンテコな基地は即刻排除しましょう!」


「そうね、ルーティ。プロト、ボムをセットして!」


「了解しました、マスター。……セット完了。15分後に爆破します。早急に退避願います」


「な、なんと!?みんな、急ぐッスよ!」



退避に15分は十分過ぎるほどだった。ヘリコプター着陸地点まで到達すると同時に地響きと共に荒々しい爆発音が辺りに鳴り響く。一行は炎に包まれながら赤々と燃える研究所を遠巻きに見つめていた。



「ほえ〜…えらい派手にやってもうたなぁ…」


「まあ、いいじゃないか。俺はスッキリしたぜ!」


「リタさんの言う通りね。これであたくし達も気兼ね無く旅を続けられますもの。ウフフッ…甘美な勝利だわ…」


「うん、ペーシュ国まで向かおう!国境はすぐそこだよ!」


「では…皆さん、ありがとうございま──」


「おっと、STOP!!まだそのセリフは早いぜ?」


「旅は道連れですよ。ペーシュ国までご一緒させてください」


「そうだね。ちょうど僕達もペーシュ国に用事があったんだ。御前試合のすぐ後だけど、どうしても、ね」


「研究で籠りきりだったから楽しみだわ♪きっとモニカ達も楽しめる用事よ!」


「私も同行します。大切な仕事がありますので」


「はい。ヴィボルグ様、参りましょう!…さあ、出発しましょうか!」




祖国アザレアを想う戦士達の協力によりポールポラの野望を砕くことに成功した。赤々と燃える研究所を背後に見送りながらも前へ前へと歩き出した。水瓶座のヴィボルグとオール達を加え、目前に迫ったペーシュ国へと進路を取るのであった。




To Be Continued…

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