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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter4:邪教戦士篇前編
43/330

第43話『高みへの歩み』

シリーズ第43話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

アザレア王国に潜む邪教戦士の影を追い続ける一行。邪教戦士ポールポラの刺客プロトが一行から写し取った“彩りの力”によって防戦一方──全滅の危機に立たされていた。彩りの戦士達の命は文明に葬られ、棄てられた暗き廃ビルの中で誰に知られることもなく散ってしまうのだろうか?



『安心しろ。貴様らの力は全てプロトが使ってやる。思い残すこと無く逝くが良い!』


「クッ…こ、こんなところで…負けるわけには…!」


『さあ、覚悟!消し飛ぶがいい!死の忘却を迎え入れろおおぉぉッ!!』



ガガガッ──ザザッ──



『…プロト、どうした?早くしろ!撃て!!撃ってしまえ!!!』


「回路負荷甚大。許容量を超過──緊…急……停、止──」



右手の主砲に彩りの凶弾を込め、その銃口を一行に向けていたプロトは抜け殻になったように膝から崩れ落ちた。大きな金属音がフロア中に響き、一行は音の主であるグレーの彩りの倒れる方へ視線を移した。



「あれ…?あたい達を撃たないのか…?何が起きてるってンだい?」


「ふ〜ん、そういうことだったのね…科学者としての器が知れたわね!」


『なんだと…?どうなっているのだ!?』


「容量オーバーよ。詰めが甘いんじゃないかしら…科学者さん?」


『ぬぬぬ…ま、まさか…!』


「アミィちゃん、背中の左側にあるハッチを開けて、中のスイッチを押していただける?」


「ほいほい〜…この赤いスイッチでええんか?ほな、押すで〜!」


『なっ!?ま、待て!それは押すな!やめろっ!!』



カチッ!



「押してもうた〜♪兄ちゃん、一足遅かったわな〜♪」


『ちくしょおおおぉぉッ!な、なんてことだ!!初期化したら私のことも忘れてしまうではないか…!』


「心配しなくて結構よ。この娘は私が隅々まで解析して差し上げます。破棄はしませんので、ご安心を」


『クッ…覚えてろ!そんな失敗作など好きなだけくれてやる!わ、私はまだ…ま、ま、ま、ま…負けたわけじゃないッ!』



ポールポラは酷く取り乱しながら捨て台詞を吐き、通信を切断した。静寂が黒き影を落とす中、幸い傷の浅かったアミィはリュックから傷薬を取り出し、近くに倒れ伏していたカタリナとネイシアに手渡した。



「…ほい、傷薬。まずはみんなを手当てせなアカンな…」


「アミィ、ありがと…ネイシア、大丈夫?」


「はい…天よ、お救いに感謝致します…リデルちゃんも手伝える?」


「大丈夫、です…早く皆さんを助けなきゃ…」


「そうですね。では私は救急医を手配致します」


「ええ、お願いね。私も出来ることがあれば手伝うわよ」


「ワタシも手伝う!お姉ちゃん、しっかりして…」



アミィ、カタリナ、ネイシア、リデル、シェリー、ザラームの6人は皆の応急処置を行った。オールが手配した救急医もすぐに駆け付け、負傷した面々は早急に手当てを受け、傷を癒すことが出来た。目前に迫っていた黒き死の淵から脱したのである。



「みんな、ありがとう……プロトは?」


「ご覧の通りよ。容量オーバーでダウンしたわ。恐らく私達の情報を一気に詰め込み過ぎたのね」


「まあ、24人分もあるからな…アタシら大所帯で得したな♪」



奥で治療を受けていたヴィオがゆっくりと立ち上がる。音速の斬撃を受けた背を気にする素振りは見せていないが、明らかに足取りは重い。真っ先に駆け付けたザラームも背後から見守る救急医も心配そうな様子で見つめていた。



「お姉ちゃん!!」


「ヴィオ…大丈夫?酷い傷だったけど…先生に診てもらってちゃんと治った?」


「…ああ、大丈夫だ。まあ、足を引っ張らない程度に仕事させていただく」


「うむ…本当に大丈夫かね?すぐに動くのは私はあまりおすすめしたくないな…」


「大丈夫です、先生。それに私には為さねばならない務めがある。立ち止まるわけにはいかない!」


「そうか…そこまで言うなら強制はしないが、くれぐれも無理はしないように」


「先生、ありがとう…ん?リデル?…リデル、どうしたんだ?」



リデルは眠ってしまっていた。戦いのダメージと治療の疲れに併せ、張り詰めていた緊張の糸が一気に切れてしまったのだろう。若草色の心優しき少女は穏やかで愛らしい寝顔で無防備に寝息をたてていた。



「スゥ……スゥ……」


「リデル……俺達のために頑張ってくれたんだな…ありがとう…」


「リデルちゃん…キミは天使のようである…グスッ…」


「リデル様…なんと健気で可憐なのだ…今は私の腕の中で甘美な夢の世界に──」



ビリビリッ!



「うっ!?か、体…が…」


「それはまさかスタンガン?シェリー…アンタ、物騒なものを持ってるね…やむを得ない状況だけど…」


「まったく…オールは相変わらず女の子を追い掛け回してるってわけね。テレーズ、オールを連れ出すのをお願いするわ」


「はいよ…やれやれ、世話の焼ける奴だな…」


「リデルはワシが連れてくわい。すまんのう、リデル…ゆっくり休んでくれ」



一行はやっとの思いで宿に帰り着いた。人も疎らな深夜のロビーに到着した一行の表情には安堵だけではなく、プロトにあと一歩のところまで追い込まれた悔しさが滲んでいた。



「プロトは私が研究室に戻って修理するわ。恐らく2、3日かかると思うけど、記憶メモリーは初期化したから、もう私達の仲間よ」


「わかった。シェリー、頼りにしてるよ!」


「ええ、ありがとう。では、失礼するわ。私にも貴女達にも、まだやり残したことはある……また会いましょう」



シェリーはプロトを連れて去って行った。翌朝、モニカは朝食の席で真剣な表情でオールに向かって自らの意思を訴えかけていた。



「オール…どこか鍛練出来る場所はありませんか?」


「えっ?モニカ様…唐突にどうされました?」


「どうしたも何も…私達は負けたのです。このままでは魔を討てるほどの高みに到達出来ません!」


「それは俺も同意だな。やられっぱなしなんて癪だぜ!」


「自分もリベンジしたいッス!負けたまま諦めるなど、格闘家の名折れッス〜!」


「そうだなぁ……心当たりが無くもないよ。紹介してやろうか?確実に鍛えられる熱血軍隊式トレーニングだぜ!」


「うおぉっ!それは素晴らしいッス!己を鍛えて闘魂燃やすッス〜!」


「う〜ん…私、体力に自信がないもので…キチンとこなせるか不安です…」


「わたしもリーベちゃんと一緒…頑張るのは大事だけど、疲れそうだし怖そうだなぁ…」



リーベとコレットが気乗りしない様子でいるのを横目にしていたルーシーが突如として立ち上がる。水色に煌めく澄んだ瞳は穏やかであったが、一つの確かな意志がその奥に静かに燃えていた。



「では、わたくし達はわたくし達に出来ることをしましょう。オールさん、この近くに図書館はございますか?」


「と、図書館…ですか?かしこまりました。この辺りでしたら王立図書館がございますので、ご案内致します」


「ええ、それが良いですわね。あたくしも是非行ってみたいわ。あたくし達の御魂の歩んだ道、そしてこれから行き着く先を見てみたい…」



ルーシー、アミィ、コレット、リデル、リーベ、ネイシア、カタリナ、フェリーナ、ビアリー、ケイト、カシブはオールに付き添われアザレア王立図書館へと赴いた。厳粛な雰囲気の中、ルーシー達は知恵を求め、図書館の一帯に陣取った。



「では、わたくしとフェリーナさんで書籍を選びます。わたくし達の力をもっと深く理解しましょう」


「うん、私達1人1人の魂に宿る精霊の力は個々に違うものであることは既に理解していると思うけど、それぞれに持つ特性、殊に長所と短所に着目して学んでいくことを重視するわ。頑張りましょう!」


「よっしゃ!そうと決まれば研究会スタートなのである!張り切って頑張るのである!」



一方、モニカ、エレン、クレア、テリー、トリッシュ、リタ、ステラ、ビクトリア、ヴィオ、ザラームはテレーズの引率を受け、ある人物のもとへと赴いた。綺麗に整えられたグラウンドに軍服の女性が立っている。ピンと張ったピアノ線のような真っ直ぐな緊張感が漂っている中、テレーズは遠慮の無い軽快な口調で女性軍人に声を掛けていった。



「よっ、ルーティ!わざわざありがとうよ!」


「ええ、歓迎するわ。皆良い眼をしているわね!」



ルーティは凛とした眼差しで一行を見つめていた。短い金髪に毛皮付きの黒い帽子、赤い軍服に身を包み、銃剣付きの大きな機関銃を肩に担いでいる。その双眸には愛する祖国を想う暖かさが今にも灼熱の炎となって燃え広がりそうな様相で爛々としていた。



「モニカ・リオーネと申します。この度は鍛練の機会を頂き、ありがとうございます」


「ようこそ、美しき求道者の皆様。私はルーティ・スアレス。アザレア王国の近衛兵──そして、貴女達の“仲間”です」


「仲間…?おっと、ルーティさんにも御紋があったんじゃのう!」



近衛兵ルーティの左手にはオペラピンクの紋様が煌めいていた。モニカ達が驚く中、テレーズはコーラブラウンが耀く左手を得意気に突き出して見せた。



「ヘヘッ…ほら、アタシだってゲットしたぜ?」


「…すごいわ!テレーズ、貴女も発現したのね…」



子供のように勝ち誇った顔をしたテレーズに向かい合うルーティは左手の甲に目覚めたコーラブラウンの彩りを嬉しそうな微笑みを浮かべながら見つめる。暫し食い入るように見入っていたが途端に我に返ったように居直り、再び涼やかな凛々しい眼差しを一行に向けた。



「失礼。本題に入りましょう。テレーズから諸々の事情は伺いました。貴女方には訓練生として私達の任務に同行していただきます」


「ほう、任務、か…硬い響きだが、それはどんな仕事ですかな?」


「要人護衛の任務です。明日の午後、王宮にペーシュ国の大統領陛下をお招きするのですが、その際の宮殿内及び行事中の警備を行っていただきます」


「帝国でやったみたいな感じだな!それなら大丈夫そうじゃん──」


「その前に、貴女方を徹底的に訓練します。120年の伝統を誇るアザレア式訓練、メニューはたっぷりと用意しています。しっかり着いてきてくださいね」


「うえっ!?だ、大丈夫かな…あたし、不安になってきちゃった…」


「クレア、しっかりしなよ!気合いが入るってもんじゃない!私も燃えてきた!」


「エレンの言う通りッス!どんな鍛練も自分らの血肉にしてみせるッス〜!!」


「ふ〜ん、やる気は十分あるってわけね…それじゃ、早速グラウンド10週!!」


「ゲッ、マジかよ!?俺、まだ心の準備が──」


「上官に向かってつべこべ言わないッ!ほら、さっさと走るッ!!」



プロトに追い詰められながらも九死に一生を得、更なる高みを目指すことを決意した一行。彼方は王立図書館という名の知恵の泉にて精霊の世界に触れ、此方は近衛兵ルーティの指導の下に伝統の重み有る鍛練を積む。為せば成る、為さねば成らぬ──何事も急がば回れである。邪を祓い、魔を討つその日まで、進め!彩りの戦士達よ!!




To Be Continued…

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